鶴瓶 |
会うたときになんべんもいいますけど、
糸井さんと言うといつも思い出すねん。
昔に、番組で一緒にまわったときに
エレベーターの中で糸井さんが
頑固なおっさんにキレて。
あれ、おかしかったわぁ。
「いいじゃないか!
あんたには迷惑かけてないだろ!
なにをしたんだ!」って。
むこうもまた頑固で……
人が怒っているのって、おもしろいね。
自分が沸点に達していないから、先にキレて。
俺のほうが先にキレそうなタイプなのに、
糸井さんのほうが先にキレるね。
エレベーターで番組撮ってるのに、
本気でケンカするねんもん。
こんな人、ないよ?
そんなん、黙ってたらええやんか。
あの時、エレベーターにふたりで、
クツ脱いで正座して乗ったんです。
そしたら、おっちゃんがえらい怒り出した。
やってるおれらが悪いやん。
|
糸井 |
(笑)
|
鶴瓶 |
でも糸井さんが本気で怒りよって、
むこうのおっさんも怒りよって……
俺はもう気まずいヘンな汗を出して。
|
糸井 |
そういうことを言うんだったら、
そのいたずらの番組のロケ中に、
もうひとつ、女湯に入ってまちがえました、
みたいなとき、鶴瓶さん、
ちょっと前をふくらましたんだよね?
|
鶴瓶 |
(笑)でもね、ちょっと待ってください。
それ、前をふくらますいうのは、芸ですよ。
むずかしいですよー、そんなもん。
テレビという仕事の最中に、
前をふくらます、ぬくうする……
ちょっとぬくうなってる、
そういうのは、ふつうの神経ではできないですよ。
|
糸井 |
ぬくい!(笑)
明らかに、
番組サイドから雇われた女の人たちが
女湯にいる番組なんだから、
ふくらましてるヒマなんてないんだよね。
なのに、鶴瓶さん、ひとりだけ、
「熱くなってきた」とかいって……。
|
鶴瓶 |
そういう人生を、
ずーっと過ごしてるから、
楽しい五十歳が迎えられたんですよ。
|
糸井 |
あの番組は、つまりおたがいに、
「わたくし」を入れてたっていうことですよね。
|
鶴瓶 |
入れてはいけない「わたくし」を入れながら。
……ただ、
あなたのわたくしの入れ方と、おれの入れ方は違う。
|
糸井 |
(笑)
|
鶴瓶 |
ぼくは、あの日に糸井さんに会えて、
ほんまにうれしかった。
この人はおもろい人やなぁと思って。
あれは、怒る糸井さんもおもろいけど、
怒ってるおっさんもおもろいし……
たぶん、もしも糸井さんが一般人やったら、
あの怒っていた頑固なおっさんが、糸井さんですよ。
言うたら、鏡どうしが喧嘩してる、みたいな。
|
糸井 |
そうなんだろうね。
カチンとくるっていうのは、
似てる部分なんですよね、きっと。
|
鶴瓶 |
あれ、二十年ぐらい前でしょう?
|
糸井 |
もっと前ですよ。
|
鶴瓶 |
そうやね。
ほんとに長いつきあいやもん。
なんか別に
あぶらっこいつきあいやないねんけども、
ときどき、濃くなる。
ふしぎなつきあいやなと思いますねぇ。
|
|
(つづきます)
|