糸井 | つらそうなことをやめさせて、 得意に思えることだけをやらせたいけれども、 一方で、いまの会社って、 「苦しそうなことをやっているからえらい」 っていう変な価値観がありますよね。 |
Itoi | There exists an odd value that "the more pain you put in, the better", don't you think? I think you should just do what you're good at, and drop the opposite. | |
岩田 | ありますね。 残業してないやつより 残業してるやつの方がえらい、みたいなね。 あいつは早く帰ってるけど、 オレは遅くまでがんばってる、 みたいな言い方をしたりしますけど、 本当は、それ、間違いなんですよ。 だいたい人間って、 自分の得意なことと他人の不得意なこと比べて 不公平だって文句を言うんですよ。 それは、自分でも、知らず知らずのうちに やってしまうことがあります。 |
Iwata | I know what you mean. People working overtime are somewhat thought to be working harder than those who can finish work on time, right? People complain about their colleagues leaving work early, but that's just wrong. People tend to complain comparing their strong points with other person's weakness. | |
糸井 | 「糸井はプログラムもできないのに」ってね。 | Itoi | It's like saying "Itoi can't even code programs." | |
岩田 | それはちょっと極端ですけど(笑)。 | Iwata | (laughing) Well, that's a pretty extreme example. |
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糸井 | でも、よくわかりますよ。 | Itoi | Getting back on the subject, I understand your point. | |
岩田 | これはわたしの勝手な説ですけど、 生き物って自分の子孫を残すのが最終目的でしょ。 子孫を残すために なにをしなければならないかというと、 「自分は、他の個より、この部分が優れています」 というプレゼンをしないといけないんですよ。 ということはつまり、 「わたしという個は、他の個よりも優れています」 というアピールをするのが上手なDNAが いま生き残ってるんですよ。 そうでなかったDNAは 子孫を残せずに死に絶えてるはずなんだから。 |
Iwata | This is my personal theory, but all living creatures bear the task of passing down their DNA through reproduction. To reproduce, there's the necessity to show your superiority. The individuals who can do this well are the ones that were able to pass down their DNA. | |
糸井 | なるほど、なるほど。 | Itoi | I see, I see. | |
岩田 | だから、自分の得意なことを アピールする性質が生き物には必ずあるわけで、 自然とそうなってしまうんだと思うんです。 会社という組織の中でも、 みんな、都合よく、自分の得意なことと、 人の不得意なことをつい比較してしまう。 だから、逆に、会社全体のことを考えるときには、 こういうふうに考えて、こういう軸で、 比較や評価をしていきましょう という共通認識を持たないと、 すぐに「不公平だ」となるんですよね。 |
Iwata | So I think it's natural for us to try to show that we're better than others. That's why we tend to compare our strengths with other people's weakness. This happens in any type of social organizations, such as in companies. Therefore, it becomes a priority to define an axis, a mutual agreement on evaluation. There is a need to create a fair basis. |
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糸井 | その理論はすばらしいですね。 | Itoi | That' a persuasive theory. | |
岩田 | いまのところ、この理論に 矛盾を感じたことはありません。 |
Iwata | I've never felt any contradictions so far. | |
糸井 | 明石家さんまさんが、 「男は、都合のいい女が好きなんだ」 って言ってるのと同じですね。 |
Itoi | It's like Sanma Akashiya (Japanese comedian) saying "Men like women who can slip us into self-complacency." | |
岩田 | 表現は違いますけど(笑)。 根本的に言いたいことは共通してますね。 |
Iwata | (laughing) I don't know about that, but I guess yes, in a way. |
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糸井 | つまり、自分が生きるのを有利にしてくれる存在、 という意味だからね。 |
Itoi | Existence that gives them advantage among others. | |
岩田 | だけど、そうは言っても 「我慢せなあかん」ということはある。 じゃあ、嫌いなことを全部やめようっていうと 社会生活が破綻するわけですよ。 |
Iwata | There are times when you just have to grit your teeth and do it. Society will fall apart if everyone just quits doing what they don't want to do. | |
糸井 | そうですね。 | Itoi | It will, yes. | |
岩田 | 基本的には、その会社が 「得意なことをする集団であろう」 ということを目指すとしても、 人と人がいっしょに仕事をするためには、 最低限、苦手だろうがなんだろうが、 やってもらわないと困るということを 決めないといっしょに働けないんですね。 というときに、その「最低限のこと」を なるべく小さくすることが、 経営者として正しいんじゃないかなと わたしは思うんです。 たとえば、同じ会社の中に、 ほかの人と話してくれない人がいたら困りますよね。 意思を伝えあうということに対して 努力してくれないと、 いっしょに仕事なんかできないじゃないですか。 そもそも会社というのは、 持ち味のちがう普通の人が集まって、 ひとりでは実行できないような 巨大な目的を達成するためにあるわけだから、 最低限のコミュニケーションはしてくれないと、 ひとつの方向に向かって全員が歩けないんですよね。 |
