糸井 |
ずっと、うちの会社の姿勢を表す言葉を
探していたんですが
最近ようやく、まとまったんです。
「やさしく、つよく、おもしろく」って
いうんですけど。
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河野 |
ああ、聞きたいです。
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糸井 |
並んでる「順番」も大事なんですが
まず、はじめに、「やさしく」なんです。
民間でも行政でも
それがなかったら受け入れてもらえない。
それに、自分が「やさしくなかった」ら、
後悔するんです、あとになって。
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河野 |
ええ、たしかに。
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糸井 |
で、はじめの「やさしく」を持っている人は、
あるていど、いるんです。
だけど、次の「つよく」を持っている人って、
圧倒的に少なくなる。
それってつまり「実現する力」ってことです。
で、「つよく」を持っていても
ただの「えばる人」になっちゃったら困るんで、
頭に「やさしく」がついてなきゃダメ。
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河野 |
なるほど。
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糸井 |
3番めの「おもしろく」というのは、
それがないと「商売にならない」んですね。
たとえば「やさしく」と「つよく」は、
努力で何とかなるかもしれないけど
「おもしろく」っていうのは、
ものすごく戦ったり、悩んだり、考えたり、
その末にうまれた「へんなもの」みたいな、
そんな力なんです。
で、その「おもしろく」という部分こそが
ぼくらの「メシのタネ」になってくれる。
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河野 |
ああ‥‥そうか。
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糸井 |
東北の話をするとき、
多くの場合、たぶん「おもしろく」のことが
頭から抜け落ちていますよね。
ほとんどの人は「やさしく」を考えていて
行政には、実行する「力」があります。
でも誰ひとり「おもしろく」を考えていない。
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河野 |
そうだ。
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糸井 |
だから、いままで通りのものしかできない。
東北が、ひとつの「モデル」になるとすれば
「あいつら、おもしろいな」って
思ってもらわないとダメじゃないですか。
さっき話してくれたアイエフエスさんだとか、
「うわあ、すごい」っていうのは
「おもしろい」と同じ意味だと、思うんです。
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河野 |
そうですね、そうです。
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糸井 |
だから、その「おもしろい」を
「やさしく、つよく」で試し算してやれば‥‥。
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河野 |
ああ、循環する考え方なわけですね。
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糸井 |
そう、「やさしく、つよく、おもしろく」って
これまで
ぼくらが仕事を考えるときにで使っていた
「クリエイティブの3つの環」に
あてはめて考えても、うまく一致するんです。
つまり「動機・実行・集合」の環なんですが
「動機」のところに「やさしく」が、
「実行」には「つよく」が当てはまりますし、
「集合」が「おもしろく」なってたら
人が、たくさん、集まってきてくれるので。
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河野 |
ええ、おもしろいです。
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糸井 |
で、集まってきたお客さんがヒントをくれて
それを、次の「やさしく」に、還元していく。
もう何年も、ずっと考え続けてきたんですが、
最近やっと、説明がついたんです。
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河野 |
行政も企業も、そういう人を求めてますよね。
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糸井 |
で、たとえば、いまみたいなことを
「あれ、説明ついたんだよ」と言ってる場が、
水曜ミーティングなんです。
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河野 |
やっぱり、自分たちに当てはめて考えても
「おもしろいか、どうか」ですよね。
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糸井 |
そこに、人は集まりますからね。
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河野 |
高田自動車学校の田村の「滿ちゃん」が
もうひとつ事業を起こそうと‥‥。
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糸井 |
またですか(笑)。
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河野 |
学校をつくろうってアイデアがあるんです。
たとえば、引きこもりなどで
学校に行けなくなった子どもたちを集めて、
なつかしい未来創造株式会社で
バックアップして
そういう子たちが学べる場をつくりたいと
話していまして。
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糸井 |
いいじゃないですか。
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河野 |
ただ、教育委員会には
既存の高校と生徒の取り合いになるからと、
「生徒を外から連れてくる」
というコンセプトを理解してもらえなくて。
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糸井 |
そもそも「外」って概念がないんですよね。
大分の別府の山の上にある
立命館アジア太平洋大学(APU)が
立ち上がるときに
外国人半分、
日本人半分の学生を集めたというのは、
何か、ヒントになりませんか。
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河野 |
いやあ、本当に大きなヒントですよ。
学長を務めたモンテ・カセムさんが‥‥。
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糸井 |
そうか、知ってるんだ。
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河野 |
カセムさんは、しょっちゅう来ています。
陸前高田に
「そういう場所」をつくろうとしてます、
大学レベルで。
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糸井 |
そうなんだ。
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河野 |
私たちは高校レベルで考えてたんですが
サテライトだったら
大学レベルでもつくれるんじゃないかと。
アイエスエフネットも
以前、学校をつくったことがあるので
いま、一緒に考えているんです。
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糸井 |
おもしろそう。
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河野 |
モンテさんなんか、もう土地を購入して、
山の斜面を造成して、
ここにこんな研究所を建てるんだって‥‥。
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糸井 |
たしか、スリランカの人ですよね。
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河野 |
ええ。親父の親友で。
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糸井 |
そうか、そうか。歴史があるんだね。
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河野 |
はい、いらっしゃるたびに会いますから
思いを一緒にする仲間なんです。
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糸井 |
今日、話しながらずっと思ってますけど、
「まず、はじめる」ことが重要ですよね。
5人でも10人でも、
「まず、はじめる」ってことができれば。
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河野 |
本当に、そう思います。
仲間5~6人でやるって言ったって
力もないし、
できるんかいみたいな話かもしれないけど
やるといったら、小さくてもやるので。
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糸井 |
そうなんだよね。
ちっちゃかったとしても
確実にスタートさえできてしまえば
あとは「広げていく」なんですよね。
八木澤商店だって
ポン酢が助けてくれたおかげで
2年後にお醤油がちゃんと出たわけだから。
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河野 |
そうなんです。
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糸井 |
最初から、お醤油の話だけをしてたら‥‥。
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河野 |
何にも、はじまらなかったと思います。
<つづきます> |