笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。



鶴瓶 テレビの世界のほうもたのしいんやけど、
なんでだか知らないけど、
いまは落語をやってる。
糸井 こんなに自由に
テレビの中で羽ばたける人が、
落語のような、
あんな、一見、不自由なところに……。
鶴瓶 入ってもうたんや。
糸井 でも、どっかで、
なにかの交差点が
できるって希望があるわけでしょう?
鶴瓶 いずれね。
糸井 テレビをやめてるわけじゃないですからね。
鶴瓶 うん。
いや、テレビは、ぜったい大事です。
糸井 今まで以上に
出演しているくらいじゃないですか?
鶴瓶 そうなんです。
糸井 おととい、たまたま
松本人志さんに会って、
落語の話になったんですよ。
鶴瓶 へぇー。
糸井 そしたら松本さんが、
「ぼく、落語は聴いてるんですよ、けっこう」
って言ってたんです。

父親に連れられて、小さい頃に、
オッサンばかりの中に子どもがひとり混じって、
落語を聞いてたんですって。

それで
「落語を聞いたことのあるお笑いの若手と、
 聞いていなかったお笑いの若手は区別がつく」
って言うんです。

もちろん、それが
欠点になる場合もあるんだけど、と。
鶴瓶 ああ、なるほど。
糸井 「どっちかっていうと、落語は好きだ」
っていうような言い方してました。
鶴瓶 やっぱりそうやろね。
あいつはやっぱり、
血の中にそういうのがあるんです。
糸井 松本さんと、
鶴瓶さんの落語の話になったんです。

ぼくは何度か
鶴瓶さんの高座を聞いているから、

「鶴瓶さんは、枕を降る前のところでは
 会場の笑いをぜんぶさらいきって、
 それで、はじまったら緊張してる」

「もちろん、つまんないかっていったら
 つまらなくないし、
 ヘタかって言ったらヘタじゃないんだけど、
 本人が満足してないみたいで」

と伝えたら、すごくよろこんでた。

鶴瓶 たとえば、阪神巨人の巨人は、
もともと落語家の弟子やったんですよ。
それをやめて、漫才をやってるんですよね。

落語をやってるやついうのは、
相手との間合いがはかれるんです。
相手の間合いを待つことができるんです。
自分の間合いでやっているけど、
「いちばんええ間合い」が好きやから。
糸井 ぼくはいま、
昇太さん(春風亭昇太さん)の
落語を聞きはじめて、ぶっとんでいますわ。
鶴瓶 そらまぁ、そうでしょう。

昇太、志の輔というのは、
やっぱり毎回ホームランを打ちますからね。
糸井 鶴瓶さん、一緒に舞台をやっていて
それを感じるっていうのは、よっぽどなんだね。
鶴瓶 落語はじめて、すぐにわかったんです。

去年の春に『六人の会』
(立川志の輔、春風亭昇太、笑福亭鶴瓶、
 春風亭小朝、林家こぶ平、柳家花緑の6人で、
 2003年3月に旗揚げした落語の会)
がスタートしたんですけど、
まずは志の輔からハマったんですよ。

小間物屋政談とか、リライトのしかたが、
めっちゃうまいの。
糸井 作家としてのすぐれた部分っていうのは、
志の輔さんはものすごいですよね。
鶴瓶 一緒にあがってると、
昇太、志の輔というのは、これ、
すごい人たちと一緒にやってんねんな、
という思いがあってね。

昇太は、まずぼくが大阪でやってる
『無学の会』という寄席に呼んだんです。
「こんなんがおる」ゆうのを
紹介したんですけど、
やっぱり受けますよね。

昇太は、かわいいんですよ。
舞台がかわいい。全体に愛されるんです。
糸井 そうですよねぇ。

ぼくは
「鶴瓶さんが、本気で落語をはじめて
 2年ぐらいになっている」ということも、
いつもほんとにすごいなぁと思って見ています。
鶴瓶 ぼくは、
ストレートに行こうと思ってるんです。

言うたら、やっぱり、
ちょっと、遠まわりしたいんです。
なにもしてなかったからね……。

落語でウケるやりかたいうのは、
自分のカタチを出してメチャやれば、
ウケるんですよ。

でも、それやってたら、
もう一生それで終わってしまうと思った。


だからもう、イチからきっちり、
やりだしたんです。
若い頃の自分のテープを聞いていると、
自分で言うのもおかしいけど、
枕からむちゃくちゃやから。
糸井 「フォームが崩れた打ちかたでも、
 飛べばいいんだろう?」
というやつですよね。
鶴瓶 うん。
それで、やっぱり、
当時はちゃんと飛んでいるんです。

でも、それだけではイヤで。

それで自分でちゃんとやりだしたんですね。
それで、落語、好きやから、
いろいろ聞いたりすると、
すごい人のすごさが、
わかってくるやないですか……。
糸井 ええ。
鶴瓶 だから、やりすぎやなという部分は、
絶対におさえておかないといけないんですよね。

これはもう、ちょっと
礼儀正しくやってるでしょう?
そこから覚えていこうかなぁと思ったんです。

  (明日に、つづきます)


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2004-07-28-TUE

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