東北の仕事論。続続・八木澤商店篇
 
第7回
やさしく、つよく、おもしろく。
糸井 ずっと、うちの会社の姿勢を表す言葉を
探していたんですが
最近ようやく、まとまったんです。

「やさしく、つよく、おもしろく」って
いうんですけど。
河野 ああ、聞きたいです。
糸井 並んでる「順番」も大事なんですが
まず、はじめに、「やさしく」なんです。

民間でも行政でも
それがなかったら受け入れてもらえない。
それに、自分が「やさしくなかった」ら、
後悔するんです、あとになって。
河野 ええ、たしかに。
糸井 で、はじめの「やさしく」を持っている人は、
あるていど、いるんです。
だけど、次の「つよく」を持っている人って、
圧倒的に少なくなる。

それってつまり「実現する力」ってことです。
で、「つよく」を持っていても
ただの「えばる人」になっちゃったら困るんで、
頭に「やさしく」がついてなきゃダメ。
河野 なるほど。
糸井 3番めの「おもしろく」というのは、
それがないと「商売にならない」んですね。

たとえば「やさしく」と「つよく」は、
努力で何とかなるかもしれないけど
「おもしろく」っていうのは、
ものすごく戦ったり、悩んだり、考えたり、
その末にうまれた「へんなもの」みたいな、
そんな力なんです。

で、その「おもしろく」という部分こそが
ぼくらの「メシのタネ」になってくれる。
河野 ああ‥‥そうか。
糸井 東北の話をするとき、
多くの場合、たぶん「おもしろく」のことが
頭から抜け落ちていますよね。

ほとんどの人は「やさしく」を考えていて
行政には、実行する「力」があります。

でも誰ひとり「おもしろく」を考えていない。
河野 そうだ。
糸井 だから、いままで通りのものしかできない。

東北が、ひとつの「モデル」になるとすれば
「あいつら、おもしろいな」って
思ってもらわないとダメじゃないですか。

さっき話してくれたアイエフエスさんだとか、
「うわあ、すごい」っていうのは
「おもしろい」と同じ意味だと、思うんです。
河野 そうですね、そうです。
糸井 だから、その「おもしろい」を
「やさしく、つよく」で試し算してやれば‥‥。
河野 ああ、循環する考え方なわけですね。
糸井 そう、「やさしく、つよく、おもしろく」って
これまで
ぼくらが仕事を考えるときにで使っていた
「クリエイティブの3つの環」に
あてはめて考えても、うまく一致するんです。

つまり「動機・実行・集合」の環なんですが
「動機」のところに「やさしく」が、
「実行」には「つよく」が当てはまりますし、
「集合」が「おもしろく」なってたら
人が、たくさん、集まってきてくれるので。
河野 ええ、おもしろいです。
糸井 で、集まってきたお客さんがヒントをくれて
それを、次の「やさしく」に、還元していく。

もう何年も、ずっと考え続けてきたんですが、
最近やっと、説明がついたんです。
河野 行政も企業も、そういう人を求めてますよね。
糸井 で、たとえば、いまみたいなことを
「あれ、説明ついたんだよ」と言ってる場が、
水曜ミーティングなんです。
河野 やっぱり、自分たちに当てはめて考えても
「おもしろいか、どうか」ですよね。
糸井 そこに、人は集まりますからね。
河野 高田自動車学校の田村の「滿ちゃん」が
もうひとつ事業を起こそうと‥‥。
糸井 またですか(笑)。
河野 学校をつくろうってアイデアがあるんです。

たとえば、引きこもりなどで
学校に行けなくなった子どもたちを集めて、
なつかしい未来創造株式会社で
バックアップして
そういう子たちが学べる場をつくりたいと
話していまして。
糸井 いいじゃないですか。
河野 ただ、教育委員会には
既存の高校と生徒の取り合いになるからと、
「生徒を外から連れてくる」
というコンセプトを理解してもらえなくて。
糸井 そもそも「外」って概念がないんですよね。

大分の別府の山の上にある
立命館アジア太平洋大学(APU)が
立ち上がるときに
外国人半分、
日本人半分の学生を集めたというのは、
何か、ヒントになりませんか。
河野 いやあ、本当に大きなヒントですよ。
学長を務めたモンテ・カセムさんが‥‥。
糸井 そうか、知ってるんだ。
河野 カセムさんは、しょっちゅう来ています。

陸前高田に
「そういう場所」をつくろうとしてます、
大学レベルで。
糸井 そうなんだ。
河野 私たちは高校レベルで考えてたんですが
サテライトだったら
大学レベルでもつくれるんじゃないかと。

アイエスエフネットも
以前、学校をつくったことがあるので
いま、一緒に考えているんです。
糸井 おもしろそう。
河野 モンテさんなんか、もう土地を購入して、
山の斜面を造成して、
ここにこんな研究所を建てるんだって‥‥。
糸井 たしか、スリランカの人ですよね。
河野 ええ。親父の親友で。
糸井 そうか、そうか。歴史があるんだね。
河野 はい、いらっしゃるたびに会いますから
思いを一緒にする仲間なんです。
糸井 今日、話しながらずっと思ってますけど、
「まず、はじめる」ことが重要ですよね。

5人でも10人でも、
「まず、はじめる」ってことができれば。
河野 本当に、そう思います。

仲間5~6人でやるって言ったって
力もないし、
できるんかいみたいな話かもしれないけど
やるといったら、小さくてもやるので。
糸井 そうなんだよね。

ちっちゃかったとしても
確実にスタートさえできてしまえば
あとは「広げていく」なんですよね。

八木澤商店だって
ポン酢が助けてくれたおかげで
2年後にお醤油がちゃんと出たわけだから。
河野 そうなんです。
糸井 最初から、お醤油の話だけをしてたら‥‥。
河野 何にも、はじまらなかったと思います。

<つづきます>
2015-03-19-THU
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN