バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。


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「フランスで
 医者になるのは
 たいへん?!」

 
     
バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
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「フランスで
 医者になるのは
 たいへん?!」

バブー

今まで
『パリの病院は
アパートの一室でお宅訪問気分?!』

とか
『病院の受付でランチ?!』
なんてちょっとパリのゆるくて
リラックスした雰囲気満点の
医療事情を何度かお伝えしてきたよね。

ところがどっこい。
そんな仕事ぶりからは
想像もつかないほど、
フランスの医学部を卒業して
医者になるのは大変そうなんだ。

とのまりこ

日本とフランスの医学部事情は
ちょっと1回では書ききれないほど
違うようなのです。

もっとも違っているようにみえるのは、
大学に入ったはいいが、無事卒業して
医者になれるのは、
ごくわずかな人だということ。


▲パリにある大学の医学部の校舎。

日本でももちろん国家試験などはありますが、
医学部にさえ入ったら
とりあえずは万々歳的なところ、
ありますよね??

ところがフランスの学生たち、
晴れて目標としていた医学部に入れたとしても

「むしろこれからの方が大変だから」
「テストでパスできるかわからないもん」

なんて否定的なことを
難しい顔して言う子がほとんどなのです。

バブー
まずフランスでは
「バカロレア」って呼ばれる
大学入試資格試験に合格すると、
進路が決まるんだ。

大学入学の第一の条件がこの試験。
そしてそれぞれが希望を出し
バカロレアの成績順などで
大学が決まるよ。


▲大学の授業風景。

この時点で日本の大学入試とは
ずいぶん違うけど、印象的には、
大学受験用の特別な勉強をしなくてはいけない、
熾烈な日本の大学合格への道よりは、
大学自体に入るのは入りやすい、という感じです。

ところが、めでたく医学部に入ったとして
そこからが大変!

ちょうど昨年の9月から
医学部1年生になったばかりの友達がいるから
話を聞いてみたよ。


▲大学の校舎内。

とのまりこ
9月に大学新学期が始まると
すぐの12月、そして翌年の5月に
「コンクール」と呼ばれる
大きな試験があるのだそう。

この2回のテストで毎回順位が出され、
進級・留年などが決まるということなのですが、
例えば1年生2500人中、
360人しか2年に上がれないのだそう。

そして留年が許されるのは、1回のみ。
(ちなみにこれは今年度までの話。
来年度からは制度が代わり、
さらに厳しくなるのだそうです。)

2度目の留年となれば「さようなら」。
または成績が平均4以下になると「さようなら」。

「さようなら」
=もう絶対に医者になることはできない、
 やり直しはできない。

ということなのだそうです。

バブー
なんて厳しい世界‥‥。
医学部1年生が目を三角にして
休みも取らずに必死にお勉強している理由が
よ~くわかったよ。

とのまりこ
しかも、1年だけは留年が許されるといっても
前年度進級できなくて
最後のチャンスにかけている
ひとつ上の学年のひとたちが
1000人単位でいるということだから
さらに厳しい熾烈な戦いが待っているそう‥‥。

蹴落としあいみたいなことも
少なくない世界なんだと、話してくれました。

日本の大学は入るまでが地獄、
入ってしまえさえすれば天国。
一方でフランスの大学は入ってからが厳しい。

というのは今までも色々な話を聞いて
感じていましたが、
この医学部の厳しさはなかなか?!
と驚きました。

バブー
なんだかこの仕事っぷりで
素晴らしいお給料いただいて、羨ましいよね~。
なんて思っていたフランスのお医者さんが、
すごい人たちに見え始めた(笑)、
フランスの大変な医学部事情。

今回話を聞かせてくれた医学部1年生も
「いい息抜きになったから、大丈夫だよ~。」
なんて言って、30分のカフェタイムを終えて
勉強のために急いで家路についていたよ。

がんばれ! 医学部1年生!

 

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2018-03-27-TUE


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illustration:Jérôme Cointre