こういうことって、みんな、 やりたいからやってるんじゃないと思う。 「悪い人」とか「いい人」とかいうことを超えて、 やっちゃうときがある。 そのときに、必ず被害者が出るわけです。 |
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そっか‥‥。 |
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誰にでも起こりうるし 誰でもやっちゃうこと‥‥。 |
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そう。家庭のこともそうだよ。 親が喧嘩したりしても、 子どもは被害を受けるわけでしょ? でも、そうやって全部を考えてたら、 自分なんか、いなくなっちゃう。 |
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そうなんですよね。 |
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むずかしいところなんだよ、ほんとにね。 この映画のタイトルって、 よくできてると思うんだ。 |
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『犬と猫と人間と』。 |
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うん。 犬や猫のことを考えるのは、 きっと、人間を考えることより、 少しだけシンプルなんだ。 でも、ほんとうは、この映画は 「オレは人間を考えてるんだよ」 ってことなのかもしれない。 この入口から入っていくと、 いろいろわかるんじゃないかな? |
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私もけっこう、いろんなことを考えました。 知らなさすぎてやっちゃう、ということも あるとは思いますが、 多かれ少なかれ、 自分に「しまった」と思う経験がないと、 私たちは大人になれないと思うんです。 |
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ああ、うん、うん。 |
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失敗してあんなことやっちゃった、 という経験があるから、優しくなる。 それは、とても辛いし痛いことだけど、 やっていかなくちゃいけないのかなぁ。 |
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昔はやっぱり、 犬猫のことを考える前に、 人間が生きるほうが大変だったといわれてるから、 より弱いものが粗末にされていたよね。 自分が幸せじゃないほうがいいのか、 といったら、そんなことはない。 この映画は、 答えが出ないタイプのことを含んでるんだけど、 答えが出ることも含んでます、という気がします。 まずは、捨てないことだよね。 |
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はい。 |
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日本のペット市場は、まだまだ 昔の考えのまま成り立っている部分が多いけど、 ヨーロッパあたりでは、 ペットは「買う」のではなく 「もらう」のが基本だと聞いたことがあります。 |
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「買う」場合でも、 犬や猫を店頭に並べるのは 禁止されてるようですね。 |
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ヨーロッパは、ぼくらより少し先に そういう問題に ぶつかったんじゃないでしょうか。 |
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動物愛護という考えが生まれたのも 確かに早いんですが、 虐待の歴史も長かったようです。 街なかで動物を決闘させて それを人が見る、 というようなこともあったみたいです。 |
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そういう経験がヨーロッパにはあった、 ということなんですね。 |
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1822年に家畜愛護法ができたそうですよ。 |
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うわ、早いですね。 |
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虐待の歴史もあったし、 豊かになるのも早かったし、 両方なんだろうね。 |
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ヨーロッパでは、 19世紀に「子ども」という概念も 再発見されたのだそうです。 まず最初に認識前の状況があって、 その後に、きちんと尊重していこう、という 動きがあるようですね。 |
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「子ども」が、概念として ない時代があったというのは、驚きだよね。 |
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なかったんですか? |
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うん。役立たずな小さい人、 という考えだったみたい。 |
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そうか、そうか。 |
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足手まとい? |
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飯も食うし、何も知りやしない人たち、 という認識だったんですね。 産業革命の時代には、子どもたちは 炭鉱で働いてたみたいだよ。 |
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あ、そういえば、 その時代の子どもたちは 炭鉱の小さな穴に入れるから役にたった、 と、習った気がします。 |
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「家族」という概念も、もっと 職業的なつながりとして考えられていたようです。 生まれて、子どもが乳離れしたら、 家業をできるだけ手伝わせたり 丁稚奉公で外に働きに出しました。 「子ども」という考えを再認識したことで、 家族のとらえ方もずいぶん変わったようです。 |
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日本でも、万葉集の時代には 子どものことを宝物としてうたった歌があるから、 ヨーロッパでも、うんと昔は 子どもを子どもとしてそのまま 大切にしていた時代もあったんだと思います。 |
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産業が急発展したこともあって、 人がすべて働き手になっていったんですね。 状況によって、いろんなことの 認識が変わっていくのかなぁ。 |
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それは、女性についてもそうだったもんね。 人間は順番に、 「これはだめだよね」というのが わかってきたのかもしれない。 |
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「それはないよな」 ということに気づく人が それぞれの時代にいるんですね。 |
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(続きます) |
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2009-11-15-SUN |