その9
あのすごい肌着を、ふたたび。

ma.to.wa.の恵谷太香子さん。

ことしの「白いシャツをめぐる旅。」には、
昨年、はじめて紹介し、
ほんとうにあっという間に完売してしまった、
このインナーが再登場します。

たくさんのリクエストをいただいたのにもかかわらず、
なかなか再生産がかなわなかった、
「ma.to.wa.」の、シルク100%、
それも家庭で(洗濯機で!)洗える肌着です。

私たちが思うシルクのイメージ(つるつる・てかてか)
とはちがい、やわらかく、とてもやさしい肌着です。

そもそも、のお話をさせてください。

この旅の最初のテーマのひとつに
「男性は白いシャツのインナーになにを着るべきか?」
という問題がありました。

もちろん「好きなものを着ればいい」わけなんですが、
白いシャツを1枚で着るとき、いちばんかっこいいのは
やっぱり(イタリア人のように)インナーをつけないこと。

でも日本は高温多湿だということと、
肌着なしでシャツを着るのがなじめないというひとが、
自分たちもふくめて多かったことから、
「グンゼのSEEK」というブランドの肌着を紹介しました。

(その顛末はこちらをどうぞ。)

いまはSEEKは比較的入手しやすくなっているので、
今回、「ほぼ日」での販売はありませんが、
ぼく(武井)は個人的に、いまも、
大人の男性はぜひともSEEKを、と思っています。

ちょっと言いづらいんですが、最近は
「似たようなもので、とても安価なもの」
も出てきました。でもねえ、あれ、
いくつか購入してためしてみたのですけれど、
立体裁断の気持ちよさとか品質感は、
SEEKが群を抜いていると感じます。

もちろん、この価格でよくできてるなあ、
ということは思いますけれど、比べちゃうとそう感じる。

いまはポロシャツや、Tシャツの下にもSEEKを着ます。

そういうカジュアルウエアを、若いときのように
「ほんとうに1枚」でさらりと着る、
というわけにいかなくなり(なんなんだろ?)、
「さも1枚で着ている」ように見えるこの肌着は、
ほんとうにべんりなのです。

さて、女性たちは?

ことしの取材を通して、「いま」の感覚として、
女性たちは透け感を楽しむことができているみたい。

そっか、そういう時代なんだと感じる‥‥のですが、
(わりと大胆な)欧米の人たちや
テレビに出ている人たちのマネをすることはないし、
そもそも「白いシャツを主役」として着たいのに、
ちょっとだけ、テーマがずれちゃう。

自分が快適で、ほかの人の目にもきもちがいいことは、
この「白いシャツをめぐる旅。」で
ずっと、一貫して大切にしていますから、
「白いシャツをきれいに着るインナー」を
きちんと紹介したいなと考えました。

そんな意味でも「ma.to.wa.」は、ぴったりなのです。

「ma.to.wa.」をつくっているのは、
恵谷太香子(えたに・たかこ)さんという女性です。

美術大学を卒業後、ブライダルの
フォーマルドレスデザイナーを経て、
パリのオペラ座の衣装室(!!!)に
勤めたという経歴の持ち主。

そこの「師匠」から、肌着をつくれないと、
ほかの服はつくることができないよという
アドバイスをうけたことをきっかけに、
帰国後はランジェリー・アンダーウエアメーカーへ。

そこで自社ブランドを立ち上げるとともに、
フランスのライセンスブランドを担当し、
独立してからは映画や舞台の衣装をつくりながら、
さらにいろいろなブランドの立ち上げにかかわりました。

服だけではなく、生活全般にかかわる
商品の開発にたずさわりつつ
(あるいは一流ホテルの「布まわり」の
プロデュースなどを手がけたりも)、
「ma.to.wa.」をプロデュース。

さらに個人的な仕事として「ma.to.wa.」とは別に、
アトリエで、ほんとうに少数だけ手づくりしている
オートクチュールのとくべつな肌着もあるそうです。

(ビスチェと、キャミソールドレス、ローブだそう。
すみません、よくわからずに書いてます。)

それはぼくらも見た事がないんですが、
かの有名な、みんなの憧れるあのひとやあのひと
(ああ、言いたい。でも言えない)が顧客なんだとか。

恵谷さん自身は、いつも笑顔の、太陽のような女性で、
白いシャツチームはみんな彼女の大ファンです。

その恵谷さんが、オーガニック素材のメーカーである
名古屋の豊島株式会社と組み、つくったのが、
シルクの肌着ブランド「ma.to.wa.」。

マ・ト・ワ、と読みます。

前回の完売後、再入荷がかなわなかったのは、
この肌着、まだまだつくるのがむずかしく、
きちんとした製品となるまでに時間や手間を要するから。

「待ちます!」ということでお願いして、
1年ごしに再販売が実現しました。

久しぶりにお目にかかった恵谷さんは
あいかわらずニコニコ。

白いシャツの哲学、についてお話をうかがいました。

「白いシャツが主役なのですから、
白いシャツがキレイに見えるっていうことを
大切にしたいですよね。

そのためにまず『透けない』ことを考えて、
わたしは肌着をつくっています。

25年前になるんですが、
6色展開のベージュのランジェリーを
つくったことがあります。

それは、日本人のベージュは
ひとつだと思われているけれど、
じっさいはいろんな色があるわけで、
自分の肌の色に合ったベージュを選んでほしいと
思ったからなんですね。

本来は、お化粧品のファンデーションを選ぶみたいに、
自分のベージュを選びたいはずなのに。

そのなかに、白いシャツを着た時に
透けないベージュは何色だろう? という調査をしました。

400人ちかくの日本人の20代から60代ぐらいまで女の人の
肌の色を調べて、アンケートをとり、
肌の色のデータをとって、その上に白を乗せて、
白が透けないベージュっていうのはどの色だろうと。

でも、その時は売れなかった。

伝え方、仕掛け方が弱かったと反省したんですが、
あれから時を経て思ったのは、
今年は特に白いシャツがすごく、
どこのブランドさんも出してらっしゃるでしょう?

