オガー |
みなさんほぼにちわ!
今日の「読めない土曜の女たち。」は
先週にひきつづき、
1周年記念スペシャル!
三省堂『大辞林』編集部、
体当たり取材をおとどけいたしますよー。
|
アロハ |
今回も楽しみですー。
|
ゆーないと |
みうらじゅん兄貴の話が出てくるって、
なんなんすか!
|
りか |
それは読んでのお楽しみ〜。
では、どうぞ!
|
ヨメナ語1周年記念!
三省堂『大辞林』取材の巻 -後編-
|
オガー |
これだけ大きい本だと、
編集担当の方も大人数で、
各分野でわかれているのですか?
|
三省堂・
本間さん |
『大辞林』の編集は少人数です。
ひとりあたり複数の分野を
担当することになります。
自分の好きなものや興味のあるものだと
うっかり言ってしまった途端に
「担当」になってしまいます(笑)。
三省堂出版局国語辞書出版部
本間研一郎さん。『大辞林』の
現編集長でいらしゃいます。 |
オガー |
うわあ、
興味や得意分野が広ければ広いほど‥‥、
|
本間さん |
かなり、きびしい状況に‥‥(笑)。
釣りが趣味だというひとは、
魚の担当まで広がって、
高じて『魚名辞典』というのを
つくっちゃいましたよ。
|
りか |
すごいですね。
『大辞林』は何名くらいでチームを
編成されているんですか?
|
本間さん |
平素は4〜5人ですね。
出版の直前になると、
倍以上にはなりますけど。
|
オガー |
えっ?
直前でもそのくらいなのですか?
|
三省堂・
佐藤さん |
編集部員がその人数です。
その他に、編集協力者や校正する人が
十何人います。
三省堂出版局国語辞書出版部
佐藤竹哉さん。『大辞林』では
自然科学系をはじめ多岐にわたって
ご担当されています。 |
本間さん |
今は、もう省力化されていて
パソコンを使ったりしていますので
以前より人数が減っても
対応できるようになったんです。
|
りか |
ウエブやパソコンが発達したことにより
おたがいに良い面があるということですね。
|
本間さん |
ええ。
冊子には冊子の良い面がありますし、
たとえば電気がいらないとか(笑)ね。
横目がきいて他の言葉に興味を持つというのも
冊子版ならではでしょう。
|
三省堂・
萩原さん |
ですが、印刷物にたいする信頼感というのは
やはり大きいものです。
三省堂出版局辞書出版部部長
萩原好夫さん。『大辞林』の
前編集長でいらしゃいます。 |
りか |
はい。
修正のできない完成品を作るという、
その苦労や思いに、
信頼感の元があるとわたしは思います。
ところで、これだけ大きい辞書になると、
製本もすごくたいへんですよね。
丈夫に作らないといけない。
|
高野さん |
それはもう「辞書」ですから、
できていて当たり前ですねー。
|
三省堂出版局デジタル情報出版部部長 高野郁子さん(右)。
三省堂出版局デジタル情報出版部課長 神藤利章さん(左)。
『スーパー大辞林』を含む、
三省堂
Web Dictionaryの運営を担当されています。
|
オガー |
(恐縮)そうですよね、失礼しました!
|
佐藤さん |
ただ、この厚みが限界だとは言われています。
8センチだったかな。
それ以上だと製本機を通らないらしいですよ。
|
萩原さん |
日本の製本技術は相当高いですよ。
『大辞林』は、うちの兄弟会社
「三省堂印刷」が
責任をもってやってくれています。
長い間の技術が蓄積されていますから、
こういった厚みのものでもできるわけです。
|
オガー |
はぁ〜。この紙も、特別ですか?
|
本間さん |
紙は特注です。『大辞林』用です。
うすくて、裏うつりしません。
印刷のインクのノリもいいでしょう。
|
萩原さん |
たくさんの情報量を盛り込むためには
紙を薄くしなくてはダメですから。
最大のねらいは、うすい紙で、丈夫であるか。
わたしどもは辞書を長くやっていますから
紙についても紙屋さんとの間で
開発の歴史があるんです。
|
りか |
三省堂さんがうみだした紙というのも
あるんでしょうね。
|
佐藤さん |
ありますよ。特注ですので。
『大辞林』巻末の謝辞にも書いてありますよ。
紙屋さんから印刷会社まで。
これがかかわっている全てのかたがたです。
|
オガー |
うわあ、すごい人数、会社が載ってますね。
ここまで見てほしいですね!
