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── |
「お父さんのバックドロップ」では
プロレスラー役を演じておられますが、
宇梶さんは、
「ケンカをすれば必ず勝ってしまう」と
以前著書で書いていらっしゃいますね。 |
宇梶 |
たまたま俺はこういう体格があったからね。
ケンカには、ほとんど負けてないんです。
ひとりやふたりだったらまちがいなく勝てたし、
15人‥‥20人、いや、
30人相手に勝っちゃう、なんてこともありました。 |
── |
ひとりで30人‥‥。
そういうとき、
何をもって「勝った」となるんですか? |
宇梶 |
相手がむかってこなくなったときですね。
相手が戦意を失って
「わぁったか!」
「(無言で頷く)」
となったら「勝った」ことになるんです。 |
── |
なるほど。 |
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宇梶 |
でもね、人からよく訊かれるんですよ。
「宇梶さん、昔、悪かったですよね?」
「うん、まあ、良くはなかったねえ」
「どうやったらケンカが強くなれるんですか?」
そうしたら、俺はいつもこう答えるんです。
「おまえ、好きな人いるか?」
「はい、います」
「俺とおまえが、なかよくなって
いろんな話をして、時をすごしたら、
おまえ、彼女を俺に紹介してくれる?」
「絶対します」
「いっしょに3人で飲みてえなあ、
って話になったら?」
「もちろん、酒、のみましょう」
「そしたらさ、おまえがトイレに行ってるすきに
俺が彼女の乳をグワーッと揉んでたらどうする?
怒るだろ?
俺にむかってくる?
むかってこなかったら揉みっぱなしだよ。
彼女は、なんで守ってくれないんだって思うよ」
「‥‥むかっていきます」
「でも俺、強いよ、たぶん今のおまえより。
勝っちゃう。ボコボコだよ」
そこで、そいつに勝った時点で、
俺のケンカは終わり。
だけど、ボコボコにされたそいつは
自分の大事なものを汚されるわ、
俺には負けるわ、ケガはするわ、
あげく彼女には見下されるわで、悔しいでしょ?
そいつのケンカは、
ぜったいに
終わらないんです。
だから、そいつはぜったい次を仕掛けてくる。
また、俺にやられる。
素手ではかなわないから、
今度は木刀を持って、後ろからやってくる。
でも俺は足音で振り返って、
そいつの持ってきた木刀を取り上げて
もっとシメちゃう。
木刀がダメなら金属バットだ、
ボウガンだ、車でひき殺すんだ、拳銃だ、
どんどんどんどんエスカレートしていく。
戦争になっていく。
ケンカっていうのは
ぜったいに負けちゃいけないほうが勝つんです。
おそろしいことなんだよ。
「だから、ケンカなんかすんな」
って、みんなにそう言ってるんです。 |
── |
負けちゃいけないほうが、勝つ。 |
宇梶 |
負けたら生きていけないから、
やりつづけるしかないんです。
でも、最初に勝ったほうからすると、
終わったらすぐに忘れちゃう、
ケンカなんてそんなもんなんですよ、ほんとうは。
エスカレートして
人を殺しちゃったら、
そいつは殺人者になる。
殺して嫌な思いが
回復されるかというと、そうじゃない。
だから、俺はケンカはしない。
ましてや、俺は自分のくだらねえ部分も
たくさん知っているから、
人に対しても、とにかく
ケンカ腰ではいかないです。
「じゃあ、結局どうしたらいいんですか?」
って言われるけど、
それは自分で考えろ、おまえの人生だ、
なんて答えています(笑)。
基本的には、ケンカではなく
「自分にはいったい何ができるか」
ということを
よ〜く磨いていけばいいんじゃないかな。
でも、ケンカのことで相談してきたやつらには、
このことは必ず言います。
生きてると理不尽なことはあると思う。だけど、
「ありもしないことにおびえて生きるな」と。
いまできることにベストを尽くせば
それでいいんだと思います。 |