笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第16回 つい、気を使ってしまって。

糸井 正月になると、
今年の抱負とか、きかれるじゃないですか。
でも、きかれる用に生きていないから、
ほんとは、抱負なんて、ないですよね。

ぼくは敏感だから
「そういうのにこたえるのはよくないな」
とかいちいち思っているうちに、
夢、なくなっちゃうんです。
鶴瓶 そやけどほんまにね、
若いうちからこんな考えやったらあきまへんで。
やっぱり五十をこえないと。
糸井 俺はビッグになってやる、みたいな?
鶴瓶 そういう気持ちを、
少しは持っていかないとあかんと思うねんけどね。
まぁ、今日は今日というふうに、
ズルズルきてる人って、ほんまに……。
糸井 ナマコのような人生?
ナマコは傷口が治るらしいよ。
鶴瓶 ヤギ汁は、傷口が化膿しまんねんで。
山羊汁。宮古島の山羊汁。

どうしても取材やから、
高校生が作ってくれたから飲んだんですけど、
そんなん、食われへんやん。

ほんで、それで、その土地の人も、
もういまは、あんまり食べはれへんやって。
でも、しゃあない、もう、気ぃ使いやからね、
俺とマネージャー、ガーッ、食べて。
糸井 気を使って、
「うまい」とか、言っちゃうんでしょう?
鶴瓶 「これ、もっとくさいと思ってたけど」
と言うて……。

くっさいねんけど、すぐに食べたんです。
ほんだら向こうが、
もう1杯、バーッ!入れはったんですよ。
糸井 (笑)
鶴瓶 だけど、テレビあるし、俺の番組やし。
そもそも、俺が作ろう言うた番組なんや。

キャンプファイヤーみたいなのを
しよう言うたところに、宮古島やったから、
山羊汁が入ってきたんや……
それ、山羊はいらんでぇ、言うてるのに。
糸井 「山羊はかわいいから、
 食うのはやめよう」とか言うしかないか。
鶴瓶 あのね、
土地の人が歴史的に食べてはるもんをね、
拒否できないやん。

それも、いまはもう、
おばあちゃんしか食べはらへんやつね。

高校生なんか飲めへんのやけど、
それを、バーッと入れてくれるわけや。
ほんだらもうしょうがないし、
プーとか吐かれへんし。
糸井 慣れない人には、くさいだろうねぇ。
鶴瓶 今日なんか、
ナマズのスープを飲まされたがな。
昼のさわやかなときから。

ミャンマーのスープなんやけど、
なに入ってるかわかんない。
ミャンマーの人には悪いけどね、
もうだめなんです。

だけどやね、おとなやから、
「うん、ちょっとクセがある」と言うて。
糸井 (笑)鶴瓶さん、
たとえばフランス人が来て、
塩辛を食べなはれってなったとき、
食べたくないといわれても
平気じゃないですか。
鶴瓶 それはね、
糸井重里はなんでもそれは言えます。
あなたは、はっきり言う人だから。
糸井 (笑)
  (つづきます)


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2004-12-26-SUN

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