糸井 | 高校生のころからカセットに 自分で歌を録音しはじめて、 最初のファンが、おかん。 |
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みうら | おかんが台所で夕飯つくりながら オレの曲を口ずさんでたときは、 さすがにこれはいかんと思いました。 |
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糸井 | 「おかん」じゃなくて「いかん」だと。 | ||||
みうら | ええ、「いかん」だと。 |
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糸井 | で? | ||||
みうら | とにかく、歌というものは、 反発することから生まれると 思っていた時期でした。 反発どころか、拍手が聞こえてくる、 家庭内から。 それは作詞活動に影響を及ぼします。 おかんが歌いやすい歌を作ってしまう、 自分をどうかと思ったり。 |
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糸井 | おかんの中に、女全部が入ってるんだよ。 | ||||
みうら | うーん‥‥ じゃあ、入ってるんですよ、 入ってるんですよ。 |
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糸井 | 入ってるんだよ。 |
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みうら | だけど、それを認めちゃうと 全身が萎えるじゃないですか。 |
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糸井 | ああ、そうだね。 | ||||
みうら | ぼくは昔からずっと巨乳が好きです。 ほんとに好きなんですよ。 ほんとに好きなんです。 |
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糸井 | いま、巨乳のところ、小さい声で言ったな。 | ||||
みうら | だから好きだと3回言ったんです。 その原因は、おかんなんです。 |
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糸井 | ああ。 | ||||
みうら | 何年か前、実家に帰ったとき、 ものすごく大きいカップの ブラジャーを発見しました。 前からうすうす気がついていたことなんですが、 ハッとして、そして、萎えました。 |
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糸井 | 「しまった」と。 | ||||
みうら | 見なきゃよかったと思いました。 | ||||
糸井 | ああー。 | ||||
みうら | ぼくは去年、親孝行しようと思って、 いろんな場所に両親を連れていきました。 動物園に行ったとき、 うちのおかんのブラジャーが ボワーンと、外れたんですよ。 |
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糸井 | おおー。 | ||||
みうら | それを、うちの親父がすかさず留めてました。 | ||||
糸井 | うわー。 | ||||
みうら | オレは気が動転して、 ブラジャーを留めるどころじゃありません。 親父は何回か経験があるみたいで、 フォローできるくらいになってまして、 スッと留めるんです。 そんときも、2萎えぐらいしましたけど。 |
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糸井 | 過去にさかのぼって萎えちゃうよね。 | ||||
みうら | ぼくはこれまでいろんなことを 「青春だ」と思って、やってきました。 すなわち、いちばん好きなものから 離れていく作業が、人生です。 でも、近年はそれが裏返って なかよくしてますよ。 抱きついてもいいくらい親となかよくしてます。 |
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糸井 | うーん、いろいろなことを知っちゃったね。 いやぁ、それは、人ごとながら、 想像すると、ジンとくるぐらい重いね。 |
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みうら | はははは‥‥。 | ||||
糸井 | オレはおたくのおかあさんには 会ったことはないんだけど。 |
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みうら | そうですよね(笑)、考えてみれば。 | ||||
糸井 | クッキーもいただきましたけどね。 | ||||
みうら | うちのおかんのクッキー事件(笑)。 | ||||
糸井 | うん。 クッキーの入ってる袋が曇ってるんですね。
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みうら | いまから考えると ゾッとするようなことを 糸井さんには、いっぱいしてるんですよ。 これから半生は、もう 取り戻すようにやっていきたいです。 |
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糸井 | 取り戻すように。 | ||||
みうら | なのにオレは、 同じティーバッグを使って 紅茶を3杯も出して。 |
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糸井 | 紅茶はね、 悪くなったらどんどんお湯になるわけです。 だから、なんの問題もないんだよ。 ひとつのティーバッグで 8杯淹れても大丈夫なの。 最後はお湯で、 要するにゼロに近づいていくだけだから。 |
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みうら | はい。 | ||||
糸井 | でも、おかんのクッキーはなぁ‥‥。 つまり、それは愛情という問題に 突っ込まされていくことになるんだよ。 |
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みうら | そうですね。 | ||||
糸井 | 「これをおいしいと思え」 みうらも知ってるように、 そういう社会と オレはいままで闘ってきたわけだから。 |
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みうら | はははは。 | ||||
糸井 | みうらのロックが、 好きなものから離れていく青春だったとすると、 オレは社会の 「こうであるはずだ」というものと、 闘ってきたわけです。 |
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みうら | おっしゃるとおりです。 | ||||
糸井 | それをみうらは、こう言ったんだよ。 「なんだったら、お土産で持って帰ってください」 |
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みうら | はい、はい。 糸井さんの闘いを知っていながらね。 |
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糸井 | 「返す。もう、お母さんは クッキーつくんなくても、いいと思う」 |
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みうら | ええ。ホントに、そこまでおっしゃいました。 | ||||
(つづきます) |
2009-08-06-THU