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河野 |
東北は、震災の「復興」が終わったとしても、
当面は「人手不足」なんです。
「人口減少」という問題が残りますので。
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糸井 |
ええ。
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河野 |
だから、新しい町をつくるうえで
「どんな人でもはたらける、環境の整備」が
はやく必要だと考えているんです。
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糸井 |
ぼくも、すごく、そう思う。
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河野 |
シングルマザーや障がいのある人、
80代のお年寄りでも
元気に、安心して
はたらけるような環境をつくろう、
という構想を
アイエスエフネットの渡邉幸義社長と、
いま、一緒に考えているんです。
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糸井 |
へえ、おもしろそう。
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河野 |
渡邉さんのアイエスエフネットでは
「25大雇用」と言って、
ニートやフリーター、シニアや無戸籍の人など、
うまく社会に入り込めない
さまざまな境遇の「25」の項目を挙げて
その「25項目」に該当する人を雇用するという
活動に、取り組んでいるんです。
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糸井 |
はたらく「意思」はあっても
はたらけない「境遇」の人がいる、と。
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河野 |
すでに「3000人」を雇用していて、
今年は「4000人」に届くそうです。
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糸井 |
動かすことで、流していくという考えですね。
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河野 |
そう、やっぱり「はたらく」ということです。
社会で必要とされている、
自分もあてにされているんだと思えることで
自立していける環境をつくれたら、と。
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糸井 |
いまの話をうかがっていても思うんですが
アイデアのある企画は
ほっといたって動いていくし
ノーアイデアだと、きちんと滞りますよね。
国の仕事だって言ったって
全体的に「ソフト産業」の意識がなければ
止まっちゃいますから。
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河野 |
このあいだは
手芸がすごく上手な93歳のおばあちゃんを
雇ったって聞きました。
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糸井 |
ああ、いいですね。
「いっしょに立とうよ」ってことですよね。
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河野 |
そうです。
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糸井 |
ぼくが知っている範囲で、さすがだなあ、
足に地が着いてるなあと思うのは
クロネコヤマトの先代の小倉社長がつくった
障がいのある人たちのパン屋さん。
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河野 |
スワンベーカリー。
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糸井 |
あれ、口先だけでああだこうだ言うのとは
まったくちがうレベルで、
走ってるな、突き抜けてるなあと思います。
でも、今のアイエスエフネットさんの話は
本当にすごいことですよね。
しかもそれが、東北ではじまるというのは。
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河野 |
もちろん、厳しい面だってあります。
自分の給料は
自分でちゃんと稼ぎ出すんだぞって言うし、
いま、あなたの労働はこういう状態だと
きちんとわかってもらうこともしますしね。
労働の「対価」としての賃金だってことを
成り立たせなかったら、長続きしないから。
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糸井 |
うん、うん。
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河野 |
ですから、訓練が必要な人たちについては
ふつうにやってたんでは
3万円、4万円の賃金なんですけど
かならず最低賃金は
もらえるようになるからと励まして、
トレーニングをするんです。
逆に、最低賃金をもらっている人たちも、
きちんと仕事をやらなかったら
3万円、4万円のころに戻っちゃうよと。
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糸井 |
そこは徹底してるんですね。
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河野 |
そのかわり、
ちゃんと仕事ができるようになった人は
どんどん外に紹介して、
より給料のいい職場に転職してもらう。
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糸井 |
そういう人が、4000人いるんですか。
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河野 |
もう、ちっちゃな町くらいの規模ですね。
キックオフのシンポジウムのときは、
陸前高田の市役所に、
本当に、たくさんの人が来てくれました。
自分たちにも
はたらく可能性があるんじゃないかって。
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糸井 |
すごいなぁ。
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河野 |
でも、将来的には人口減少といういよりも
じつは「資源枯渇」のほうが
地球的規模で考えたら、よっぽど怖いと思う。
人口が減少するということは、
人口一人あたりの「資源」は増えますから
それを大切に守る体制さえ整えれば、
人が少なくたって
持続可能な社会はつくれると思うんですよ。
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糸井 |
なるほど。
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河野 |
海に宝があるとは、よく言われますけど、
宝って意味では「森林」もすごいんです。
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糸井 |
東北へ行くたびに感じてますよ、それは。
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河野 |
森林を「木質バイオマス」、
つまり
再生可能なエネルギーに変えていければ
エネルギーの自立も目指せますし。
震災後に、
「自分たちの地域のエネルギーは
自分たちでつくりたい」
と考えた絵は、まだ生きているんです。
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糸井 |
ああ、おっしゃってましたね。
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河野 |
エネルギーと食料が自給自足ができて、
誰もが必要とされる、
そういう職場のある環境をつくり出す。
そうできれば
黙っていても人口は増えると思います。
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糸井 |
うん。
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河野 |
陸前高田の人口の「自然減」って
毎年、けっこうな数になるんですけど
「社会増」なんです。
つまり、若い人たちが増えてるんです。
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糸井 |
それは、戻ってきてる人たち?
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河野 |
いえ、外から入ってきた人たちですね。
結婚して
陸前高田に住むって決めた人たちです。
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糸井 |
そういう人たちは
河野さんたちの「なつかしい未来創造」を
媒介にしてるんですか?
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河野 |
いえ。そういうケースが無数にあるんです。
<つづきます> |