1910年前後に作られた、 ほぼアンティークと言えるブローチ。
銀製の枠にはめられたガラスは裏から図柄を削り着色を施したもので、 表から見ると立体的に浮かび上がって見える仕組みになっている。
手作りであることからも、 明らかに持ち主と犬の関係が近しかった様子がうかがえる。 きっと愛犬の姿をジュエリーに留めておきたかったのだろう。
私の仕事は鑑定士ではなくただのバイヤーだけれど、 こうして古いブローチに込められたメッセージを読みとったり、 作った人の姿を想像したり、素材を調べたりする作業はとても好きだ。 まるでタイムマシンで過去へ旅して 知らない場所にすとんと降り立ったような気分になれるから楽しい。 実際、私が自分の店で販売しているブローチは 私が生まれる以前に作られたものばかりだ。
そして、この作業で得た多少なりとものデータは、 次にそのブローチの持ち主になる人への ささやかなプレゼントになると思っている。
(犬のブローチの紹介はここまで。 「ある日の日記」へとつづきます)