怪・その49

「もう一度聞いて」


友人Aさんから聞いた話です。

Aさんは学生時代、
1階に大家さんの老夫婦が住み、
2階の各部屋が住人という
昔ながらの下宿に居たそうです。

隣の部屋にはAさんと同じく、
女子大学生のBさんが住んでいました。
2人は勉強に忙しく挨拶をする程度の仲でしたが、
ある日、Bさんは、
下宿で自殺してしまいました。

Bさんの死後、
Aさんに不思議なことが起こるようになりました。

お風呂に入っていると湯船の水面に、
味噌汁を飲む時にお椀の中に、
Bさんの顔が写っているのです。

もともと霊感などないと思っていたAさんは
少し変な気持ちがしたそうです。

ある日Aさんが下宿の部屋に居ると、
突然、部屋の入り口のドアを通りぬけて、
透けたBさんが入ってきました。

BさんはAさんに
自殺した理由を述べたそうです。
そして部屋のドアを開けて帰って行きました。

Aさん曰く、
幽霊って来る時はドアを通り抜けて、
帰る時はドアノブ回して帰るんだね。

淡々とAさんが話していたのが印象的でした。

しばらくして、Aさんの友人Cさんが
Aさんの下宿に遊びに来ることになりました。

当日Aさんはゼミが長引いて、
約束の時間に下宿に帰れなくなったので、
大家さんに電話をして、
Cさんが来たら部屋に入れてあげて、
と伝えました。

Aさんが下宿に帰ると、
待っていたCさんはとても怒って怯えた様子で
「どうして教えてくれなかったの」
と叫んだそうです。

話を聞くと、
CさんがAさんを部屋で待っていると、
Bさんが来てしまったらしいのです。

BさんはAさんに
自殺の理由を聞いてもらい嬉しかったので、
もう一度聞いてもらいたくて、
出てきてしまったらしいのです。

その後CさんはAさんのことを許せず、
絶交状態になったそうです。

(なつこ)

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