鶴瓶 |
今は、落語をはじめる時に
どう準備するかいうと、たとえば
「竃幽霊(へっついゆうれい)」
をやるときには、
いろんな「竃幽霊」を聴きますよね。
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糸井 |
うん。
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鶴瓶 |
志ん生、小さん……もう、いろんなんですよ。
それを聴いたうえで、
誰のものがいちばんいいのかな、
なぜいいのかなと考えて、
野球のレギュラーを決めるように、
「竃幽霊」について
一番からクリンナップを揃えてみるんです。
そうなると、
やっぱりすごいなと思うのが、
談志と志ん朝ですよ。
大先輩に対して評価をするようで、
失礼な言いかたやけど、ほんとになにしろ、
談志、志ん朝は、もうかならず、
そういうもののレギュラーには入ってますね。
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糸井 |
そうですよね。うん、別ものですよね。
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鶴瓶 |
そう思います。
ただ、この「らくだ」というものに関しては、
四番バッターは
うちの師匠(笑福亭松鶴)なんですよ。
あれはもう、絶対、揺るぎないですわ。
もともと、言うたら大阪の話ですからね。
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糸井 |
談志の「らくだ」はこわいですよね。
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鶴瓶 |
ええ。
しかし、最後の部分はやっぱり、
これはうまいこと変えてるなぁ、
やっぱりこの人がやってんねんなぁ、
と思うところがありますもん。
だから、談志の「らくだ」も、
打席に入ってきますよね。
ただ、うちのおやっさんの「らくだ」は、すごい。
談志師匠の「らくだ」の場合は、
談志というものがありながら
ずっと演じるわけだけど、
うちのおやっさんは、全体的に
やっぱり、演じているんじゃなくて、
「その人」なんですよ。
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糸井 |
もう、なってるんですね。
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鶴瓶 |
なってるんです。
だから、それは、だから四番バッターですよね。
「この人、四番やな。もうこの人、紙クズ屋や」
と思わせるところが、ぜんぶ入っていますから。
うちのおやっさんは、ぜんぶ、
何をやってもそれになっているんですけど、
しかし師匠の「らくだ」は、談志師匠が
「『らくだ』で
松鶴がすごいということがわかった」
と文章で認めてはるぐらいですからね。
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糸井 |
それをしゃべっている鶴瓶さんもすごい。
落語に関しては、
こんなに勉強家になっちゃったんだ……。
ただ、勉強したくてやってるんじゃなくて、
自然に知りたくなってるわけでしょう?
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鶴瓶 |
そうです。
昨日も、新作というか、
わたくし落語っていうか、
自分が経験した話って、よぉあるやん?
『パペポTV』とか、
『きらきらアフロ』でしゃべってるあれを、
ぼく、いま落語に直しているんですね。
「わたくし落語」というかたちで。
それで今度、
「青木先生」というタイトルの
話をやろうとしているんですよね。
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糸井 |
へぇー。おもしろそうだなぁ。
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(つづきます)
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