自然科学関係、アクセント、図版‥‥。
あ、そういえばイラスト、多いですよね。
|
佐藤さん |
ええ、極端な言いかたをすれば、
ものの名前については
全てイラストを入れても
いいくらいなんですよね。
入れたほうがわかりやすいですから。
|
本間さん |
基本的には辞書は
言葉を言葉で説明するものですから
全てイラストでは職務放棄同然です。
文字で説明するのが前提です。
|
りか |
‥‥(パラパラと見ながら)
どうやら犬のイラストが多いような?
|
佐藤さん |
犬は多いですね。
種類も増えたというのもありますし、
やはりこれだけペットを飼っているひとが
多くなりましたから、喜ばれるんですよね。
ペットブームでしたから。
それと、古い道具は
あえてイラストを入れています。
実物を見たことがないひとが増えていますから
物語を読んでいて、なんだろうと思ったひとに
役立てばと思いますね。
|
高野さん |
最近は「縁側」ということばが
わからないひともいますからね‥‥。
言葉は聞いたことがあるけど、
見たことがない、ということが多そうなものには
イラストを入れてありますね。
『大辞林』は、イラストの数が多いですね。
|
本間さん |
最近つくづく思っていることがあって、
わたしのこどものころと、
暖房器具がまったく違うんですよ。
「やぐらごたつ」「ひばち」「あんか」は全滅で
「エアコン」「ストーブ」
「ファンヒーター」ですもんね。
お風呂も薪で火をつけてましたしねえ。
かえってこういうものの記述をきちんとやることが
辞書において大事なことだと思っています。
|
りか |
なるほど! 小説を読んでいたり、
おじいちゃんおばあちゃんから話を聞いたりしても
ことばの意味がわからなければ
イメージしきれませんものね。
今は使わないから辞書には載せない、という理屈は
通らないということですね。
|
本間さん |
そうです、そこなんです!
それから大昔よりも、案外ね、
ことばとして「ちょっと古い」ものというのは
いちばん「ふるさ」を感じてしまうものなんです。
だいたい20〜30年前くらい前の言葉は
とても古く感じる。
|
オガー |
あー、80年代とか。
それを留めるのも辞書の役割なのですね。
ほんとうに辞書づくりは一筋縄ではいかない!
|
本間さん |
はい。明治・大正期に当たり前だった
風俗や事物がどんどんわからなくなっています。
専門書に頼らずに、ごく身近にあるもので
調べるとしたら、国語辞典しかないのです。
古いからと言って項目を削る、ということは
そう簡単にはできません。
しかし、あたらしいものを入れて
新陳代謝をさせる必要もある。
先ほど申し上げた「厚さ8センチ」という紙面は
決まっています。
上手に新陳代謝をしなくてはなりません。
|
りか |
新語にはどんなものが加えられていますか?
|
本間さん |
先に説明した『スーパー大辞林』は、
どんどん語を追加しています。
いわゆる若者言葉的なものを
単独で掲載する場合があります。
たとえば「へこむ」とか「キレる」という言葉は
既存の国語項目があるけれど、
それとは別に、いわゆる「若者言葉」という
書き出しでするような場合、
「きれる」が二つ出てきますよ。
|
佐藤さん |
それから、外国語として入ってきて、
日本語として“こなれてない”ような
言葉もけっこう載せてますよね。
まあ、載せすぎかな、
という意見もありつつ(笑)。
むかしは、ある言葉が出てきて、
それが落ち着くまで待って、
ということができたんですけど、
今はなかなかそれができません。
|
本間さん |
外来語(外国語)を
日本語に置き換えた場合の言葉って
定まっていないものがあるのですが、
『デイリー新語』では
「本邦初!」みたいなことが
たくさんあります。
あと、新語の辞書への記載の方法としては、
その言葉のイキが良かった時期を
明記する、ということがあります。
|
佐藤さん |
たとえば「コギャル」。
「1993年頃からの新語」とあります。
|
りか |
93年? もう10年以上使ってるってことですか、
「コギャル」!
