みなさんは、 絵本の『いけちゃんとぼく』を読んでも、 「泣く」まではいかなかった、と。 |
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うん、すごい作品と思いつつも。 |
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はい。 |
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そうですね。 |
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わたしは絵本から泣いてた。 |
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わたしもけっこう‥‥。 |
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なるほど。 でもみんな共通して、映画では‥‥。 |
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泣いた。 |
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どの場面でグッときたんですか? |
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ぼくは後半ですね。 「もう、これだめだ、泣く」と思ったのは、 野球をするシーンがありまして。 |
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あー、野球のシーン、よかった。 |
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その場面で、 ものすごくきれいな入道雲が映ったんです。 |
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入道雲。 |
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そこからはもう、内容を知ってるのに 目から水が、出るわ出るわ。 |
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入道雲が引き金に。 |
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あの野球のシーンから最後にかけては、 一気に映画が盛り上がりましたよね。 |
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山下さんは、どこいらへんで? |
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ぼくはどうしてもその、 男の子の親なので。 |
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あー。 |
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ヨシオくんが大人になっていく場面、 いけちゃんと、お別れのところですね。 「さよなら」っていう。 |
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あれは泣けた、泣いた。 |
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だいぶ最後のほうなのね。 |
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へえー、みんなちがうんですね。 おもしろい(笑)。 |
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コウノさんは? |
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私は、お葬式の場面。 |
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お葬式! あのシーンは泣けた。 |
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りかさん、ぜんぶや(笑)。 |
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西原理恵子さんが出演してる場面なので、 ちょっとそこに気がそれたんですけど(笑)。 |
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そうそう西原さん、喪服姿で出てた。 |
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あの場面でグッときちゃって。 ヨシオくんが、 大人になっていかなくちゃいけない瞬間。 そこからあとはもう‥‥。 |
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ずっと。 |
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ずっとでした。 となりのスガノさんは、 どうして泣いてないんだろう って思いながら(笑)。 |
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ところが、そのスガノさんも。 |
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わたし、隠しながら泣いてた。 |
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ふふふ。 |
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涙をふけば動きでバレるし、 鼻をすすってもバレる。 |
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バレたくなかったんだ(笑)。 |
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やっぱりちょっと恥ずかしいじゃない? だからこう、タオルを、首の下に、 よだれかけのようにセットして。 |
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よだれかけみたいに、タオルを。 |
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よだれかけ? |
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涙も鼻も、 流れるままに流したの。 |
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はははははははは! |
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ダーっと。 涙はふかず、鼻はすすらず、 首をつたって胸まで流して。 あふれるがままに、エンディングまで。 |
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だだもれ状態で。 |
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そうそう、滝のように。 それで、エンディングで渡辺美里の歌が 大きな音ではじまったでしょ? あそこで、 「ズゥズズズズー!」と一気に鼻を吸ったの。 |
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ははははは。 |
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音楽で、鼻をすする音を消したんだ。 |
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そう。 鼻をすする音が、いちばんバレるでしょ。 |
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で? スガノさんは、 どの場面でグッときたんですか? |
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私はもう、子どもですね、やっぱり。 |
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あー、そっかあ。 |
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自分の子と、同じ年の設定だったんで、 |
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それはねえ。 |
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ヨシオくんがね、泥んこになって、 いじめっ子にぶつかっていくシーンで‥‥。 |
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ああ、あそこは泣いた! |
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うん、うん。 |
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いけちゃんが、ヨシオくんに向かって 「人より早く大人にならないと いけない子どもっているんだよ」 って言うじゃないですか。 |
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ヨシオくんは、 生きにくい生き方を選んでるんですよね。 |
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そう。 あんなにいじめられても、 ぜったい自分を曲げないし、屈しない。 |
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‥‥その解説を観る前に聞いてたら、 わたしも泣いてたかも。 |
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(笑)。 |
