糸井 |
いま、仕事のしかたが
変わりつつありますよね。
もっというと、変わらないとダメだとも
思っているんです。 |
河野 |
はい。 |
糸井 |
たとえば、糸井重里事務所が
欲しい人材をつきつめていったら、
それは社会全体が欲しい人材、
ということにもなるだろうし‥‥。 |
河野 |
そうですね。 |
糸井 |
以前「ダーリンコラム」で
面接試験の傾向と対策とつまらなさ、
というテーマで文章を書いたら、
読者からすごく反響があったんですよね。
そこで、僕のまわりで
いちばんの「人材オタク」である(笑)‥‥。 |
河野 |
オタクです(笑)。 |
糸井 |
河野さんの話を、
あらためて聞いてみたいなと。
「職」というものを知ってるけど、
巷で言われているようなもんじゃないよ、
というような話をね。 |
河野 |
糸井さんがやってきたことのひとつは、
こんなにいいものがあるけど、知ってる?
ということだと思うんですよ。
|
糸井 |
はい。 |
河野 |
それは「会社」というものについても
言えることだと思うんです。
世のなかには知られてないけど
すごくおもしろいことを
やっている会社って
本当にたくさんありますから。 |
糸井 |
小泉元総理が見学に行った
極細の注射針をつくってるような会社とか、
小さくてもおもしろい企業って
探せばたくさん出てくるんですよね。 |
河野 |
ええ、たくさんあります。
でも、普通に就職活動をしている
学生さんたちにとって
そういうおもしろい会社を
見つけ出すのは、やはり難しいんです。 |
糸井 |
ようするに、小さくてもおもしろくて
自分のやりたいことができる会社が
どこにあるのか分からない、と。 |
河野 |
知っている会社にしか応募できないから、
それを積み上げていったら
50社、60社になっちゃって、
結局ひとつも内定もらえませんでした、
ということが起きているんだと思うんです。
どんなにおもしろい会社があっても
その「品物」を知らないから、
「流通」が始まらないんですよね。 |
糸井 |
自分のまわりのことで考えると、
たとえば、糸井事務所が
人を採用できるようになって、
みんなウチに来ればいいのに、って。 |
河野 |
おお、すばらしい(笑)。 |
糸井 |
いや、すごい発言だと
思われるかもしれませんけど、
ウチの会社って
社員ひとりひとりが
自分で決裁しているんです。
そうすると、それぞれが
会社の全体を見通せるようになってくる。 |
河野 |
そうですよね。 |
糸井 |
自分のうえのほうに
なにか違うルールがある、
なんて思って仕事をしているあいだは
やっぱり、苦しいんですよ。
ウチの会社のやつらが
おもしろがって仕事してるのって、
結局、自己決裁してるからなんですね。 |
河野 |
ああ、よくわかります。 |
糸井 |
「糸井さんに聞いてみないとね」って
口では、言ってますけどね。 |
河野 |
決めてやがる、と(笑)。 |
糸井 |
アイディアに詰まったり
本当に困ったとき
僕のところに来るわけで、
決裁は自分たちでやっているんです。
だから、結局のところ
フリーで仕事している部分と、
チームで仕事してる部分、
その両方をやっているような感じ。
そういう仕組みを作ってしまったら、
社員が持っている能力って
結構フル回転できちゃうんですね。
そして、そのほうが
会社全体としてもありがたいでしょう。 |
河野 |
うん、うん。 |
糸井 |
僕がめんどくさがりだったから
そういう仕組みにしたんですけどね(笑)。
でも、面接対策のこともそうなんですが、
そうやって「働きかた」が変わりつつある
変化のスピードに、
古い考えかたの人たちが
どうもついていっていないんじゃないか、
という気分は、ずっとあったんですよね。
そこで「ダーリンコラム」に書いたら、
「自分もおかしいと思ってた」ってメールが
たくさん来たんですよ。 |
河野 |
おかしいと思っていても
確かめようがなかったんでしょうね。 |
糸井 |
学生が社会人の先輩に聞いても
「入社試験なんて我慢だよ」とか
言われちゃうわけです。 |
河野 |
「でも入っちゃったら楽だから」なんて。 |
糸井 |
大学入試で言われてたことと
同じなんですよね。
「受験なんてものは、理不尽だ。
でもそれに耐えたヤツだけが楽しめる」と。 |
河野 |
確かにそうですね。 |
糸井 |
でも、
「そうは言っても、糸井さん。
あなたそんな立場にいないから
自由にやったらいいじゃないか、
なんて言うけど、つまんなくても
面接の対策やっとかなきゃ
試験に受からないじゃないですか」
という意見も、もちろんあるわけです。 |
河野 |
そうでしょうね。 |
糸井 |
だから、河野さんに聞きたいんです。
僕の考え、間違ってますか?
|
<続きます> |
2007-04-06-FRI |