|
本間さん |
こういう言葉の初出の裏をとるというのが
たいへんな作業で、ほとんど不可能ですね。
なかには「○○氏の造語」というのが
わかる場合もありますから
それは明記しますね。
|
佐藤さん |
えーと、みうらじゅんさんの造語が
『スーパー大辞林』に載っていたような。
|
オガー |
「マイブーム」です!
マイブーム
〔(和製) my+boom〕
世間の流行とは無関係な、自分だけの流行。
現在の個人的な好み。
〔自分の趣味性を他人にアピールする
ニュアンスをもつ場合もある。
漫画家みうらじゅんによる造語〕 |
|
佐藤さん |
やっぱり、辞書をつくるからには
世の中で何が起こっているのかを
常に気にしていなくてはならないってことですね。
|
萩原さん |
言葉の新しい使い方なんていうのは
糸井さんの仕事ですから、わたしたちはそれを
追っかけていくという感じですよ。
ああ、こういう言いかたがあるんだ、って。
|
りか |
わ、ありがとうございます!
|
佐藤さん |
言葉の持っている雰囲気を広げる感じですよね。
その言葉が持っているイメージとか、
受け取る側のこととか
考えてらっしゃるんでしょうね。
ぼくらも、そういう言葉のイメージを
広げられるような語釈をつけられるよう、
努力をしています。
かたくるしく説明するだけじゃなくて、
言葉の雰囲気を伝えたいですね。
|
オガー |
あー、すてきです。
それにしても『大辞林』は、
こんなに特徴のある辞書だったんですね!
|
佐藤さん |
そう考えると安いでしょ、辞書って。
情報量で割ったら、ほんとうにお得(笑)。
|
高野さん |
辞書を身近に感じて、
どんどん利用していただきたいと思っています。
三省堂のサイトでは、三省堂のいくつかの辞書を
無料で使えるようにしています。
もちろん有料会員にご登録いただければ
よりたくさんの言葉に
触れることができますが(笑)。
|
オガー&りか |
今日一日で『大辞林』のファンになりました!
「ヨメナ語」は『大辞林』に出会うべくして
出会ったなあと実感しました!
今日はお時間いただきまして、
本当にありがとうございました!
(おわり。ご感想はこちらへどうぞ!)
|
|
りか |
というわけでした。
このほかにも、デザインは杉浦康平さんだとか、
「スズムシ」「コオロギ」といった虫の声まで
載ってるとか、いろんなことをうかがいました。
ふつうの人が、ふつうに使って、
言葉がわかるだけじゃなくて楽しさも感じるって
いうところ、「ほぼ日」と同じだなー、
と思っちゃいましたよ!
「日本語の世界-漢字の成立」なんて
特別ページは、「ヨメナ語」好きなら
ぜひ読んでほしいです。
|
アロハ |
わー。また教えてください。
それにしても辞書づくりって、
本に埋もれて、研究室で作るような
イメージでしたけど、違うんですね〜。
|
オガー |
そうそう。
印象的だったのは、みなさん、
つねに言葉に敏感に生活していらっしゃる、
ということです。
同時に、いろんなことを知るのが大好き!
なんだろうなー、と思いましたよ。
|
ゆーないと |
ところで! あっしの感想、いいっすか。
みうらじゅん兄貴が載るなら、あっしも
「ぼーっとしたミーハー通信。」からの新語を!
いわゆる「ぼー語」をいつか載せてみたいっす!
めらめらめら〜〜!
|
オガー&アロハ
りか |
感想じゃなくて野望かい!!
|