How many?
オヤジが聞きます。
ハウ・メニー。
あまりに唐突な質問に、ポカンとしてたら再び、
「How many?」といいながら
指でカウンターの中を指さす。
指の先にはフランクフルトが何十本も
鉄板の上でこんがり焼けてる。
なるほど、ココではメニューはホットドッグだけ。
だから「何本食べるか」というコトだけを宣言すれば、
注文がこと足りるのだと、そのとき合点。
「ジャスト・ワン・プリーズ」と、
ボクは1本、注文します。
オヤジさんはカウンターの隅に置かれた
ステンレスの箱にやおら手を伸ばし、蓋をあけます。
昔、床屋さんに必ずあったタオルを蒸しておくような
金属製の箱のちょっと大きなモノ。
中から長細いロールブレッドを取り出して、
切り目を入れた面をしたにして鉄板の上において、
軽く押し付ける。
ロールブレッドから蒸気があがって、
ヒックリ返すと軽く焦げ目がついている。
そこに一本。
フランクフルトをのせて挟んで、舟形の紙の器にいれる。
受け取ろうかと、手をオヤジさんの方に向かって
伸ばそうとしたタイミングで再び、一言。
「チリ・オア・チーズ?」
そう言いながら、グリドルの上にのせた鉄鍋の蓋をとると
中にはたっぷり、チリビーンズ。
チリ独特のスパイス臭が鼻をくすぐり、
思わずプリーズと言いたくなるとこ、
いやいや、まずは基本的なる
プレインドッグを食べてみねばと、
「ノー・サンキュー」とそれは断る。
はい、どうぞとホットドッグを手渡しながら、
「レリッシュ・マスタード・ケチャップは
好きに使っていいからネ」
と、指差す先には小さなテーブル。
その上には刻んだ玉ねぎやピクルス、
ハインツのケチャップにフレンチマスタードの
どちらも業務用の大きなボトルが
ドンっと置かれてボクを待ってる。
まるで屋台のような店だと思った。
ホットドッグ一種類をただただひたすら作って売る。
紙に書かれたメニューはないけど、
そこで働くオヤジ自身がメニューなんだという自信。
手渡されたホットドッグは思ったほどは大きくはなく、
特に太さが口にすんなり入ってくれそうな
ほどよいサイズ。
けれど熱々。
しかもズッシリ、重たく感じる。
オヤジさんのプライド分だけ、
見た目以上に重いんだろう‥‥、と、思いながら
オニオン、ピクルス、そしてケチャップ。
パラパラプチュンとホットドッグを飾って、
さぁ、いただきますとカプリと齧る。
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