ちょうどボクらがレストランを経営していた頃。
当時の日本を代表する、外食企業の経営者の人たちに、
企業トップとしての意識調査をするという仕事を
引き受けました。
本業としての仕事ですネ。
ちょうど当時、外食産業はこれからの注目産業。
しかも急成長を遂げている産業で、
その実態を調査したいという依頼が沢山あったのです。
そのたいていは消費者側の意識調査で、
けれどそれは珍しく
直接トップにあって話を聞いてくださいという仕事。
是非に任せてくださいと、10社ほどでしたか‥‥。
用意された質問項目をもとにしながら、
インタビューをして回る。
産業全体の未来像や、
その中でそれぞれの会社が果たそうとしていること。
日本の消費者がこれからどうなっていくんだろうか‥‥、
と、それぞれの質問に対して
彼らはそれぞれの持論をうれしそうに披露する。
30分ほど頂戴します‥‥、
と予定をもらってはじめるインタビュー。
大抵、話が盛り上がり小一時間ほどもかかってしまう。
それだけみんな、情熱をもって
外食産業の経営にあたっていたのでしょう。
ただ、ひとつだけ。
ある質問のときだけ
どうにもこうにも話が盛り上がらない。
「自社の店長に対して求めるコトは何ですか?」
外食産業で働く人に何が求められているのか?
というコトを、調べたいというコトで挟んだ質問。
ところがその質問に対して、
ほとんどの経営者の答えは同じ。
「会社が決めたスタンダードを守り続ける継続力」と
「利益に対して執着心をもつ姿勢」と、
そう答えるとそれ以上、話がどうにもふくらまない。
次の質問は‥‥、と先に急ごうとする人までいるほど、
おそらくそれは「夢のない現実的」な
質問だったのでありましょう。
ただひとり。
突出したサービス力で人気の
チェーン店のトップがこう答えます。
「レストランが好きな人材を見ぬいて採用する能力が、
うちの店長に必要なモノ」。
そしていいます。
「そのレストランが好きだからと入社して、
レストランで働いている人が
レストランのコトを嫌いにならないように
努力するのが
経営者としての私の仕事だと思っているのです」と。
ボクはたちまちその人のファンになった。
それと同時にその人が経営する
レストランのファンにもなった。
そのレストランは、どこもしっかり手を抜かず
上等な料理を真面目に作る。
サービスも笑顔がキレイで確実で、
けれど疲れすぎない程度の手間と作業で
お客様が満足できるようなしくみができている。
なにより、適正な利益が自然にでるような価格設定。
しかもお客様にも働く人にも快適なように
設備投資を怠らない。
そんな一生懸命がお客様にも伝わるのでしょう。
「ありがとう」
とサービスしてくれる人に
思わずいいたくなってしまう‥‥、
そんなステキな雰囲気がある。
なにより、人が長続きする。
好きな仕事を続けるコトで、生活できるというコトが
実は人にとって一番シアワセな状態で、
その会社にはその当たり前があったのですネ。
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