笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第25回 人間って不思議ですわな。

糸井 夫婦って、不思議ですね。
ふだんはそんなに
深いつきあいはないじゃないですか。
鶴瓶 外の人とのほうが、
ようしゃべったりするわね。
糸井 だけど、気配ですよね。
鶴瓶 気配でしょうなぁ……
ぼくは三十年、
一緒に住みだして三三年ですけど、
まあ、その、年功とかは、関係ないんですよ。

五年でも、こんなに合う人間は
おらへんということはあるでしょうね。
ぼくらは恋愛結婚ですけど、
あの、お見あいというのもおもしろいな思たり。

見あいっていうのは、
その人と会うところからでしょう?
そこから、恋愛が、
ずーっとはじまるわけですよ。
長い恋愛のはじまりですよね。

だから、これからの時代は、
見あいというのもね、いいんかなぁと思う。
糸井 おたがいを教えあっていく、
みたいなことがいいですよね。

うちの事務所にも、出会って
二週間で結婚を決めたやつがいて、
でも結婚してから
「毎日好きになる」
みたいなことを言っていて……。

イヤなセリフなんです、人が聞いたら。
でも、わかりますよね、意味は。
鶴瓶 わかります。
その前のことを知らないですから、
結婚と恋愛を、
一緒にしてるようなもんですからね。
糸井 今もそいつは、なんかゴキゲンですよ。
子どもができた、とかいって。
鶴瓶 だから、まぁ、人間って不思議ですわな。
糸井 他人がいるよろこびもあるし、
鶴瓶さん、ひとりぼっちも好きでしょう?
鶴瓶 ひとりぼっちも、好きですよ。
糸井 他人がいるってことが、
炭火にちょっと手をかざすみたいに
うれしいって気分?
鶴瓶 うん、うん。
糸井 落語って、そんな話ですよね。
鶴瓶 うん、まあ、そうでしょうな。
落語っちゅうのは、いやな人間が出てこないから。
糸井 たまにイヤな侍が乱暴したときには、
あっという間に首が飛んだりするし。
鶴瓶 そうそう(笑)。
もうほとんど、ハッピーエンドですよね。
ああ、よかった……とホッコリするゆう。
糸井 こんな世界が作りたいんです、
というメッセージが入っているんです。

政治家が、落語を一席やって、
「こういうところに私は住みたい」
といってくれたら、一票入れちゃいます。
鶴瓶 「粗忽長屋」なんて、
あんな不思議な話ないでしょ。
でも、それを聞いたら、やっぱり、
あぁ、そんなん作る人おんねんな、って思う。

あれは、とらえかたがいろいろありますが、
人間の心理がものすごく出てる話ですよね。
糸井 あんな気分っていうのは、
みんながわかるんですよね。
人は、みんな病気なんだという。
鶴瓶 そうそう。
  (つづきます)


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2005-01-04-TUE

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