横尾 |
ぼくのY字路に関しての
評論を書いた人がいて、その人は、
「Y字にぶつかると、
どっちに行くべきか迷う」
って言ってるんですよ。 |
タモリ |
あ、それはそんなことないですよ。 |
横尾 |
そんなことないですよね?
そんなバカな、と思って。 |
タモリ |
途中までは一緒で
こっちは祐天寺で、
こっちは目黒方面だもん。
Y字路にまで来てから
わざわざ決める人はいないんだから。 |
糸井 |
(笑)どっちつかずのまま、
歩いてくわけにもいかないし。 |
タモリ |
(笑)それはもう、徘徊ですよね。 |
横尾 |
うん。
たまたま
道に迷ってしまったっていう場合は
そうなるけど、だって、
人は最初から目的があって
歩いてるわけだからね。
そういう評論を読むと、これはもう、
書いてもらいたくないとは思いますよね。 |
糸井 |
横尾さんの、
この「身も蓋もなさ」は、新しいなぁ……。
ただ、
「何か言わないといけない」っていうのは、
ある時代までの風習ですね。
若い子は言わないでも平気だったりするから。 |
タモリ |
うん。 |
糸井 |
「いい」「かわいい」とかしか、
言わないじゃないですか。
もしかしたら、
そっちのほうが合ってるのかも。 |
タモリ |
何か言わないといけないのはつらい。
なんで、言わなきゃいけないのかなぁ……。 |
糸井 |
昔、唐十郎さんの状況劇場で、
終わると宴会をやっていたじゃないですか。
ぼくはその最後の時期に
ちょっと見たことあるんですけど、
みんなが深刻にお酒を飲んでいて、
豪放磊落なんだけど、黙ってるんですよ。
なぜかというと、唐さんが
「どうだった?」
って、うれしそうに聞くから、
みんなが感想を言わなきゃならないから。
みんなは、感想を言わされないように
「目が合わなきゃいいなぁ」
みたいに生きてるんですけど、
クマちゃん(篠原勝之さん)が
発明したセリフが、ちょっと黙った後に
「今どき、なぁ‥‥」というやつで(笑)。
どんな芝居でも、それを言うと、
なんだかしらないけど、
なんか言ったように聞こえる。
そういうことで逃げられる場合はいいけど、
ヘタしたら、
おちおち芝居を見てられないんですよ。
感想を言わなきゃなんないから、
それを考えながら見なきゃいけなくなる。 |
横尾 |
「どうだった?」っていうのは、
芸者が
「私のどの部分が魅力的なの?」
って聞くのと同じことで
相手はほめてもらいたいに決まってる。
どこでもいいから
ひとつほめときゃいいんじゃない。 |
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(つづきます) |