糸井 |
夫婦って、不思議ですね。
ふだんはそんなに
深いつきあいはないじゃないですか。
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鶴瓶 |
外の人とのほうが、
ようしゃべったりするわね。
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糸井 |
だけど、気配ですよね。
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鶴瓶 |
気配でしょうなぁ……
ぼくは三十年、
一緒に住みだして三三年ですけど、
まあ、その、年功とかは、関係ないんですよ。
五年でも、こんなに合う人間は
おらへんということはあるでしょうね。
ぼくらは恋愛結婚ですけど、
あの、お見あいというのもおもしろいな思たり。
見あいっていうのは、
その人と会うところからでしょう?
そこから、恋愛が、
ずーっとはじまるわけですよ。
長い恋愛のはじまりですよね。
だから、これからの時代は、
見あいというのもね、いいんかなぁと思う。
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糸井 |
おたがいを教えあっていく、
みたいなことがいいですよね。
うちの事務所にも、出会って
二週間で結婚を決めたやつがいて、
でも結婚してから
「毎日好きになる」
みたいなことを言っていて……。
イヤなセリフなんです、人が聞いたら。
でも、わかりますよね、意味は。
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鶴瓶 |
わかります。
その前のことを知らないですから、
結婚と恋愛を、
一緒にしてるようなもんですからね。
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糸井 |
今もそいつは、なんかゴキゲンですよ。
子どもができた、とかいって。
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鶴瓶 |
だから、まぁ、人間って不思議ですわな。
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糸井 |
他人がいるよろこびもあるし、
鶴瓶さん、ひとりぼっちも好きでしょう?
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鶴瓶 |
ひとりぼっちも、好きですよ。
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糸井 |
他人がいるってことが、
炭火にちょっと手をかざすみたいに
うれしいって気分?
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鶴瓶 |
うん、うん。
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糸井 |
落語って、そんな話ですよね。
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鶴瓶 |
うん、まあ、そうでしょうな。
落語っちゅうのは、いやな人間が出てこないから。
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糸井 |
たまにイヤな侍が乱暴したときには、
あっという間に首が飛んだりするし。
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鶴瓶 |
そうそう(笑)。
もうほとんど、ハッピーエンドですよね。
ああ、よかった……とホッコリするゆう。
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糸井 |
こんな世界が作りたいんです、
というメッセージが入っているんです。
政治家が、落語を一席やって、
「こういうところに私は住みたい」
といってくれたら、一票入れちゃいます。
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鶴瓶 |
「粗忽長屋」なんて、
あんな不思議な話ないでしょ。
でも、それを聞いたら、やっぱり、
あぁ、そんなん作る人おんねんな、って思う。
あれは、とらえかたがいろいろありますが、
人間の心理がものすごく出てる話ですよね。
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糸井 |
あんな気分っていうのは、
みんながわかるんですよね。
人は、みんな病気なんだという。
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鶴瓶 |
そうそう。
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(つづきます)
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