『株式会社 家族』という、一冊の本があります。
(タイトルからして、ちょっと変かも?)
たまたまこの本を手にした「ほぼ日」乗組員は、
「ここに載っているたのしい家族の話は
実話のように感じるけど、
どこまでどんなふうにほんとうなのかな?」
と思いました。
そこで、著者とその妹(絵担当)を任意同行、
「ほぼ日」の和室で
事情聴取を行うことにしたのです。
ほぼ日 | 家族としていっしょにいたら、 その人のおもしろさには、 なかなか気づかないと思うんですが。 |
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うちは、かあさんが、けっこう おとうさんのおもしろいとこを 教えてくれましたからね。 |
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うん。 やっぱりもともとかあさんが わたしたち娘側にいて、 いっぱい発見するから。 |
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うん。とにかく、かあさんがぜんぶ拾う。 わたしたちは幼いころ、 それを何気なく聞いてたけど、 大人になったら、 かあさんが笑ってるツボがわかってきて、 いまは、受け継いでる感じです。 |
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ほぼ日 | 教育されて。 | |||
うん(笑)。 | ||||
かあさんが喜んでることって、 おもしろいもんなぁ。 |
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うん。 | ||||
ほぼ日 | おかあさんが おとうさんのおもしろいところを どんなふうにおっしゃっていたか、 最初の記憶って、ありますか。 |
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ちっちゃいときのことで憶えてるのは‥‥、 とうさんが現場で作業して 服が濡れたから 何人かで焚き火して 作業着を干したらしいんです。 そしたら、とうさんの服だけ燃えて ポケットだけしか残ってへんのよ、 と言って、かあさんが笑ってた。 |
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はははは。 ポケットだけ? |
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ポケットだけ残ってたんやって。 | ||||
ほぼ日 | 想像するとすごいですね。 | |||
何かあったらまた、 とうさんポケットだけ残るんちゃうやろか、 とか言って笑ってました。 そんときは、ちいさかったから、 かあさんの言うことを スーっと聞いてたけど いまはおもしろいと思ってる。 |
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ほぼ日 | おかあさんの存在は大きいですね。 | |||
かあさんおもしろいです。 | ||||
ほぼ日 | いま、かおりさんは ブログもやってらっしゃいますから、 おとうさんはもう、パソコン使って 読んでますよね。 |
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事務所にパソコンあるらしいけど、 使えるわけないと思います。 家にもあるけど、 使ってんの、見たことないもんなぁ。 |
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ない。 でも、うちらが実家でやってたら 横にやってきて見ます。 |
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うんうん、見てくる。 | ||||
何か、すごくやりたそうだったから、 パソコンで、ねえちゃんの日記の 見方を教えてあげたんですよ。 そしたら、すごく コメントしたがったんです。 「コメントを、ほな、しよか」 とか言って。 |
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ほぼ日 | かわいいですね。 | |||
「こうやって、 打つやろ、こやろ」 とか言いながら教えました。 |
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「これは『わ』やな。 『わ』なわけやな?」 とか言いながらね? |
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めっちゃめんどくさくて 30分ぐらいかかりました。 |
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そのコメントの投稿者の名前 「プロゴルファー」ってなってました。 |
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全 員 | (大爆笑) | |||
「あ、あいつや!」 と思って。 |
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ほぼ日 | バレバレですね。 | |||
とうさんは コメント入れた瞬間に、 ねえちゃんに電話して。 |
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ほぼ日 | コメントの意味がないじゃないですか。 | |||
「コメント見てみたらどうや」 って言ってました。 |
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ははははは。 | ||||
ほぼ日 | 最後の最後に、 肝心なことを訊いていいですか。 |
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はい。 | ||||
どうぞ。 | ||||
ほぼ日 | おとうさんの いちばん尊敬するところを ひとつ挙げるとしたら? |
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純粋なところです。 純粋という言葉が 合ってるかどうかわからんけど。 |
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それから、ポジティブですねぇ。 | ||||
そうやな。 ポジティブやなぁ。 |
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ほぼ日 | へぇえ。 | |||
毎年、年明け、 1月1日になったら、いつも 「さぁ、今年もええことありそうやなぁ!」 とか言ってるけど、 絶対ないもんな。 |
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全 員 | (笑) | |||
めっちゃポジティブやな。 | ||||
ほぼ日 | その言葉は、おとうさん、 心から言ってるんですね。 |
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うん、本気で。 輝いてるもん、年初め。 |
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ほぼ日 | すごいなぁ。 ‥‥いや、ぜったいそれ、 いいと思います。 だって、そう言われたとき、 近くにいる家族って うれしいですもん。 |
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うん、そう思う。 「今年どうする?」 って言われるより ぜんぜんうれしい。 |
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ほぼ日 | 「今年もやるぞ」「がんばろう」 とかともちがう。 自分のことじゃないですもんね。 「ええことありそうやなぁ」には 何の責任もないですからね。 |
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まわりは「ほんまやな」って 言うしかないですもん(笑)。 |
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とうさんには、 「ええことありそうやなぁ」 という気が。 |
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気が、毎年してるところがすごい(笑)。 そのわりに、いつも たのしくやってるよなぁ。 |
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うん。 | ||||
ほぼ日 | 来年の年初めには、 真似したいです。 |
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全 員 | (笑) | |||
ほぼ日 | いやぁ、たくさんのお話、 ほんとうに、ありがとうございました。 |
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いえいえ。 | ||||
ほぼ日 | 『株式会社 家族』の山田家、 ほぼ真実でそれ以上である、ということが 判明いたしました。 これにて取調べを終了します。 みなさま、ご愛読ありがとうございました。 もしよろしければ、ご感想を postman@1101.comまで お送りいただけるとうれしいです。 いただきましたメッセージは 山田一家にお送りします。 それでは、最後ですので、 本日の取り調べの成果、 かつ丼、大盛りでふたつ分としましょう。 |
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ありがとうございました。 いただきます。 |
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(おしまい) | ||||
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2010-06-16-WED |
山田かおり 著 |
父、母、自分、妹、そして周辺の人々。 それぞれのキャラクターが あまりにも濃いと感じられるのは、 何も、尼崎の空気のせいだけではないだろう。 空想ゴルフと不衛生な定食屋さん巡りが好きな父、 近所の少年たち相手に 「ほんで誰がおばはんやの」とすごむ母、 ふすまの向こうの暗闇で ひとり百人一首をくりひろげる蝉丸好きな妹。 読み進むうちに、 山田家とその周辺にぽつぽつ現れる おかしくて不思議な人々こそが、 ほんまは世界の中心におるんちゃうかな、 という気持ちにつつまれていく。 今回の「ほぼ日」のインタビューは、 発行元のリトルモアさんにお願いして 実現しました。 著者の山田かおりさんは 「みんなの家族も、ほんまはものすごく おもしろいんとちゃうかなぁ」 とおっしゃいます。 ぜひ、この本を、 本屋さんで手に取ってくださいね。 ちなみに、装丁は グラフィックデザイン界の鬼才、 祖父江慎さんです。 |
2010年6月10日〜27日、 |