ついにこの日が来たか、という感じでした。
当日のレポートにもありますが、
1週間くらい前から
緊張で胃が痛いという珍しい心境にあり、
会場でカルテットのメンバーに会うまでは
妙に気持ちがふわふわしていました。
ですが会場に入った途端に正気に戻ったというか、
急に落ち着きを取り戻し、
広い会場とたくさんの人混みを
楽しむ余裕が出てきました。
席を確保し、リハーサル風景を眺めながら、
開演を待ちます。
そして開演。
何台ものピアノの合奏や、フルート、チェロ。
さらにはエル・システマのみなさん。
普段あまり聴くことのない演奏は
とても素晴らしかったです。
そしてチェリストの宮田大さんの演奏。
ずっと聴いていたかった‥‥。
だんだんと自分の出番が近づいてきますが、
緊張よりはむしろ雰囲気にのまれたのか、
「早くあの中に入って演奏したい!」
という気持ちが強くありました。
そして最後に出番が来て、
アリーナで2000人以上の演奏者の中に混ざり、
4分弱の「キラキラ星変奏曲」を演奏しました。
アリーナにいると、
音に包まれるというよりは、
身体に振動が伝わって来るのを感じます。
そして、終わってしまった‥‥。
そう思いました。
お借りしていた楽器を
当日会場で返却することになっていたので、
ケースが大きいだの重いだのと文句を言っていたのも
これで終わりです。
ああ、なんとあっけない。物足りない。
グランドコンサートが終わった後の正直な気持ちは、
これでした。
当初6ヶ月で本番に臨むとのことでしたが、
12月にレッスンが始まり、
実際は4ヶ月という短期間。
でもその4ヶ月で「キラキラ星変奏曲」から始まり、
「ちょうちょう」「こぎつね」「むすんでひらいて」の
4曲が弾けるようになりました。
1回目のレッスンでは
楽器のどこを持っていいのかすら
わからなかったことを思い出すと、
驚きの進歩です。
ヴァイオリンを習ってみて一番楽しかったのは、
新しいことに挑戦し、
できるようになるという実感でした。
そのために練習時間を工面し、
場所を確保するなど、
いろいろ大変なこともありましたが、
それもまた楽しかったし、
やった甲斐はあったと思います。
このレポートは、
グランドコンサートが終わって
数日経ってから書いています。
今の一番の気持ちはというと、
この数ヶ月常に身近にあった
楽器がなくなってしまった寂しさ、でしょうか。
もっと弾きたい、楽器に触りたいという気持ちが
日に日に強くなっています。
音楽とは聴くものだと思っていた自分が、
演奏するものだという
意識に変わったと実感しています。
これまでは素直に楽しんでいた
ヴァイオリンのコンサートも、
左指の動きは? 弓の動かし方は? と、
見るところが違ってきそうです。
ほぼ日のみなさん、そして先生がた、
こんな機会を与えていただいて、
本当にありがとうございました。
そして読者の方からの反響も、
とても心強いものでした。
心残りがあるとすれば、
カルテット4人揃っての合奏が
できなかったことでしょうか。
手元に残ったもの。
最後のレッスンで先生からいただいたチョコレート。
弱音器。
グランドコンサートのバッジ。
今思い返してみても、
この企画は夢のような体験でした。
これからヴァイオリンを続けるかどうか‥‥
多分続けると思います。
楽器を習い始めるのは、
子どものころからでないとダメだと思っていましたが、
そうじゃないことがわかりました。
ピアノを習っていた時は
あんなに面倒だった練習が、
こんなに楽しいことを知りました。
「ほぼ日カルテット」としての活動は終了しますが、
もうすこし、ヴァイオリンと
付き合ってみようと思っています。