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ところで、りかさん。 |
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ん? なに? |
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のべつまくなし号泣していたりかさんにも、 いちばんグッときたポイントは‥‥? |
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あります、もちろんです。 それはなにかというと、 この物語ぜんたいの設定というか。 つまり、 「愛する人の子ども時代をみにいくお話」 ですよね。 |
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そうですね。 晩年になって恋した彼が、 どんな子ども時代を過ごしていたか、 それを知りたくて知りたくて、 神様にお願いして見にいくお話です。 |
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彼が育ってきたところを見にいって、 ああ、こんなことがあったから、 いまはこんなふうにやさしいんだ、とか。 もう、そういうことが、 ガーッて、こう、くる。 自分に返ってきたんですよね。 |
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‥‥あやちゃんが、呆然としてるよ。 |
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‥‥え? いやいや、そんな。 |
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やっぱり、りかさんは、 ご自分のだんな様のことを 重ね合わせたわけですね。 |
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つまり自分が、 「いけちゃん」になって観てたわけだ。 |
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だって、見たくない? 自分の夫の子どものころ。 見たくない? |
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‥‥それについては、 実はスガノさんとふたりで 話し合ったんですよね。 |
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うん。 |
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で、結論としては、 付き合いはじめとか、 そういう恋愛の時期は、 「好きな人の昔」に興味がある、と。 |
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アルバムとか見せてもらったりしますよね。 |
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そうですね。 |
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でも時間が経つと、 だんだん見なくなるよね、って。 |
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うん、ほとんど(笑)。 |
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うそ‥‥。 |
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いや、見たくないわけじゃないんだけど、 あきらかに、すくなくなってる。 |
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恋の最初だから見たいんだよね、って。 |
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だから、りかさんは、 いつまでもそれがある人なんですよ。 あらためてわたしは尊敬しました。 |
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‥‥そうなんだ、 みんなはそんなに見ないのね。 昔の夫の写真とか。 |
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うん、でもね、 そのあと、ちょっと思ったんだけど、 これから先、もっと時間が経って、 ほんとに尊敬できる夫婦になったら‥‥ |
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そう、そのときがきたら‥‥ |
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もう一度! |
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もう一度、ね! |
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あのころのような気持ちで!(拍手) |
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写真を見る!(拍手) |
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なんだ、これは(笑)。 |
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映画をはなれて自分たち夫婦の話に(笑)。 |
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そうそう、そうなんです、結局、自分。 だってさっきも、 「どこで泣きました?」って訊くと、 やっぱりみなさん、 ご自身の思い出話になりますよね? |
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うん、そうでしたね。 |
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そうか。 |
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そうね。ふふ。 |
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つまり、「経験値」だと思った。 この映画。 |
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ああ、経験値。 |
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そうそう、経験の数。 だからお年寄りが涙もろいのは そういうこともあるのよ。 |
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(笑)。 |
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りかさん、誕生日にいい発言ですね。 (※この日はりかさんの誕生日でした) |
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西原理恵子さんは、 ものすごい経験値のかたじゃないですか。 |
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そうだねー、ほんとにそうだ。 |
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で、やっぱわたしはそこに対する、 コンプレックスっていうか‥‥。 落ち込みます。 |
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そんな、コンプレックスなんか 感じなくていいと思いますよ、まったく。 |
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この映画を観ても、 泣かない自分はなんなんだと。 |
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グッとくるポイントは、 人それぞれだから。 |
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映画のことを理解できる 感受性の問題ですよね‥‥。 |
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いやいや、そういうことじゃなくて、 やっぱり人それぞれなんだと思います。 ‥‥それに、 正直なことを言えば、 この映画の前半の部分には ちょっと気持ちが乗っていかない 感じがありましたよね。 |
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お、その話をしますか。 |
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はい。 やはりどのように感激したのかを、 正直にお伝えするのがよろしいかと。 |
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わかりました。 では、つづけましょうか。 |
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ぜひ、つづけてください。 |
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つづけるんですね。 |
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つづけます。 |
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(つづきます!) |
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2009-05-20-SAT | |
協力/角川書店、 2009「いけちゃんとぼく」製作委員 |