怪・その12

「車めがけて」



当時、付き合っていた彼氏と
山梨へ旅行した時の体験です。

東京への帰り道、
あたりもすっかり暗くなっており
特に会話をするわけでもなく
私はぼんやりとフロントの景色を眺めていました。

トンネルを抜けた際、
上下線を分ける真ん中の植え込み付近に
人が立っているのが見えました。

反射板付きのベストを着ているからか、
ライトにしっかりと姿が照らされ、
目視が容易でした。

走る車を数台やり過ごして
こちらへ渡ってくるような、そんな感じです。

事故処理をする職員さんかな?
くらいにしか考えておらず、
疲れもあり、
彼氏には何も告げませんでした。

そして私たちの車が前を通過した直後、
車めがけてその人がダイブしてきたのです。

車にぶつかってきた瞬間、
まるで白いペンキをぶちまけたように
運転席側の窓とフロントが真っ白になりました。

私の座る助手席側は、普通に正面が見えます。
人がぶつかってきた側だけきれいに真っ白です。

本当にペンキのようで、
べったりと濃い液体というか‥‥、
私から見ると、車の半分は視界ゼロです。

私はこの数秒の出来事に驚きすぎて声も出ず、
正面と、運転する彼氏の顔を
交互にうかがうことしかできませんでした。

彼氏は、まったく見えていないし、
そもそも気づいていないのでしょう。
まっすぐ向いたまま、
一切の動揺も急ブレーキをかける訳でもなく走り続け、
しばらくして無事に都内へ到着しました。

もしあの時、静かな車内から一変、
私の悲鳴で彼氏が動揺でもしたら
それこそ事故につながるようなことが
起きていたかもしれません。

それによく考えると、
仮に事故処理中の職員さんだったとしても
高速道路であのような危険な横断はしないと思います。

(れんこんさん)

こわいね!
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2024-08-08-THU