笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第20回 談志と志ん朝はすごい。

鶴瓶 今は、落語をはじめる時に
どう準備するかいうと、たとえば
「竃幽霊(へっついゆうれい)」
をやるときには、
いろんな「竃幽霊」を聴きますよね。
糸井 うん。
鶴瓶 志ん生、小さん……もう、いろんなんですよ。

それを聴いたうえで、
誰のものがいちばんいいのかな、
なぜいいのかなと考えて、
野球のレギュラーを決めるように、
「竃幽霊」について
一番からクリンナップを揃えてみるんです。

そうなると、
やっぱりすごいなと思うのが、
談志と志ん朝ですよ。

大先輩に対して評価をするようで、
失礼な言いかたやけど、ほんとになにしろ、
談志、志ん朝は、もうかならず、
そういうもののレギュラーには入ってますね。
糸井 そうですよね。うん、別ものですよね。
鶴瓶 そう思います。
ただ、この「らくだ」というものに関しては、
四番バッターは
うちの師匠(笑福亭松鶴)なんですよ。

あれはもう、絶対、揺るぎないですわ。
もともと、言うたら大阪の話ですからね。
糸井 談志の「らくだ」はこわいですよね。
鶴瓶 ええ。

しかし、最後の部分はやっぱり、
これはうまいこと変えてるなぁ、
やっぱりこの人がやってんねんなぁ、
と思うところがありますもん。

だから、談志の「らくだ」も、
打席に入ってきますよね。

ただ、うちのおやっさんの「らくだ」は、すごい。
談志師匠の「らくだ」の場合は、
談志というものがありながら
ずっと演じるわけだけど、
うちのおやっさんは、全体的に
やっぱり、演じているんじゃなくて、
「その人」なんですよ。
糸井 もう、なってるんですね。
鶴瓶 なってるんです。
だから、それは、だから四番バッターですよね。
「この人、四番やな。もうこの人、紙クズ屋や」
と思わせるところが、ぜんぶ入っていますから。

うちのおやっさんは、ぜんぶ、
何をやってもそれになっているんですけど、
しかし師匠の「らくだ」は、談志師匠が
「『らくだ』で
 松鶴がすごいということがわかった」
と文章で認めてはるぐらいですからね。
糸井 それをしゃべっている鶴瓶さんもすごい。
落語に関しては、
こんなに勉強家になっちゃったんだ……。

ただ、勉強したくてやってるんじゃなくて、
自然に知りたくなってるわけでしょう?
鶴瓶 そうです。

昨日も、新作というか、
わたくし落語っていうか、
自分が経験した話って、よぉあるやん?

『パペポTV』とか、
『きらきらアフロ』でしゃべってるあれを、
ぼく、いま落語に直しているんですね。
「わたくし落語」というかたちで。

それで今度、
「青木先生」というタイトルの
話をやろうとしているんですよね。
糸井 へぇー。おもしろそうだなぁ。
  (つづきます)


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2004-12-30-THU

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