おそらく2019年の秋冬までは、
この感じは続くと思います。

そんななか、今回「ma.to.wa.」で
提案させていただいてるものは、
いくつかあるベージュのなかでも、いちばん透けない、
ちょっと濃いめのモカベージュという色です」

これを見ると「濃いんじゃないかな?」と思いますよね。

印象としては。ところがこれ、着用すると、
多くのひとの肌の色と、
はっきりした白いシャツのあいだで、
「透けない色」なのだということがわかります。

濃い色を着たほうが、白いシャツを上に着たとき、
ちょっと影になって、より透けない印象になるのだそう。

そしてより白が際立つ!

「白いシャツの下でいちばん目立つのは、
逆に白い肌着なんですよ。

だから逆に、ヨーロッパの女性たちは
白いシャツの下に白い肌着をつけて、
ピュアに新鮮に見せるようにすることも。

彼女たちにとって、肌着は見せる(魅せる)もの。

でも日本は隠す文化ですから、
そもそもの哲学が違うんですよね」

逆に「あえて透け感をたのしむ」という提案で、
もう1色、ネイビーの肌着も扱います。

「今回お出ししたネイビーは、
日本人に一番似合う“ジャパンネイビー”です。

ちょっと茄子紺や、パープルっぽさのある明るめの紺です。

東京オリンピックのマークもそうなんですけど、
日本古来の藍のいちばん濃い色に近いネイビーです。

聡明さを感じさせる色ですよね。

そして、白とネイビーの組み合わせというのは、
とても美しい。だから『あえて』の提案です」

恵谷さんが大事にしていることは、色だけではありません。

もちろん、素材とパターンも、です。

「肌着は、肌に着ると書くように、
いわばセカンドスキンなんです。

そうしたら、健康な蚕がつくる繭から、
いい絹をいただいてつくっています。

そして、一見、なんでもないタンクトップですが、
肌に肌をあてるかのように、
パターンを立体でつくっています。

ニットは伸びますから、むりに立体につくらなくても
からだにフィットするでしょう? という考えも
もちろんあるんですけれど、
できるだけ、微妙な締めつけやゆるみが
ないようにと考えています。

タンクトップというのは、
胸から肩のラインがとても重要で、
デコルテをきれいに見せるのが大事ですから、
天巾と前下がりのバランスを考えて、
シャツの第2ボタンくらいまで外して
チラッと見えてもメンズっぽくならず、
繊細な印象になるようにしました。

肌着の肩ひもがちょうど隠れるような太さで、
そして腕を前に出したときに動きやすくなるよう、
肩下がりも体のラインに添った傾斜をつけました。

そして脇縫いがありませんから、ストレスフリーですよ」

さて、ここまで読んだ男性のかたはいるかな?

じつはとても仕入れる枚数が少ないのですが、
今回の「ma.to.wa.」には
メンズのVネックインナーもあります

メンズの肌着はさらに立体になっているそうです。

ん? 女性のほうが凹凸があって
立体的な気がしますが‥‥。

「立体のカッティングはメンズのほうが複雑ですよ。

メンズは半袖でVネック。身にまとう部分が多いので、
布の分量もかなり多いですし」

ほんとうは「ma.to.wa.」のラインナップには、
さらにいろんな肌着があります。

なにしろ、着心地がいいので、おすすめしたい気持ちは
やまやまなのですが、ここでは「白いシャツ」との
相性のよいものだけに絞りました。

いずれ、ほかのアイテムも紹介する、
白いシャツのスピンオフな企画を考えられたらいいなあ、
と、武井は思っております。

世の中で買えるところが、ほとんどないし‥‥。

(ぱんつも、いいんですよ~。あ、女性の証言によると、
ブラジャーもそうとういいらしいです。)

さて次回6/20は、「旅」と「シャツ」の話を、
HITOYOSHIシャツの吉國武社長にお聞きしましたので、
そんなコンテンツをおとどけします。

同時に「ストア」も情報が出ますので、
おたのしみにー!

2017-06-19-MON

<いままでの更新>

▶︎その1 ことしの旅がはじまります。

(2017-06-09-FRI)

▶︎その2 いまほしいのはこんなシャツなんです、HITOYOSHIさん。

(2017-06-12-MON)

▶︎その3 シャツ工場のひみつ[1]

(2017-06-13-TUE)

▶︎その4 シャツ工場のひみつ[2]

(2017-06-14-WED)

▶︎その5 イタリア・アルビニ社のリネンをつかおう。

(2017-06-15-THU)

▶︎その6 Ataraxiaという、あたらしいブランドと成田加世子さんのこと。

(2017-06-16-FRI)

▶︎その7 吉川修一さんのSTAMP AND DIARYは、ことし。

(2017-06-17-SAT)

▶︎その8 シャツにあわせるカーディガンのこと。

(2017-06-18-SUN)

▶︎その9 あのすごい肌着を、ふたたび。ma.to.wa.の恵谷太香子さん。

(2017-06-19-MON)

▶︎その10 旅とシャツ。HITOYOSHIシャツ吉國武さん。

(2017-06-20-TUE)