ボクらの店は高価なお店を
目指していたわけじゃありませんでした。
上等な店にはなりたかった。
けれど、普通の人がちょっと背伸びしたくらいの値段で
たのしめ、しかも何度も来てもらえるような
気軽なお店を目指してた。
当然、ひとりひとりの食べるスピードに合わせて
料理を作って、提供できる数の
スタッフがいたわけじゃない。
無駄をあえてかかえるだけの、
余裕があったワケでもないし‥‥。
ましてやランチタイムは、
みんながたのしくお腹いっぱいになるための時間帯。
限られた昼休みの中で
たのしみ切らなくちゃいけない人がほとんどで、
だからお腹を一杯にしていただくための部分は、
座って5分。
食べ終わるまでに30分でおさまるように、
テキパキ、サービス。
ボクたちが考える限り、
快適なランチタイムの楽しみ方を、一生懸命提案をする、
つまりビジネスクラス的なるおもてなし。
ただボクたちは、お客様が食事を終えてからを
ファーストクラス的にと工夫をしました。
まずはお客様に「食後のお時間はいかがされますか?」
とお聞きします。
ユックリ、時間がありますよ‥‥、というお客様には、
お茶のメニューをお渡しします。
中国のお茶を全部でいつも10種類くらいは
用意してましたか。
それぞれ魅力的なお茶。
選び易いように、
分かりやすい説明書きをつけたメニューで、
まずじっくりと選んでいただく。
どれにしようか選びあぐねてらっしゃる方には、
何種類かのお茶をちょっとづつ、
テイスティングのようにたのしんでいただいたりと、
ユックリ食後の時間をたのしんでいただくようにした。
それと一緒にお茶菓子を、8種類。
それぞれ一口大の小さな焼き菓子。
自家製のものもあり、
知り合いのお菓子屋さんから分けてもらったモノもあり。
お皿にならべて、さぁ、どうぞと。
お茶をいれるのに小さなポットを選びました。
だから何度も、差し湯を注ぎにお客様の傍らにゆく。
そのたび、お茶の感想を聞いたり、
ランチの料理の意見を聞いたりと
お客様とのコミュニケーションのきっかけになる。
飲みたいものを飲みたいだけ、
好きなだけユックリ時間を使って
たのしんでいただくようにしたのです。
お腹を満たしたあとの時間は、とても贅沢。
みなさん、ニッコリ、やさしい笑顔で
いろんな話がはずみます。
夜の予約を頂戴したり、名刺を交換させていただいたりと
その時間が充実すればするほど、
ボクらとお客様との絆が深まる。
ステキな時間。
一方、仕事の時間が迫ってますからと、
お茶を飲まずに帰られるお客様には、
8種類のお茶菓子を小箱に入れて、
持って帰っていただくことにしたのです。
お茶の葉っぱをちょっとつけ、
午後の仕事の合間にでも‥‥、と。
本当だったら、店でユックリしていただきたかったのに、
それが果たせずごめんなさい‥‥、
というそんな気持ちではじめたサービス。
これが特に評判が良く、ボクらの店は、
とても上等なランチをやってる店だと
かなりの人気を得ました。
本当は時間があるのだけれど、
このお茶菓子を首を長くして待ってる秘書のため‥‥、
と食事を終えてすぐ帰る人。
このお茶菓子をおみやげとしてもらって食べて、
それでボクらのお店のファンになったという人もいた。
お客様に合わせたサービス。
ほんの少しの工夫でこうしてできるんだなぁ‥‥、
ってボクらは思った。
なにより、「ステキなお昼ご飯の思い出」を
多くのお客様に提供することができたというのが
ウレシくて、ボクらはそれから次々、
お客様想いのアイディアを
形にするコトを仕事にしました。
そうそう、ボクがファーストクラスの真髄を体験する
キッカケ作りをしてくれた、
イギリスの大切なビジネスパートナー。
彼らを料亭にお連れしたことがありました。
それはそれはたのしい体験。
来週、おはなしいたしましょう。
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