みうら | ぼくは、音楽については いったんあきらめたんですけど、 あるとき、友人の石井くんが、 糸井さんの事務所に入社することを聞きまして 「やった、この出会い。 これは、オレの時代が 来たのかもしれない」 そう思っちゃったんです。
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糸井 | 出会い、っつったって。 | ||||
みうら | 糸井さんに出会ったのは石井なのに、 自分だと勘違いしたんですよ。 だから石井に 「ぜひとも糸井さんに会わせてほしい」 と、ガンガンに言いました。 石井も「いいよ〜」なんて応えてくれて やっぱりこいつはいいヤツだと 思ってたんですけど、よく考えたら、 ぜんぜんわかってないヤツでしたよね。 だって、石井は入社してすぐなのに 気軽に「いいよ〜」って言ってたから。 |
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糸井 | すばらしいよね、 そのへんの、君らの「あうんの呼吸」。 |
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みうら | それで、石井に 糸井事務所に連れてってもらって、 あの有名な「カセット事件」が 起こることになりました。 たしかにオレは糸井事務所で 何時間も自分の歌を流しました。 はじめはちょっと糸井さんが 聴いてくれてるような気がしたんです。 |
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糸井 | ははは。
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みうら | 糸井さんは会議をやってらして、途中で 「ちょっと! ボリューム下げて」 とおっしゃいました。 だけど、オレは 食らいつこうと思って、流しつづけました。 あとで 「おまえ、なにか、 大きいことまちがってないか」 と言われて、 あれ? おかしいな、と思った── それが、はじめての出会いです。 |
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糸井 | その日がね。 |
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みうら | 初日です。 | ||||
糸井 | 初日に「テープ」ですから。 | ||||
みうら | 「マンガ」のほうがあとでしたね。 | ||||
糸井 | 石井が、 「ぼくの友達で スーパースターになるって ヤツがいるんです」 と紹介したの。 思えばたしかに、 マンガでスーパースターには、 なんないよね。 |
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みうら | なんないですね。 | ||||
糸井 | やっぱりスーパースターは音楽で、でしょう。 だけど、それは誰にも通じてなかった。 石井もわかってなかった。 「なんで、マンガ描いてて スーパースターになるんだよ」 と訊いたときにも 「そのへんがおもろいんですよねぇ、あいつ」 なんて言ってたから。 |
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みうら | 糸井さんに会う前に、 例のヘンタイよいこ集会を見たから‥‥。 |
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糸井 | つまり、オレのことを 「この人は音楽の人だ」と。 |
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みうら | 思いました。 だって、糸井さんは そのイベントの、トリだったもん。 トリがえらいに決まってるじゃないですか。 |
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糸井 | オレがやったバンドはトリじゃないよ。 | ||||
みうら | そうでしたっけ? トリに決まってますよ。 まぁいいや、とにかくそれまでは、 音楽の人は音楽をやる、 文章の人は文章を書く、 そう決まってる時代だったんです。 だからあのイベントはもう、 たいへんショックな出来事だったんですよ。 |
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糸井 | ま、音楽が人を 二枚目ぶらせるという話だよね。 なんていうの、セレナーデ? つまり、求愛の歌。 |
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みうら | ええ、そうですね。 | ||||
糸井 | 求愛はね、 みうらの原点ですよね。 見苦しいほど愛されたいんだ。 |
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みうら | そうです。 | ||||
糸井 | すべてセレナーデ。 | ||||
みうら | 「いっそセレナーデ」でなく。 | ||||
糸井 | ぜんぶセレナーデ。 | ||||
(つづきます) |
2009-08-05-WED