第5回
消えるもの、残るもの |
糸井 |
外国だけど、リオのカーニバルが
あんなにすごいことになってるのは
何でですかね。 |
森田 |
やはり社会的背景があって、
あそこでは、そのときでないと
ハジケられないと言うか、
そこではじめて自分を出せると言うか、
若干つらい立場にある人たちが
いっぱいいるんですね。
その人たちがチームを組み、
いわばプライドをかけて参加する。
そしてコンクールという形で、
評価されるシステムもできあがっている。
仕掛けがきちんとできていることが、
ずーっと残っていく祭りになるかどうかの
非常に大きな要素になります。 |
糸井 |
コミュニティがあるだけでは
祭りは成立しないわけで、
タイトルに近いものもいりますね。
テーマと言うか……。 |
森田 |
みんなで一緒に何かをするときの、
シンボルみたいなものがね。
そして、道具立てとして音楽や花火などもある。 |
糸井 |
人の理屈を取っ払うような……。 |
森田 |
直接、感情を揺さぶるようなものですね。
音や匂いもそうだし、疲れさせるのもそう。
伝統的な祭りで長く続いてきたものには、
仕掛けがいっぱいある。 |
みうら |
それで思い出したけど、
『ヘトマト祭り』の綱引きのとき、
判定してた人が一人いて、
どう見ても確実に赤組が勝ってるのに、
「白の勝ち!」ってやるんです。
勝敗は全部その人が勝手に決める。
これも仕掛けですね。
裸祭り系もそういうやつがいると思うんですよ。
盛り上げて喧嘩させるようにしてるもの。 |
森田 |
リーダーがしっかりしてると祭りは面白いです。
メジャーになってる祭りを見ると、
きちんとした仕掛けと同時に、
必ずリーダーシップをもつ
“祭りバカ”みたいな人たちがいる。
そういう人たちの存在が、
祭りを活性化させます。 |
糸井 |
そう考えると、矢沢永吉が今、
日本でいちばんの祭りの司祭ですね。
コンサートなんか行くと完璧に仕切ってる。 |
みうら |
そうそう。
武道館で、こっち側のファンと
あっち側のファンが喧嘩するじゃないですか。
すると、「ちょっ、ちょい待ち」って
永ちゃんが登場して、その場を仕切って、
仲良くさせてから始まりますからね。
これ、すごい祭りですよ。 |
森田 |
最初に自分が
強大なリーダーシップをとっていることを示す。
それが仕掛けになっているんですね。 |
みうら |
最近は祭りに観光の要素も入ってきてるんで、
何か一つパンチがないと人が来ない。
それでエッチ系のやつも
日曜の昼間にやってるんです。
男女のまぐわいの儀式なんか、
多分、昔は夜中にやってたんですよ。
それが昼間だから、子どもも来てる。
で、お母さんに
「あれ、何やってはんのん」と聞いたりしててね。 |
糸井 |
困るよね。(笑) |
みうら |
でも、それでテレビの取材があって、
人も見にくる。
秘儀みたいなものを公にすることで、
活性化を図ってるんだろうとは思いますね。 |
糸井 |
『だんじり祭り』も、僕ら、
この間まで知らなかったもの。
家を壊したとか、
テレビカメラが入るようになって、
インパクトの強さでメジャーになったけど。 |
森田 |
関西には“だんじりエリア”があって、
大阪湾岸、尼崎、神戸あたり、
ずーっとそうなんです。
岸和田が有名になりましたが。 |
みうら |
節分も今、相撲取りとかタレントが
豆をまくじゃないですか。
それでテレビも来るし、
行事として生き残っていますよね。
巨大オチンチンが御神体の『田県祭り』は、
CNNで紹介されたらしいんです。
そしたら外国人の団体が
バスで来るようになった。
きっと、“ビッグ・コック・フェスティバル”
なんて呼ばれて、
祇園祭より有名みたいです。
大笑いして見てますけど、
内心「どうなってるんだ日本は」でしょうね。
「ここがヘンだよ」どころじゃない(笑)。
アメリカに帰って「すごかった」と言うでしょ、
また外国人が見に来る。
外国人が来ると日本人も集まるんです。 |
糸井 |
まあともかく、祭りって
「そんなことやっていいんか」というのと
隣り合わせのものじゃないとダメですね。 |
森田 |
長崎の精霊流しは、
さだまさしの歌ではしっとりしたイメージですが、
実際はメチャクチャ爆竹が鳴ってるし、
町中に煙が上がってますね。 |
糸井 |
「お祭りやってはりまんなぁ」なんて
静かに言ってるようじゃあ、
祭りとしては今後、危うい。 |
森田 |
派手さもいる。
そのためにも女性OK、
新しいものもOKにならないと。
大阪の『天神祭』なんか、
今やギャル御輿のイメージで有名になってます。 |
糸井 |
妙に立派で正しいお祭りって、
おもしろくないですね。
蹴鞠のニュース見てても、つまんなそうだもん。 |
みうら |
いや、蹴鞠で気になるのは、
衣装は平安時代なのにメガネかけてるでしょ。
『時代祭』もそうだけど、
伝統にこだわるなら、
コンタクトレンズにしとけって。
そこまで完璧にしてほしいですよ。 |
糸井 |
派手にやろうと計画したのに、
あとがつらかったのが埼玉の『秩父原人祭り』。
石器発掘が例の捏造疑惑で……。 |
みうら |
ああ……。
饅頭まで出てたのに。
開き直って、来年から
“ウソ原人祭り”をやるとウケると思いますよ。
“捏造コーナー”があって、
土にチョコエッグとか埋めるやつがいたり。 |
森田 |
「ご自由にお埋めください」ですか。(笑) |
(おわり)