Y字路談義。
横尾忠則・タモリ・糸井重里が語る芸術?

17
大した思いはないんです

 横尾忠則さんの「Y字路」の絵はこちらからご覧ください。
  (更新毎に、追加していきます)

横尾 ぼくの生理と感情とは
まったく分離されています。

宝塚に行って二回目ぐらいのとき、
ある人がそれで宝塚をやめる、
という楽日だったんです。
ぼくはまだ宝塚のことを
ぜんぜん知らなかったし、
トップがやめるかどうかなんて、
もともと
「やめようと思うならやめればいいじゃない」
ぐらいに思っていたんだけど。

ただ、やめるというその人が、
袴を着て花を持って、挨拶をすると、
劇場中が、もう嗚咽なんです。
タモリ ええ。
横尾 そうするともう、
ぼくは別にかなしくも何ともないのに、
涙がボロボロ流れてきて。
タモリ (笑)
糸井 (笑)伝染したんだ。
赤ん坊って、よく
もらい泣きをしているじゃないですか。
あれとおんなじですね。

あるいは、隣の犬が吠えているから
こっちも吠える、みたいな……犬は、
あれでも別に怒っていないですからね。
横尾 別に、泣いたとしても、
それで情を感じてるわけでもないの。

前にも、なんだったかな、
「ぴあ」で素人の人が映画を作って、
それの審査やったとき、
受賞式で表彰状を渡さないと
いけなかったんですよ。
ぼくが読まなきゃいけない。

で、読んでるあいだじゅう、
涙がポロポロ流れてさ、
最後まで読めないわけ……。
タモリ (笑)あはははは!
糸井 (笑)横尾さん、すごい。
横尾 だけど、ぼく自身は、
うれしくもかなしくもないわけで。
だけど涙が止まらなくて、最後まで読めなかった。
タモリ (笑)それ、すごい!
横尾さん、すごい……。
糸井 (笑)ぼくは今まで、
賞状を読む側の人が泣いてるのは、
見たことがない!
タモリ 見たことねぇ!
糸井 受け取るほうが泣くことはあるけどね。
タモリ 横尾さんのような、クールに
「感情はどうだっていい」
って人が泣くのがすごい。
横尾 そう矛盾しているでしょう?

大賞を受賞したのは夫婦だったんです。
彼らの感情がうつったんです。
タモリ 先に向こうが泣いたんですか?
横尾 いや、向こうはニコニコしてる。
タモリ (笑)うつってない。
横尾 夫婦で合作で作ったものが受賞して、
もう大よろこびなんですよ。
その大よろこびの姿を見たとたんに、
涙が流れてきてさ……
もう声が詰まってしまって、最後まで読めない。
糸井 つまり、それは、
「よかったね」っていう思いぐらいは、
あったんじゃないですか?
横尾 いや、大した思いはないんですよ!
そりゃ誰もが「よかったね」と思う程度ですね。
糸井 (笑)
  (つづきます)

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2004-07-29-THU


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