鶴瓶 |
こないだ、ごはんを食べてるときに、
近くにヤクザの夫婦がいたんです。
その内容が、
「おまえの教育が悪いからや。
娘がクラブや言うて遅なって……
8時には帰せよ」
クラブ活動やってる娘のことや。
ああいうのって、おもしろいよね。 |
糸井 |
その会話も、触るだけなんだよね。
ツッコミを入れるわけでもないし
「聞いてる」んだよね……。 |
鶴瓶 |
うん。
はなわがガッツ石松さんの歌を作って……
俺、聞いたことないねやけど、
あれでぜんぶ取りあげてしもたから、
もう使えないですよ。 |
糸井 |
ガッツさんを、
いっぺんに消費しきっちゃうのは、
もったいないですよね。 |
鶴瓶 |
あれも、ちょっと触るだけで、
みんなで使いたいのよ。
はなわはそれを見つけたんやから
ええんやけど、
ほんとはみんなで長く遊びたい。
そっとしときたい。
「おまえだけのガッツか?」と。 |
糸井 |
(笑)それはぼくもそうなんです。
ずーっとちょこちょこ
長く遊びたいっていうの、ありますよね? |
鶴瓶 |
そうなの。
流行ったらあかん。
流行ったら、
ひと山越してしまうからね。 |
糸井 |
そうだよね。 |
鶴瓶 |
ガッツさんが
自分で流行るならいいけど、
人によって流行らされたら
「OK牧場」も、あんまりおもろなくなるし……。
あんまり流行ったら、あかんねん。
そんなんの連続よ。 |
糸井 |
そこは、むずかしいんだよね。
鶴瓶さん、自分のことは
どう思っているんですか? |
鶴瓶 |
俺も天然のところは、
あるんでしょうな。
だいぶありますでしょう?
人間は、みなそういうとこあるんですよ。
だから落語がおもしろいし、
そういう生活が
やっぱりおもしろいのであって。
ただ、それもちょっとやったらええけど、
日常生活に「あるある」ということの
連続を歌にしたりしてしもたら……
ま、あるけどな、っていうことになる。 |
糸井 |
ふつうの時間の中の、
薬味程度ならおもしろいんですよね。 |
鶴瓶 |
そう。
それを全部とって並べられると、
それで終わりちゃうのん?と思うんです。
それはもう、触るだけにしておきたい。 |
糸井 |
つまり、
サビばっかりのレコードを
聴かされたらかなわないってことだよね。 |
鶴瓶 |
そう。それはおもろいか?っていう……。
|
糸井 |
うん。
いま、みんなが大慌てになって、
いろんなことの「目玉」ばかりを
並べようとしてるけど、
それはつまんないよね。 |
鶴瓶 |
うん。 |
糸井 |
「あんまり流行ったらいけない」
と鶴瓶さんがおっしゃっていたところ、
ほんとにそうだよなと思うんです。
ひとりの人が、長く
たのしんでもらえるようになるかどうかは、
芸能の世界では、
どういうふうに差が出てくるんですか? |
鶴瓶 |
育てられた環境が、やっぱり出ますよ。
それから、
芸能界に入ってからのアタマのよさですね。
たとえば、伊東四朗という人は、
すごくアタマのええ人です。
一番手を取らないで、ずーっとやってきて、
どこにはめても成り立つし……あの人は
「自分が流行ると思わなかったものが
流行りだしたときには、
もうはやいところやめよう。
流行ったらあかん」
と思える人ですね。
割とそのへんは、一緒にするのは
非常に失礼やけど、ぼくも似ているんです。 |
糸井 |
流行りさえすればいいという
考えかたをしていたら、
寿命を縮めるだけというのがあるから、
むずかしいよね。
鶴瓶さんは、プロ化しないからこそ、
長くつづいているのかもなぁ。
だけど、やってきたことの分量がすごいから、
さらに人を惹きつける
引力が増しているというか。 |
鶴瓶 |
アマチュアのいいのは
「あたらしいことをやるときに、
とにかく、みんなで、がんばろうとするところ」
じゃないですか。
グワーッと、祭りをしようという……
だからアマチュアの
第1回目の打ちあげ花火はすごいんです。
プロは、2回目が
1回目よりもすごくなるんですけど、
素人は1回目がすごい。
ぼくは毎回が
1回目の祭りやと思ってるからね。
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(鶴瓶さんとの会話は、今日でいったんおわりです。
ご愛読を、どうもありがとうございました!)※2004年12月に続きます。 |