怪・その44
「わたしの戒め」
いまから15年ほど前、
幼馴染が急に他界しました。
わたしはめったに休みがとれないほど
日々忙しく働いており、
その日は久しぶりに取れた休み。
当時付き合っていた彼と会う約束をしていました。
ですが、
当日の朝早くに彼から暗い声で電話があり、
友人が亡くなってしまい、
お葬式に行くことになったから
今日は会えない、という話でした。
暗い声の理由はもうひとつあり、
そのご友人の死因は、自殺だったそうです。
なんと声をかけていいのかわからないほど
落ち込んでいた彼との会話を終え、
今日1日、どうすごそうか考えていたところで、
今度は実家の母から電話がありました。
偶然というには悲しすぎますが
わたしの幼馴染のKちゃんが亡くなり、
今日がお葬式だから帰って来られる? とのこと。
実家までは電車で1時間ほどだったので、
すぐ帰る!と伝えたかったのですが、
なぜだか涙がどんどんと溢れて止まらず、
うまく会話ができないわたしに、
母もずいぶん慌てていたのを覚えています。
30代前半。
本当に早すぎだと思います。
突然のことだったそうで、死因はわからないと
お葬式で会った同級生に教えてもらいました。
そう言われてしまうと、今朝の電話で
彼の友人が自殺してしまった、
と聞いたことが頭をよぎります。
もしかしたら彼女も‥‥。
不謹慎ではありますが、
同席したわたしの姉に
その可能性はあるよね。と、話をしました。
何の根拠もないのにです。
そしてお葬式から帰宅し、
夕飯までの間、
うとうとと眠ってしまったときに夢を見ました。
わたしは中学の制服を着て
幼馴染のKちゃんと通っていた中学校の
廊下に立っていました。
休み時間らしく、
ざわざわと人が廊下に出ている中で、
廊下の一番奥にKちゃんが居ました。
こちらに向かって歩いてくるKちゃんは、
わたしの前で足を止めることはなく、
すれ違いざまに
「自殺じゃないからね」
と、耳元でつぶやいて去っていきました。
若い年齢で急に自分の命が身体から離れてしまい、
いちばんつらいのは本人や家族なのに
安易に憶測で物を言ってしまってごめんなさい。
目が覚めてから強く強くそう思いました。
これは怖い話とは少し違いますが、
ずっと心に留まっており、
自分が過信や思い込みで行動しそうになるときの
戒めになっています。
(M)