糸井 | 映画の『色即ぜねれいしょん』で、 オレがいちばんおもしろかったところ、 言おうか。 |
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みうら | お願いします。 | ||||
糸井 | 重要な女の子は、島で会った子なのに、 主人公の中では、 地元の子のほうが主になってるんです。
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みうら | そうです。 いまでも、そうです。 |
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糸井 | いまでも? | ||||
みうら | はい。
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糸井 | あの構造が、ものすごくおもしろいね。 | ||||
みうら | ほんとうはあの子を どうにかしたほうがいいですよね。 |
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糸井 | あの子のほうが、主人公を好きだぜ。 それに、いい子だよ。 |
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みうら | いい子でした。たしかに。 | ||||
糸井 | だけど、憧れてたほうの子は おまえのことなんか ぜんぜん好きじゃない。 |
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みうら | いま、ぐさりと刺さりました。 | ||||
糸井 | そこが、ほとんどの男の まちがいだと思うんです。 |
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みうら | そうかもしれないですね。 | ||||
糸井 | その行ったりきたりは、 一生つづくんだろうな。 |
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みうら | やっぱり「いちばん自分の好きな人に」と 思ってるところが、 モテない原因なんだと思います。 |
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糸井 | イニシアティブだかアドバンテージだかを、 自分発にしたいと思うから そうなるんだよね。 |
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みうら | なるほど、そうですね。 | ||||
糸井 | 普段会うタイプの女の子を 好きだという理由って、ないんだよねぇ。 ‥‥あのさ、みうらが憧れてたほうの子は、 ほかの奴らにもモテてたんじゃないかな? |
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みうら | はい。モテモテの子でした。 | ||||
糸井 | もしかしたら、その買い物が したかったんじゃないかなぁ。 |
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みうら | ああ、そうかもしれない。 | ||||
糸井 | 名札のない子が、 アコヤ貝に真珠が入ってるように 海に浮かんでる場合は、 値段がついてないし、わからないんだよね。 |
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みうら | だから、逃してるんですね。 | ||||
糸井 | 逃してるんだよなぁ。 | ||||
みうら | あの時点で童貞喪失する可能性が あったと思います。 でも、こじらせてしまいました。 |
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糸井 | それは、童貞という ボディーの部分だけじゃなくて、 心もいっしょにこじらせたんだね。 |
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みうら | そうです。 | ||||
糸井 | きっと、あの島の子に 気持ちが行くという物語が 作れない一生に なったんじゃないかな。 だけど、その、 なんにもなかったということが そのあとのみうらをつくったんだから、 それはそれでよかったともいうべきだよね。 「ない」を どれほど貯金できるかということが その男の大きさを決める道具でしょう。 |
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みうら | ははは。 いや、そう思います。 なにもないんですよね。 |
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糸井 | だけど「あらまほし」(あればいいな)とは 思ったでしょ。 |
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みうら | それはもちろん思いましたよ。 | ||||
糸井 | 妄想の中でどんだけ思ったか、わかんない。 だけど、「ない」んだよね。 その「ない」が、 人をものすごくおもしろくするよね。 |
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みうら | そうかもしれないですね。 | ||||
糸井 | 「あり」は「あり」でおもしろいんですよ。 だけど、「ない」なのに。 |
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みうら | 「ない」なのに、 そのときに通った道、その時間が 「ない」のに、ありますからね。 |
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(つづきます) |
2009-08-10-MON