Iwata | Even when everyone can agree to make our company "the group of people who will devote our efforts to do things we are good at," we still have to identify and assign the minimum amount of works that employees have to do even when they know they are not good at. Otherwise, we cannot work together. It is the management's job to make efforts to minimize this "minimum amount of necessary works that employees are not good at," I believe. For example, some people just cannot communicate with the others. But things won't work out if there's someone in the company who will never try to communicate his or her thoughts with the colleagues. After all, a company is a group of individuals with different talents. That group of people tries to accomplish something large that an individual can't do. For everyone to move forward, the least amount of communication must always be made by each individual even when he or she is not good at talking with the others. |
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糸井 | だから、そういう「最低限のこと」を なるべくコンパクトにして、 あとは、みんなが得意なことを どう伸ばしていくか。 |
Itoi | So you try to contain the "minimum amount of labors" and encourage people to grow by doing things they are good at. | |
岩田 | それが大切なんじゃないかと思うんですよね。 あと、もうひとつつけ加えると、 本当は得意になる才能を持ってるんだけど、 「オレは苦手だ、わたしは苦手だ」って 本人が勝手に思ってることってあるんですよ。 たとえば、世の中に、 「オレはマネージメントが得意だ」って 最初から思ってる人なんていないんですよ。 |
Iwata | Yes, I think it's very important. There's also one other thing. There are people with talent that they themselves haven't realized. They may even think they're not good at it. For example, nobody thinks that they're talented in management from the start. | |
糸井 | あーーー、そうですね。 マネージメントの概念って、 小学生にはないもんね。 |
Itoi | Come to think of it, that's true. Nobody in grade school understands the notion of management completely. | |
岩田 | それが最初から選択肢に 入ってる人なんていないんですよ。 |
Iwata | No. No one chooses management from the start. | |
糸井 | それはそうでしょう。 | Itoi | Probably not. | |
岩田 | わたしだって、最初は苦手でしたよ。 でも、そこで、わたしは苦手なんだ、 って思い込んでいたら、 苦手なままじゃないですか。 だけど、わたしの場合は、 自分がやる以外にないなという 強いめぐり合わせによって それをやることになったんですけど。 |
Iwata | I didn't think I had talent in management at first. It's easy to keep on thinking you're not made for it. However, in my case, there was nobody else up for it. It was like destiny that the position came to me. | |
糸井 | 思えば、岩田さんは 二度もそういうめぐり合わせで 社長を引き受けているんですね。 |
Itoi | That happened twice in your life, becoming president. | |
岩田 | もちろん、どちらの場合も いやいややったわけではなくて、 きちんと自分で決断して社長になったんですけどね。 でも、最初からそれを目指したわけではない。 その一方で、ほかの人に対しては、 その人が苦手だと思っていることに対して ポテンシャルを感じ取って、 あえてやってもらったこともあるんですよ。 その人は、最初のうちは、つらそうにするんです。 だけど、「こういう見方もあるよ」 「こういうふうに考えるといいよ」 と少しずつ伝えていくことで、結果的に 「おもしろくなってきました」 というふうになるんですね。 |
Iwata | Of course it was my decision in the end to become president. But it wasn't my initial aim. I've given the same kind of opportunity to other people. Although they might consider themselves as "not the type", I assign tasks when I see their potential. They seem to find it tough in the beginning, but by advising them with new ways of thinking or new views to look at matters, they discover themselves getting interested in it as a result. | |
糸井 | それは、最近のことで? | Itoi | Is this something that occurred recently? | |
岩田 | 最近も、ありますよ。 もともとは、マネージメントなんか大きらい、 「ぼくはものをつくるのが好きだから、 ものづくり一筋の職人としてやっていきたい」 と言ってたような人が、 「人にものを教えるのは、おもしろいなぁ」って、 変わっていく人を何人も見ました。 それは、その人が気づいてないだけで じつはその人がもともと持っている才能なんですね。 その人自身は気づいてなかった部分を 誰かが探すことができたとき、 人は思いがけない方向に 伸びていくことができるんですよ。 (続きます!) |
Iwata | Yes. There were people who thought they weren't the "manager type". They used to declare that they loved to make games so much so that they would like to make it their sole career. But they have changed. I've heard them say how fascinating it was to teach others and watch them grow. It's a potential they already had. It's just that they didn't realize it. When you help others find that potential, you see people bloom in such a way you never expected. (Continued!) |
2007-09-06-THU |