矢沢 |
なんかさ、今日ってさ、オレたち、
酒飲みながら、話してる感じしない?
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糸井 |
けっきょく、そうなっちゃうよね。
オレは飲めないけどさ。
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矢沢 |
でも、まぁ、今日は久しぶりで、
いい感じですよ。
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糸井 |
ああ、そうそう、
いまの永ちゃんの動きっていうのは、
レコード会社をつくったっていう形になるの?
レーベルをつくったっていうんですか。
どういう言い方をすればいいのかな。
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矢沢 |
なんだろうね、
レコード会社をつくったって言ったら
まぁ、かっこいいんだけど、
カンタンに言えば、大きなインディーズとして
活動するっていうことかな。
オレ、いままでメーカーにいた人だからね。
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糸井 |
そうだよね。
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矢沢 |
大手の、EMIっていう会社にいたんだけど、
ま、こういう時代だし。
つまり、ダウンロードは自由だ、
インターネットはこんなに発達した。
もう、流通を持ってる大きなメーカーじゃなきゃ
全国に配布できないという
時代じゃなくなったよね。
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糸井 |
そうだね。
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矢沢 |
っていう時代がきたときに、
「さてどうするか」と。
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糸井 |
うん。
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矢沢 |
まぁ、でも、
ダウンロードの時代になったとはいえ、
メーカーとしての歴史や組織力っていうのは、
やっぱり歴然としてあるわけでね。
だから、時代がどうであれ、
メーカーとともにこれからも動くことが、
メジャーであると思ってるアーティストもいるし、
それはそれで、まったく間違ってない。
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糸井 |
うん、うん。
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矢沢 |
インディーズにはインディーズの、
大手には大手のいいところがある。
だから、矢沢としては、
ふたつのいいところが合体したような、
なんかおもしろいインディーズ、
やっちゃおうかな、みたいな。
まぁ、わかりやすく言うと、
「日本一のインディーズつくっちゃおうか」
みたいな感じ。
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糸井 |
ああー、なるほどね。
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矢沢 |
「不安はないんですか?」とか、
「リスクとか考えません?」とか、
いろんな人から訊かれるよ、そりゃね。
いや、もちろん、あるんだろうけど、
まぁ、35年も36年もやってる矢沢だからね。
まぁ、ひょっとしたら流通が変わることで
枚数が下がるのかもしれないけど、
それよりも、なんか、自分らでやることで
自分たちがひとつになることのほうが
ドキドキするんじゃないの? っていうね。
いまはそれがやれる世の中になってきたよね。
ならば「オレ、やっちゃおうかな」と。
形としてはインディーズなのかもしれないけど、
ドームも武道館5デイズもやっちゃうしね。
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糸井 |
つまり、自分たちでやることが
どんどんどんどん増えてきて、
レコード会社もいらなくなった
っていうことですかね。
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矢沢 |
うん。だけど、それ、
誤解があっちゃいけないから繰り返すけどね、
レコード会社はレコード会社で、
歴史や実績が歴然とあると思うよ。
そこに所属してやるほうが堅実だとも思うし。
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糸井 |
永ちゃん自身は、
両方の所属を持つことになるの?
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矢沢 |
いや、もう、EMIの所属はないよ。
20年お世話になったけど、もう、ぜんぶやめたの。
「あ、もうオレは、所属というものはやめよう」
と決めたの。
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糸井 |
思えば、こうして赤坂に
自分のスタジオも持ってるわけだしね。
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矢沢 |
だから、気づいたら、
自分たちでできるようになってたんだよ。
これ、逆にね、レコード会社つくるために
スタジオつくって、レーベル立ち上げて、
っていうことじゃないんだよ。
自分たちだけでぜんぶやるために
ぜんぶ計画してたのかっていうと、
そんな計画、あるわけないよ。
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糸井 |
いつの間にか、準備ができてたんだね。
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矢沢 |
一個一個、できてたんだよ。
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糸井 |
そのために計画をたててたとしたら、
逆にできなかったかもしれないね。
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矢沢 |
うん、そう思う。
それは、さっきの矢面の話と似ててさ。
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糸井 |
願ってそうしたわけじゃなく、
押し出されてやったことのひとつ。
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矢沢 |
そうなのよ。
また、押し出されて、こうしてる。
時代に押し出されたのかもしれないし、
自分に押し出されたのかもしれない。
いずれにせよ、押されてここにいるとしたら、
それをどうこう考えるよりは、
おもしろくしちゃおうかなってことのほうが先。
どうにかなるんだろう、みたいな感じ。
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糸井 |
ああー。
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矢沢 |
糸井が知ってるように、昔から、矢沢って、
「やったろう。どうにかなるんだろう」
ってとこ、あるじゃない?
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糸井 |
うん(笑)。
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矢沢 |
いままで歩いてきた道が安心だったかっていうと、
ぜんぜんそうじゃないじゃん、オレ。
「やっちゃおう」ってところあるじゃない。
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糸井 |
そうだね。
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(つづきます) |