怪・その15
「もうひとりの友達」
あれは私が学生の頃の話です。
当時私を含め仲良し5人組は
それぞれのアパートを転々として集まりながら、
ひとり暮らしの寂しさを紛らわせていました。
その中で一番広い部屋を持っていた友達のアパートに
集まることが多くなっていました。
ただ、
その家主の子は霊感が多少あるタイプで、
そのためか、
そのアパートは1階の角部屋だったのですが、
壁をコンコンと叩く音が聞こえる‥‥、
などと話していたのを覚えています。
ある初冬の肌寒い日、
みんなで温かいものを食べようと、
いつものように集まりました。
うどんやサラダ、ピザ、鍋と、
様々なものを作ってプチパーティ。
それぞれが「お皿持ってくねー」
「私、箸持ってく」
「レンゲも必要だよね?」などと言いながら
準備をしました。
いざ準備が整い、「いただきまーす!」
それぞれにさっき準備したお皿等を配ります。
「あれ? 箸、1膳多かったわ。笑」
「やだ、皿も1枚多かった!笑」
「‥‥レンゲも多いね‥‥」
「‥‥‥‥え? お椀も?」
他にもスプーンやフォークなど、
すべての食器類が1つずつ多かったんです。
それぞれが準備したにも関わらず。
一瞬ゾッとして沈黙しましたが、
それでもみんなでワイワイしていたので、
その時はあまり深く考えず、
みんなで片付けをし、
そのままみんなで泊まりました。
翌朝、友人の地元の友達が来たのですが、
友達が
「あれ?
さっきいったん来たよね?
『てきとーに過ごしててー』って言って
また寝ちゃってゴメンね。
‥‥でも、赤いコート来てなかった?」と。
「さっき?
ううん、今来たばかりだよ?」
そのお友達は、
カーキ色のジャケットを着ていました。
その赤いコートの人が
私達のパーティにいた人なのか、
はたまた別人なのか。
そもそも誰なのか。
卒業後、みんな地元に帰りました。
半年ほど経った頃
そのアパートの周辺を通りましたが、
3棟あったアパートのうち、
そのアパートだけが取り壊されていました。
(あかふく)