|
鶴瓶 |
ぼく、いま、名前、
変えようかな思てるんです。
さっき、ちょうど、
店を予約したんですよ。
何度も行ってる店ですから、
笑福亭鶴瓶やと
わかってもらってると思ってたんやけど、
「もう一度、お名前おねがいします」と言う。
「笑福亭鶴瓶です」と言うたら、
「ショクフク? ショクフク?」て。
俺、どんな人間やねん、
「ショクフク」て……。
「ショクフクテ」と言うてはったけど、
わかってはれへんかったですよ。
「カツゼツ悪いから、学校いこかな思って」
とうちのマネージャーにきくと
「キャッチフレーズ、
つけはったらどうですか?」と言うて。
でも、
「笑っていいとも木曜日でおなじみの、
笑福亭鶴瓶です!」
……そんなん、イヤやんか。
最低やろ?
それでわかれへんかったらどうすんねん。
|
糸井 |
「まぁ、ピーコさんね?」とか言われて。
|
鶴瓶 |
それ、いやや。悔しいわ……。
今日もタモリさんに言われたけど、
俺、この世界に
向いてへんのちゃうかなと思って。
|
糸井 |
(笑)え?
|
鶴瓶 |
今日の『いいとも』なんかでも、
おもしろい話やということは、
すごいわかってるから、
しゃべってんねんけど、
核が伝わってない。
|
糸井 |
(笑)
|
鶴瓶 |
お客さんは、
笑ろてくれてんねんけど、
それをタモリさんが見つけて、
「あなた、何を言ってるかわからない。
自分でたのしんじゃってるよ」と。
そういうことが多々あって、
主語と述語と修飾語が、
もうばらばらなんでしょうね。
|
糸井 |
早い話が、
何を言ってるかわからない人?(笑)
でも、今まで、芸人として持ってきた──。
|
鶴瓶 |
そう。三十年。三十二年か。
|
糸井 |
すごいよね……。
何を言ってるかわかんないけど、
やってきたって……(笑)。
それって、
チンパンジーの絵が、三十何年間、
売れ続けたみたいなことじゃないですか。
|
鶴瓶 |
うれしいような。
|
糸井 |
ぼくも、自分の仕事では、
似たようなことを思いますからね。
|
鶴瓶 |
そうでしょう?
まわりが、
ふりかえったら、人ってなんやねん?
世間に訊いてみなはれ。
「糸井重里って、何ですか?」と。
世間でずっとインタビューしたら、
まあ大半は……埋蔵金でしょうね。
|
糸井 |
そうなんだろうね。
|
鶴瓶 |
まぁ、コピーライターも
出てくるだろうけど、
穴を掘る人というのが出てくると思う。
なんや、一生訴え続けても、
自分がこうだと思うことは、
全体には伝わらないですよ。
|
糸井 |
うん。
鶴瓶さんもぼくも、
夢だとか大志だとかいう核がないんじゃないの?
|
鶴瓶 |
そうなんですよ。
これ言うたろって、
そのつど、もう実現してそうなものを
言うてるだけですからね。
それでうまいこと、
逃れてきたっていうのはあります。
|