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タモリ |
やっぱり「30小節に1発の男」も
別の「ヘンなリズムの男」も、
いてくれなきゃ、もの足んないんですよね。 |
糸井 |
クマちゃん(篠原勝之さん・ゲージツ家)が
劇団にいたときの話で
そういうようなの、いっぱい聞きましたよ。
無口で、酒しか飲んでないやつが
あんまり酒しか飲んでないからと
みんなで雪のなかに放り出したと。
で、寒くて凍えちゃうと大変だから
自転車をかけてやったという‥‥。 |
タモリ |
ますます冷えるじゃないか。 |
糸井 |
でもね(笑)、いつもいるんです。
その人は、そこに。
必要なんでしょうね、みんなにとって。 |
タモリ |
来年は、そういうやつらを
ちょっとクローズアップしてみましょうかね。
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糸井 |
ああ‥‥なるほど。
でも、どうやったらいいんだ? |
タモリ |
うん‥‥。 |
糸井 |
その人たちに共通のキーワードは、
なんなんでしょうね?
‥‥スロー、じゃないしなぁ。 |
タモリ |
ま、スローな人間であることは、たしかだけど。 |
糸井 |
でも、「スロー人間」って言ってもね。 |
タモリ |
スロー人間‥‥うん。
うーん‥‥「スロー人(にん)」。
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糸井 |
ああ、いい! 「スロー人」(笑)。
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タモリ |
いないとダメなやつ。 |
糸井 |
なにかイベントにできませんかね、それで。 |
タモリ |
スロー人ばっかり集めて、野放しにするとか。 |
糸井 |
でも、スロー人だけをたくさん集めても‥‥
イベントとしては、
かなり難しくないですか?(笑) |
タモリ |
ああ、同じリズムのやつだけで集まっても
あんまり、おもしろくないね。 |
糸井 |
そもそも、そんな数いなそうですよね(笑)。
スロー人のセンスがある人って、
身のまわりを見回してみても、なかなか。 |
タモリ |
学校や会社でも、認められにくいでしょう。
スロー人というのは。 |
糸井 |
タモリさん自身、スロー人じゃないし‥‥。 |
タモリ |
ああ、だれだっけな‥‥
だれか女優さんの妹さんて人が
ものすごいスロー人らしいですよ、そういえば。 |
糸井 |
あ、そうなんですか。 |
タモリ |
会社員らしいんですけれども、
そんなに
要領がいいほうじゃなかったらしいんですよ。 |
糸井 |
スロー人ゆえ。 |
タモリ |
うん、だからまわりの人間も、
あんまりめんどくさい仕事は頼まなかった。
で、だんだん、やることがなくなってきて、
さすがのスロー人も気づいたのか、
「辞めます」と申し出たら
社長以下全員、「辞めないでくれ!」と。 |
糸井 |
ほー‥‥。 |
タモリ |
必要なんだからって、キミは。 |
糸井 |
そういう会社も、なんだかいいですね。 |
タモリ |
キミは社の潤滑油なんだから、
じゅうぶん役目は果たしてるんだから
どうか辞めないでくれって。 |
糸井 |
でも、そういう人って、
ふつうの入社試験では採りようがないですね。 |
タモリ |
試験でスロー人の素質を見抜くのは難しい。 |
糸井 |
30小節に1発、ですからね。 |
タモリ |
時間がかかる。 |
糸井 |
でも、その場の人間、みんな助けちゃう。 |
タモリ |
そう、そう。
そういう、いないとダメなやつです。
<つづきます> |