ほんとうになまいきな 発言になるかもしれないのですが‥‥。 |
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はい。 |
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映画がはじまって中盤くらいまで、 いまひとつぼくは、 世界観に入っていけなかったんです。 |
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うん、そうですね、正直、 わたしもそうでした。 |
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わたしもそう。 |
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同じでした。 |
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わたしは最初っからどっぷり。ふふ。 |
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あの、なんと言いますか‥‥。 ぼくらはほら、 原作を読んでから映画を観ましたよね。 |
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はい。 |
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絵本のときには、 最初からスッと入れたんですよ。 |
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男の子とへんないきものが いっしょにいる世界観に。 |
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そう。 「絵」だと違和感なく。 |
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それが実写の映画だと、最初は どう観たらいいんだろう? というか。 |
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内容としてはファンタジーじゃないですか。 |
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そう、恋愛ファンタジー。 |
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でも、ファンタジーとして観ていると、 わりと現実的な生活感もあって。 |
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「リアル」を伝えようとしてるのかな? って思っちゃう表現もあるんだよね。 |
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ヨシオくんが いじめられてるところとか。 |
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ああー。 |
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かわいそう‥‥。 |
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石を思いきり頭にぶつけられて、 「ゴッ」て、鈍い音がして。 |
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殴るシーンのキレがすごかったですよね。 すごく早いんですよ。 |
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木の棒みたいなので殴ってたじゃないですか。 |
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舟のあれですよ、あれはなんだっけ? |
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オール。 |
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そう、舟のオールで。 |
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実際、あれで殴ったら死んじゃいます。 |
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うん。 |
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ということは、 やっぱりファンタジーって思うじゃない? ありえないことだから。 |
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そうですね。 |
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リアリティとファンタジーの間で、 気持ちがゆれてました、前半は。 どっちに振って観たらいいんだろう? |
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あと、お家が貧乏なはずなんだけど、 お母さんがすごいきれいな格好してて。 ‥‥あの、ぼく、重箱の隅つついてる? |
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そんなことはないかと。 わたしも、それ、思ったので。 |
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お母さん、マリメッコのスカートを はいてましたよね。 |
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そうー、マリメッコ、かわいかった! |
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りかさんは、違和感なくよろこんでますね。 |
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だっていいじゃない、きれいな絵のほうが。 |
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子どもたちも、ポップでおしゃれだった。 |
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そうー! かわいい色なの。 |
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ぼくはちょっと衣装のそういうので、 時代設定もわからなくなちゃって。 |
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うーん、 でもあれって、もしかして‥‥。 |
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あえてやってた? |
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大岡俊彦監督って、 「クレハ NEWクレラップ」の CMを手がけられたかたですよね。 |
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あ、おかっぱ頭の女の子の! |
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そうか、あのCMはかわいいです。 そして色がきれい。 |
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あー、なるほど。 |
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画面をきれいにかわいらしくするために、 細部に気を配る監督さん なのかもしれないわけですね。 |
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キャッチーに見えることを だいじになさってて。 |
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海とか空が、きれいでしたね。 |
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きれいだったー。 |
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‥‥あの、 質問しちゃっていいっすかね。 |
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どうぞどうぞ。 |
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前半はちょっととまどいながら、 でも後半から明らかにトーンが変わって、 みんながグイグイ引き込まれましたよね。 |
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結果、みんな泣いてます。 |
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あの映画では、どこがその、 ターニングポイントだったんでしょうね。 |
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やっぱり野球のところ? |
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野球のちょっと手前くらいかも。 |
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お葬式のあとの、 泥んこになって飛びついてくシーンって、 絵本にないエピソードですよね? |
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うん、たしかないですね、 映画だけの場面かも。 |
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うん、うん。 |
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野球の話も、原作にはないよね? |
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あ、そうだ。 |
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だからもしかしたら、 そういうシーンは「監督の少年時代」とか、 監督自身の記憶から うまれたシーンかもしれないですよね。 |
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なるほど。そこでは原作からはなれて、 監督が自由に。 |
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それではずみがついて、 後半グイグイくる作品になったのかも。 |
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スガノさん、 その解釈はとてもおもしろいですね。 |
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そうかあ、じゃあ原作と比較する意味でも、 絵本のほうを読んでおいた方がいいですね。 |
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はい、ぼくはそれでいいと思います。 だって、どんな話か知ってても、 映画は映画でたのしめましたから。 |
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絵本‥‥あれ、すごかったです。 ああ、そういえばあの絵本も、 読みはじめてしばらく、 混乱する要素がありました。 コンフューズするんです。 |
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なんで英語やねん。 |
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あれ? って思っていると、 最後の方で「あー」っていうのがある。 もう1回読み返してみると、 2回目がまたすばらしくなるんです。 |
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ぜひ絵本も読んでほしいですよねー。 |
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あ、あとね、ちょっと思ったんですけど、 あたし、テレビで西原理恵子さんの‥‥ |
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『エチカ』? |
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『エチカの鏡』だ。 それの再放送をみたんですよ。 それまで西原理恵子さんの人生を 存じ上げなかったんです。 それで、『エチカ』をみて、 あの人の壮絶な人生を知った上で、 こういうものを書いたんだって思うと また味わい深いというか。 |
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あー、そうか。 『いけちゃんとぼく』は、 「西原さんの人生」っていうのが、 大きな要素としてある、と。 |
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そうそう。 |
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ありますよねえ、それはやっぱり。 |
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そのことを薄く思いながら、 作品に触れますもんね。 |
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なるほどね。 |
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うん。 |
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‥‥この作品、 そもそも映画化っていうのが すごく難しいんでしょうね。 |
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難しいですよ。 |
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‥‥あの、ついでにもうひとつ、 なまいき言っちゃっていいですか。 |
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はい、どうぞ。 |
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もしもこの役が、こういう設定だったら、 わたしは100パーセント泣いたはず、 と思われることがあるんです。 |
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ほうほう、それは? |
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いけちゃんがもしも、犬だったら。 吉行和子さんが乗り移ったのが、 犬だったら、泣いてました。 |
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いけちゃんが、犬! |
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大胆な発言ですねー。 |
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すみません、超なまいきで! でも傍にいる犬が、 ヨシオくんを助ける話だったら、 わたしはぜったい、泣いてます。 |
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ああ、それは切ないかも。 |
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うーーーん‥‥ でもそれ、話が変わっちゃいます(笑)。 |
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まあ、そうかもしれないけど、 やっぱり僭越です(笑)。 |
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すみません! わきまえます! |
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なんだかちょっと今回、 ぼくらえらそうじゃないですか?(笑) |
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前半、乗りきれないとか、 批評みたいなこと言って(笑)。 |
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そうよ、もう、みんな泣いたくせに! |
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あ、りかさんがふくれた。 |
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りかさんの怒りも無理はないです。 だって、いろいろ言ってるけど、 結局ぼくらはこころをグイとつかまれて 泣いて帰ってきたんですからね。 |
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そうだよね、そのとおり。 泣いたんだから、負け(笑)。 もっと素直にね、 よかったところを語りましょうよ。 むつかしいこと言ってないで。 |
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ですね。 |
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んですな。 |
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ふふふふふ。 |
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(つづきます!) |
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2009-06-21-SUN | |
協力/角川書店、 2009「いけちゃんとぼく」製作委員 |