通常、国際線の飛行機の中には、
ファーストクラス、ビジネスクラス、
エコノミークラスという3つのクラスが用意されてる。
座席の大きさ。
シートの背もたれが倒れる角度などなど、
ハードウェアの快適さがまず違う。
けれどそれ以上に、違いがでるのがサービスレベル。
そもそもキャビンアテンダントひとりあたりの乗客の数が
クラスによって違うのですから、しょうがない。
当然、ファーストクラスが最もサービスが良く、
エコノミークラスは合理的なサービスが
提供されるとされています。
そして、その違いがよくわかるのが機内食。
エコノミークラスでは、
すべての料理がトレーの上に並んできます。
サラダやパン、前菜などの料理が
ズラッと並んだトレーに、
メインディッシュをひとつ選んで並べてもらう。
合理的な提供方法。
多くの人の食事を、短時間で提供しようと思うと
こうしたやり方をしなくちゃいけないのでしょうネ。
乗り物で食事をするということは、
つまり「駅弁」みたいになるんだろうなぁ‥‥、と。
しょうがないことなんだろう‥‥、と。
そう思っていて、
ところが生まれてはじめてビジネスクラスにのったとき。
それはそれはビックリしました。
お食事の準備ができましたと、
キャビンアテンダントがいいながら
ひとりひとりのテーブルの上に
テーブルクロスをひいいていく。
その儀式からまず機内食がスタートするんです。
ナプキンにくるまれたナイフフォークに、
ソルト&ペッパーの小さな容器がキレイに並ぶ。
お水がグラスで供されて、
「食前酒でもいかがですか?」
ゆっくり飛行機の中がレストランに変わってく。
お待たせしましたと前菜のお皿がやってきます。
テーブルクロスの上にはお皿。
お皿だけ‥‥。
そうだ、なるほど、そうなんだ‥‥、と、
ボクは本当に感動しました。
何がなるほどと言えば、そこにはトレーがないのです。
エコノミークラスの食卓はトレーで覆われ、
だからあくまでそこは飛行機のシートのテーブル。
決してレストランのようには見えない。
トレーからの開放こそが、人間的で上等な食事の証。
と、そのときボクは思ったのです。
当然、料理は何度も何度も運ばれます。
運ばれるたび、前の料理のお皿はなくなり、
新たなお皿で景色が変わる。
ときに和食の松花堂のように、
箱型の器にいくつかの料理が盛り込まれたものが
一度にやってくることはある。
けれど、箱は箱だけそこにおかれて、
決してトレーと一緒に置かれることはないのです。
日本のバフェ(ビュッフェ)にあって、
アメリカのバフェにないモノ。
それはトレーです。
日本の人はいくつものお皿を
ズラリと並べて食事をしたがる。
アメリカの人はコースをたのしむように
一皿、一皿、食べ進めていく。
大きな一皿にいくつもの料理を盛るのを好むアメリカ的。
ひとつの料理が入った小さなお皿を
いくつも用意するのを好む日本的。
アメリカ的ならトレーは必要ないモノで、
一方、日本的な食べ方をしようと思うと、
トレーにお皿を並べる方が便利で快適。
だから日本ではかなり高級なバフェレストランでも
トレーが用意されている。
問題はトレーはトレーであって、
本当は料理を運ぶためだけのモノ。
例えば家庭で、おかぁさんがお盆に乗せたおかずを
そのまま、テーブルの上にお盆ごと置いたとしたら、
あれっ? て思う。
なのになぜだか、
バフェレストランではほとんどの人が
料理を運んだトレーをそのままテーブルに置き、
なんの疑問も持たずにそんまま食事をはじめる。
その景色。
あたかも社員食堂やセルフサービスの学食で
食事をしているようですよね。
そしてそれはまさにエコノミークラス的であって、
ビジネスクラス的ではない。
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