オバマ大統領の就任式の、翌日。
アメリカに詳しい作家・冷泉彰彦さんに、
糸井重里が、話をうかがいました。
その対談のようすはリアルタイムで音声中継されたのですが、
これが、おもしろいと大好評!
そこで、テキスト版でもお届けすることにします。
オンエアされた部分はもちろん
放送前後に交わされた話も、
つくづくおもしろいので、掲載しましょう。
オバマさんのことだけでなく、
アメリカに関するいろんなことについて、
なにかと話しあっていますよ。
ぜんぶで10回、ぜひお楽しみください。
第1回 | それで「冷泉彰彦さん」に | 2009-02-16-MON |
第2回 | アメリカの闇 | 2009-02-17-TUE |
第3回 | オバマの緊張した顔 | 2009-02-18-WED |
第4回 | みんなが泣いた日 | 2009-02-19-THU |
第5回 | ケネディの困った姿 | 2009-02-20-FRI |
第6回 | カウボーイの沈黙 | 2009-02-23-MON |
第7回 | ジョン・マケインの物語 | 2009-02-24-TUE |
第8回 | 対立のまんなかにいる人 | 2009-02-25-WED |
第9回 | 問題を解決し続ける人 | 2009-02-26-THU |
最終回 | 宮崎アニメとマイケル・ジャクソン | 2009-02-27-FRI |
糸井 | はじめまして、糸井重里です。 |
冷泉 | はじめまして、冷泉彰彦です。 |
糸井 | すみません、今日のストリーミング中継、 昨日、突然やることに決めまして(笑)。 |
冷泉 | いえいえ、こちらこそ、楽しみです。 |
糸井 | 中継の開始は、3時くらいからの予定なので、 それまでは、 打ち合わせというか、雑談させていただいて。 |
冷泉 | はい、はい。 |
糸井 | よろしくお願いします。 |
冷泉 | よろしくお願いします。 |
糸井 | えー、ふだんはアメリカにお住まいですが、 今回のオバマ大統領の就任で、 一時的に、日本へ来てらっしゃるんですね。 |
冷泉 | はい、テレビやら取材やらで、いろいろと。 |
糸井 | アメリカにはもう‥‥。 |
冷泉 | 16年になります。 |
糸井 | それは、どういうきっかけで? |
冷泉 | むかし、ベネッセという会社にいまして、 いちばん最初は、その関係ですね。 会社が、ベルリッツという語学学校と 提携していましたので まぁ、その流れで行けと言われまして。 |
糸井 | それがきっかけで、16年。 |
冷泉 | ええ。 |
糸井 | あの‥‥ベルリッツとかって、余談ですけど、 そこに入ったら、何とかなるものなんですか? |
冷泉 | いや、まぁ、最終的には 勉強する人のこころがけ次第でしょう。 |
糸井 | そうですか、やっぱり。 |
冷泉 | もちろん、その手の語学学校のなかでは いちばんちゃんとしてるとは思いますけど。 |
糸井 | なるほど。でも、たしかにまぁ、 入っただけで努力しなかったら、ダメですよね。 |
冷泉 | ‥‥とあるフランス語の授業で 「節税や脱税についての会話の練習」 というレッスンがあったんです。 |
糸井 | はあ。‥‥節税や脱税? |
冷泉 | いかに節税、脱税するかという会話の プログラムをつくって 実践的にやるレッスンなんですけど、 やたらと 税金関係の専門用語が出てきたりする。 で、おもしろいのはね、 もともと税金を納めるのがイヤで ふだんから高い節税意識を持っていた人ほど、 うまくしゃべるそうなんですよ。 |
糸井 | はー‥‥。 |
冷泉 | もうね、本当にぺらぺらぺらぺらと、 自分の言葉のように フランス語が、出てくるんですって。 |
糸井 | いかに税金納めたくないかについての(笑)。 |
冷泉 | 反対に、税金というものは 国や社会のためであるという考えをお持ちで、 節税意識のない人もいるんです。 そういう人は、いくらそのレッスンをやっても、 うまくしゃべれるようには、ならなかった。 |
糸井 | へぇー‥‥つまり動機がないからだ。 |
冷泉 | 本気にならなかったら身に付かないし、 厄介な話でも、自分の言葉を使って どうにかしようとしない限り、 脳のなかのスイッチが入らないんです。 |
糸井 | 説得力ある話だなぁ(笑)。 |
冷泉 | でしょう? |
糸井 | おもしろいから余談を続けますけど(笑)、 ぼくらが英語を話すときって となりの日本人が聞いてるのを意識して 恥ずかしいんですよね。 なんか、うまくしゃべろうとしちゃって。 |
冷泉 | これ‥‥ちょっと聞いた話なんですが 外務省なんかだと、 日本の政治家やマスコミがいる席では 「カタカナ英語をしゃべれ」 みたいな内規があるらしいんですよ。 |
糸井 | わざわざ? |
冷泉 | うん、流暢な英語をしゃべっちゃうと 偉そうに聞こえるからって。 |
糸井 | はー! ‥‥わかる。なんとなく。 |
冷泉 | かなり「できる」はずの外交官も、 国連総会なんかでは カタカナ英語でやったりするらしいんです。 |
糸井 | そうなんですか。 |
冷泉 | むかしはね、絶対ヘンだって思ってたんですけど、 英語を流暢に操る外交官を見たら 「この人、日本の国益を代表してくれるのか?」 ‥‥って疑念を、ふと抱いちゃうかもしれない。 そのあたりの心理的なメカニズムまで ふくめて考えないと、不十分だと思うんです。 一概にダメとは言えない、というかね。 |
糸井 | どっちに重心をかけてるかが、 表現されちゃうんだ。 |
冷泉 | そうそう、本当は表現してなくても そう見えちゃうんですよ。 |
糸井 | 冷泉さんのお名前と似てますね。 |
冷泉 | というと? |
糸井 | 冷泉さんって、もっとエリート然とした、 ピリピリした人かと思ったんです。 たぶん、冷泉彰彦ってお名前のせいで。 |
冷泉 | ああー‥‥。 |
糸井 | アメリカに住んでいて、 名字が「冷たい」って文字から始まる 政治経済を語れる作家‥‥。 偏ったイメージが刷り込まれてた(笑)。 |
冷泉 | ペンネームなんですけどね。 |
糸井 | え、そうなんですか? |
冷泉 | わたし、作家としての処女作に ミステリーのような本を出してるんですけど、 そのときにですね、 アドバイザー的な立場にいた角川春樹さんが 「そうだなぁ、ミステリーだろ? だったら 思いっきり派手な名前にすれば」って(笑)。 |
糸井 | へぇー。 |
冷泉 | 「いかがわしさが滲み出るぐらいの 画数の多いやつでいこうぜ」 なんて言って、そそのかされまして(笑)。 |
糸井 | それで、冷泉彰彦さん。 |
冷泉 | そうなんです。 |
<つづきます> | |
2009-02-16-MON |