河野 |
結局、採用面接って
人間が人間を見るわけですから、
今でも絶対的な自信なんてないんです。
とくに学生さんって、企業側から見ると
いちばん、自信が持てない。
エグゼクティブの面接が
いちばん分かりやすくて、
学生の面接が、いちばん難しいんです。
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糸井 |
ほう‥‥。 |
河野 |
最終的にジャッジする人間が3人いたとして
全員の意見がビシッと合うのって、
最終面接に10人来てくれたとすると、
せいぜい、1人か2人ですね。
2対1の多数決で決まったり、
誰か1人でも「オレが絶対責任持つから」と
つよく言ったら、採用される。 |
糸井 |
それほど、新卒に関しては
企業側も分からないということですね。 |
河野 |
ですから、企業と学生、
お互いに「見込みちがいだった」
というような問題は、常に起こるんですよ。
だけど、その「見込みちがい」が
比較的起こりにくいのは、
自分が大切にしてきたことを話して、
面接官が、それにたいして
なんとなく共感してくれていて、
その上で
「ぜひ来てくれ」と言われた会社だったら、
その会社が大きかろうが小さかろうが、
まず楽しいでしょうね。 |
糸井 |
お辞儀の角度だとか、
挨拶のしかただとか、
そういうレベルの話じゃなく。 |
河野 |
でもやっぱり、
その会社が何をやって
お客さんに喜んでもらっているのか、
ということは、最低限、
事前にきちんと調べていくべきです。
これは、テクニックでもなんでもなくて
最低限の「礼儀」ですよね。 |
糸井 |
野球の試合に
サッカーの格好していったら
まずいだろ、と。 |
河野 |
あのさぁ、って話になりますよね。
それは「礼儀」の範疇であって、
テクニックでもなんでもない。
言ってしまえば、その程度のことです。 |
糸井 |
面接のテクニック的な事柄については、
学生のやることだから
間違っちゃっても構わないんですよね。 |
河野 |
全然、構わないです。 |
糸井 |
じゃ、どこまでいっても、基本は
「何を大切にしているか」
「何を大切にしてきたか」
という問題になっていきますよね。 |
河野 |
はい、そのとおりです。 |
糸井 |
すっごく態度の悪い面接官にカチンときた。
でも、そういう人がいてもいいんじゃない?
と思ったら、入ろうと努力すればいい。 |
河野 |
そうです。 |
糸井 |
こういう態度は許せないと思ったら、
大切にしてるものから外れるんだから、
そんな会社には内定もらって
どんなに嬉しくても、入っちゃダメですよね。 |
河野 |
ダメです。 |
糸井 |
面接でセクハラされました、
みたいな話って聞くじゃないですか。 |
河野 |
そんなのはもう、問題外ですよね。 |
糸井 |
そんな会社、どうしようもないと思っても
受かったからよしとするか、
なんていうのは
完全に間違ってますよね。 |
河野 |
ええ。
媚びる、媚びないという議論とは
別の次元の問題でしょう。 |
糸井 |
とっても簡単にいうと
人を採用することって
家族を迎え入れるようなことだと
思うんです。 |
河野 |
まさに、その通りですね。 |
糸井 |
お話を聞いていると、
会社という名前がついているけど、
家族を迎え入れるようなことに
極めて似ていますよね。 |
河野 |
でも、それをややこしくさせるのが、
景気がいいときの企業の
「大量採用」だったりするんです。
採用する側からしても、
面接の場では
「大切にしているもの」を基軸にした
コミュニケーションを図ろうと思っていて、
そのこと自体は絶対に間違っていないのに、
大量な採用計画のおかげで
大切にしてるものは何か、なんて
一人ひとりに、きちんと聞いてるヒマがない。 |
糸井 |
工業製品化しちゃうんですね。 |
河野 |
コミュニケーションなんか生まれない。 |
糸井 |
うん。 |
河野 |
学生さんのほうだって、
隣の席のだれだれ君が、
その隣のなになにちゃんが
どこどこの有名な会社から
もう内定もらったんだよ、なんて聞くと
すごく慌てちゃうわけです。 |
糸井 |
はぁ‥‥そこで基準がブレるんだ。 |
河野 |
ええ、ブレちゃうんです。
はじめは
自分が大切にしているものに
共感してもらえるなら
入社して頑張りたいと思っていても
あの企業に、あいつ入ったんだ、
あらららっーて、揺らいじゃうんですよね。 |
糸井 |
あいつそういえば、
お辞儀の仕方がよかったなあ、
みたいな(笑)。 |
河野 |
いや、本当にそういうもんなんです。
それが都市伝説のように広まっていく。
そして、みんなが
面接の必勝テクニック本なんかを読んでるから
自分もあわてて、読んだりしちゃう。 |
糸井 |
逆に言うと、そういう状況で
いかにインディペンデントでいられるかどうか
という点が、重要なところなんでしょうね。
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<続きます> |
2007-04-10-TUE |