梅 | ‥‥どうでもいい話しちゃった、また。 得意の。 |
── | いや、そんなことないです。 本日のお話を、簡単にまとめてみると‥‥。 |
梅 | ほんと、ごめんなさいね。 忙しいとこ、せっかく来てくれたのに。 さあ、チョコパイをどうぞ。 |
── | 韓流ドラマのおかげで ちょっと「オトナ」になった梅佳代さんが 故郷の能登の「いい写真」でつくったのが 最新作の『のと』でありますと。 |
梅 | はい。 なんかわたしも、この作品については ちょっとまだ はっきりとした気持ち不明みたいな。 |
── | でも「能登が好きなんだな」ということは やっぱり、伝わってくると思いました。 |
梅 | ほんと? なんか、いいとこっぽい? |
── | はい、いいとこっぽいです。 あらためて聞きますが、 能登のいいところって、どこですか? |
梅 | 海があって、山があって、地味なところね。 地味なところが、いいところ。 人もあんまりおらんし、 芸能人のお忍び旅行にもピッタリ、だから。 |
梅佳代『のと』より。
── | そんな意外な「いいところ」が(笑)。 |
梅 | 羽田から1時間で行けるんだよ、能登空港。 |
── | 手軽に行けて、人目につかない。 |
梅 | そう。能登には、輪島しかおらんしね。 |
── | 輪島というのは、相撲の輪島? |
梅 | そう、石川県出身やから。 でも、正月の空港でしか見たことないから、 もしかしたら、帰省中だったのかも。 |
── | 正月には見るんですね、輪島さんを。 |
梅 | 見た。輪島がおった。 |
── | 撮った? |
梅 | 撮った。 妹をそのへんに置いて、 妹を撮るふりして、輪島を撮っちゃった。 |
── | 素人のフリした玄人のやり口ですね(笑)。 |
梅佳代『のと』より。
梅 | あと、能登の人たちは、めったに暴れん。 |
── | 気性もおだやかであると。 |
梅 | でも、そういう人たちが 1年にいちど、メッチャ暴れまわる日があって、 それが「あばれ祭り」なん。 |
── | へえー‥‥。 |
梅 | 最後は、お神輿に火をつけたり 海とか川に、たたき落としたりすんの。 もう、あの、おとなしい人たちが‥‥って まさかすぎる展開だから、 あれはいっぺん、見に行くといいよ。 |
── | 「あばれ祭り」ですね、わかりました。 梅佳代さんご自身も けっこう能登に帰省されるんですよね。 |
梅 | うん、よく帰る。 |
── | 帰りたくなる? |
梅 | うん、なんかスグに帰りたくなる。 |
梅佳代『のと』より。
── | その言葉が、能登の「いいところ」を いちばん表現していると思いました。 |
梅 | そう? |
── | で、新しい写真集には、 そういうきもちが出ているなあって。 「なんか、帰りたくなる」っていう、 梅佳代さんの、きもちが。 |
梅 | ほんと? それは、見てくれた人がそう思うんなら きっとそうなんだろうね。うれしいです。 |
── | ‥‥あ、6月まで新宿でやっていた展覧会では このおばさまがたの写真が、 すっごい大きく引き伸ばされてましたね。 |
梅佳代『ウメップ』より。
梅 | いいでしょ? わたしも将来、こうなりたい。 そのとき、たぶん、なんにも怖くないと思う。 オトナになりすぎてて。 |
── | ボスキャラで言えば「最終形態」的な。 |
梅 | ここまでいったら「韓流ドラマ」といっても 歴史物しか観ないレベル。 |
── | オトナをつきつめると 最後は「歴史物」に行きつくわけですか。 |
梅 | そうそう、そこ、そこ。 今はまだ、歴史物にハマるのって どういうきもちなのかなーって思うけど。 だって「好き」とか「あの人が男前」とか そういう世界じゃないでしょ? |
── | 「ロマン」とか「天下統一」とかですよね。 |
梅 | それも、50話以上あるし。 |
── | 長いと(笑)。 でも「長い」といえば‥‥って なかばむりやり「まとめ」にかかりますけど、 梅佳代さんも けっこう長いこと、写真家をやってますよね。 |
梅 | やってます。 |
── | あの「みうらじゅんさんのビルの写真」から 数えても、もう10年以上ですよね。 |
梅 | わたし自身は、18歳からと思っとるから。 |
── | じゃあ、もう14年くらい。 |
梅 | そうやねぇ、韓流にもハマるはずやわ。 |
── | すこし真面目な話をしますけど、 10年以上やってきて ご自身の「写真家」という「仕事」にたいして 考えたりすることとか、ありますか? |
梅 | ない。 |
── | 自分が選んだ仕事って こういうことなんじゃないかなあ‥‥とかって 考えるようになったりとかは。 |
梅 | ないです。 |
── | ないんですか。 |
梅 | そこは、あんまり考えないでいいと思う。 |
── | 考えないようにしてる? |
梅 | うーん、深く考えてみたところで そこまで考えるほどのことをしてないし。 |
── | そう思われますか。 |
梅 | 深く考えても考えなくても、結果は結果。 |
── | つまり、写真は変わらないってこと? |
梅 | うん。わたしのまわりのすべての出来事が、 わたしの考えがどうだとしても たぶん、なんにも変わらないと思うからね。 |
── | なるほど。 自分の考えがどうであろうと 「まわりに起きてることは、変わらないよ」と。 |
梅 | そう思う。 |
── | 写真って、毎日、撮ってるんですか? |
梅 | 毎日じゃないです。 |
── | カメラは毎日、持ってるんですよね? |
梅 | 持っとる。昔から、ずっとこれ。Eos5。 |
── | 持ってるけど、撮らない日もある? |
梅 | 持っとっても、撮らない日はある。 それも、昔からいっしょです。 |
── | おもしろいものに出会ったら、撮るだけで。 |
梅 | そう。そこはたぶん、 もっとオトナになっても変わらないと思う。 |
── | 歴史物、観るようになっても? |
梅 | いや、そこまでいったら、わからんけど(笑)。 |
── | 能登には次、いつ帰るんですか? |
梅 | たぶん、そろそろ帰るよ。 |
梅佳代『のと』より。
<終わります> |
2013-07-17-WED |