タモリ先生の午後 2008。 「スロー人」のすすめ。


第12回 「スロー人」のすすめ。
タモリ やっぱり「30小節に1発の男」も
別の「ヘンなリズムの男」も、
いてくれなきゃ、もの足んないんですよね。
糸井 クマちゃん(篠原勝之さん・ゲージツ家)が
劇団にいたときの話で
そういうようなの、いっぱい聞きましたよ。

無口で、酒しか飲んでないやつが
あんまり酒しか飲んでないからと
みんなで雪のなかに放り出したと。

で、寒くて凍えちゃうと大変だから
自転車をかけてやったという‥‥。
タモリ ますます冷えるじゃないか。
糸井 でもね(笑)、いつもいるんです。
その人は、そこに。

必要なんでしょうね、みんなにとって。
タモリ 来年は、そういうやつらを
ちょっとクローズアップしてみましょうかね。

糸井 ああ‥‥なるほど。
でも、どうやったらいいんだ?
タモリ うん‥‥。
糸井 その人たちに共通のキーワードは、
なんなんでしょうね?

‥‥スロー、じゃないしなぁ。
タモリ ま、スローな人間であることは、たしかだけど。
糸井 でも、「スロー人間」って言ってもね。
タモリ スロー人間‥‥うん。
うーん‥‥「スロー人(にん)」。

糸井 ああ、いい! 「スロー人」(笑)。

タモリ いないとダメなやつ。
糸井 なにかイベントにできませんかね、それで。
タモリ スロー人ばっかり集めて、野放しにするとか。
糸井 でも、スロー人だけをたくさん集めても‥‥
イベントとしては、
かなり難しくないですか?(笑)
タモリ ああ、同じリズムのやつだけで集まっても
あんまり、おもしろくないね。
糸井 そもそも、そんな数いなそうですよね(笑)。
スロー人のセンスがある人って、
身のまわりを見回してみても、なかなか。
タモリ 学校や会社でも、認められにくいでしょう。
スロー人というのは。
糸井 タモリさん自身、スロー人じゃないし‥‥。
タモリ ああ、だれだっけな‥‥
だれか女優さんの妹さんて人が
ものすごいスロー人らしいですよ、そういえば。
糸井 あ、そうなんですか。
タモリ 会社員らしいんですけれども、
そんなに
要領がいいほうじゃなかったらしいんですよ。
糸井 スロー人ゆえ。
タモリ うん、だからまわりの人間も、
あんまりめんどくさい仕事は頼まなかった。

で、だんだん、やることがなくなってきて、
さすがのスロー人も気づいたのか、
「辞めます」と申し出たら
社長以下全員、「辞めないでくれ!」と。
糸井 ほー‥‥。
タモリ 必要なんだからって、キミは。
糸井 そういう会社も、なんだかいいですね。
タモリ キミは社の潤滑油なんだから、
じゅうぶん役目は果たしてるんだから
どうか辞めないでくれって。
糸井 でも、そういう人って、
ふつうの入社試験では採りようがないですね。
タモリ 試験でスロー人の素質を見抜くのは難しい。
糸井 30小節に1発、ですからね。
タモリ 時間がかかる。
糸井 でも、その場の人間、みんな助けちゃう。
タモリ そう、そう。
そういう、いないとダメなやつです。



<つづきます>


2008-01-08-TUE