「ほぼ日」の就職論。

面接試験の「本当の」対策。

第4回 仕事って、「価値をつけること」

糸井 景気のいいときこそ、
学生さんの軸がブレてしまう、と。
河野 かえって
就職氷河期なんていう時期には
みんな当たりまえのように、
自分のことを振り返るはずですし、
そこで振り返らない人は、
努力不足といわざるを得ないです。
糸井 社会に出て行こうという心構えが、
足りてないんですね。
河野 そして、ちゃんと考えていたのに
なんとかここでがんばろう、と
思える会社と出会わなかったとすれば、
それは、企業側の問題ですね。
糸井 でも、たいがいの学生は
自分がどこでなにをやったらいいか
なんて、なかなかわからないでしょう。
河野 確かにそのとおりです。

だから、あなたと働きたいんだ、
という会社に行ったほうが
絶対に幸福なわけですから、
僕がいま、新卒人事の現場に立つならば
中堅中小企業でも、
そういう「におい」を感じられて、
かつ大量に採らないところ、
そういうところを勧めるでしょうね。

糸井 それがなんかイヤだな、と思うのは、
きっと、親の目とか
考えちゃうときでしょうね。
河野 親の目とか、彼女の目とか、彼氏の目とか。
糸井 それはほんとに、
よけいなことですよね。
河野 あとは、まわりのムードなんかも。
糸井 でも、親はできるだけ
大きなところに行け、
なんて言っちゃうんだろうなぁ。
河野 名前を知っている会社のほうが
親としては、安心ですからね。

ぼくらの子供たちが成人して
就職するころには、きっと
そういう「大手信仰」のようなものは、
少なくなってるとは思いますけど‥‥。
糸井 でも、景気が上向きになって
会社が潰れない時期が続くと、
どんどん、いわゆる大手志向に
ムードが寄って行っちゃいますよね。
河野 忘れちゃうんでしょうね。

大会社がどんどん潰れていったら、
また「ハッ!」て
目を覚ますのかもしれないけど。
糸井 うん、そうかもしれない。
河野 ‥‥でも、自分自身を振り返ったとき、
新卒の学生さんに
こんな偉そうなこと言える
就職活動をやっていたかというと、
決して、そうじゃなかったわけです。
糸井 もう、その年齢って
ぶるぶる震えながら、つっぱってる。
河野 面接でも「バレないかな?」なんて
思いながらね。

だから、景気がよくなった時期こそ
そういうことを
企業側の面接を担当する人にも、
面接を受ける学生さんにも、
思い出そうよ、といいたいですよね。
糸井 じゃ、面接会場にさ、
「思い出そうよ」って貼り紙を(笑)。
河野 ははは(笑)。
糸井 なんのことですかって、言われても、
「なんでもいいから、思い出そうよ」と(笑)。

河野 ただ、こういう話をしてるのは、
文系の世界なんですよね。

技術系に関していうと、
大手に行きたいというのはね、
ちょっとわかる気がする‥‥。
糸井 それは、環境が違うから?
河野 その通りです。

開発テーマはたくさんあるし、
研究費も、ふんだんに回してもらえる。
糸井 ‥‥でもそれは、
結局、同じことなんじゃないかな。

つまり、そこで軸にすべきなのも
何を大切にしてきたか、
何を大切にしたいか、
ということじゃないですか。

その大切にしてきたことを
どの会社でなら生かせるか、というね。
河野 ああ、なるほど、そうですね。
糸井 そういう意味でいうと、
学生が社会に出ようと思ったとき、
自分の大切にしてきたことを思い出す時間、
自分の大切にしていることを
確かめる時間だけが、
「就職活動」なんじゃないかと思います。
河野 うん、うん。
糸井 だから、ひとつには
ドラッカーだけ読んでればいい、
というのは乱暴すぎる意見なんだけど、
少なくとも企業に入ろうとする学生は
経営者の読んでいる本を
もっと読まないとダメですよね。
河野 何が大切なのか、を
シンプルに考えてますからね。
その基準をぶらさないためにも。
糸井 経営者の読む本を読め、ですよ。
河野 わかります。
半年かけてでも、読んだほうがいい。
糸井 そこが分かったら
営業だって企画だって、
商品のデザインでだって
なんだってできますよ。
河野 あ、そうかも知れない。
糸井 だって、たいがいの仕事というのは
「価値をつけること」ですからね。
河野 そのとおりです。
糸井 「市場を作る」のが、仕事ですから。
それ以上、何があります?
<続きます>
2007-04-11-WED
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