まずは掃除をと思って店をながめると、もうピカピカで
いつお客様が入っても恥ずかしくない状態で、
おじさん何時に起きたんだろう‥‥、と。
ボンヤリしてたら「おはよう」と低い声と一緒に
黒い布の塊を手渡されます.
ズッシリ重い。
テーブルの上に置くと
ザザッと石がこすれ合うような鈍い音がする。
グルグル巻きにされた布。
ユックリ開いていくとそれは大きなエプロン。
いくつものポケットが前に縫いつけられてて、
そこにコインやお札がズッシリ入ってた。
つり銭用のエプロンだった。
なるほど、今日のボクの仕事は
お金を受け取りつり銭をわたすという作業。
ジロッとボクを見つめたオジサン。
「日本人は計算が得意だろう‥‥」
と言って、小さなメモ帳と鉛筆一本、ボクに手渡す。
まずはつり銭の確認です。
1セント、5セント、10セント。
一番多いのは25セント硬貨で
それに、50セントと1ドル紙幣が続いた。
お金の種類ごとに枚数を勘定して、
全部で100ドルくらいもありましたか。
確認結果を紙に書き、オヤジさんに見せると
「So quick, smart boy」
と、目を薄めながらほんの少しだけニッコリします。
今日一日のパートナーとして、
まずは合格というコトでしょう。
ホットドッグ1本が75セント。
2本目からは50セントで、
だから2本買うと1ドル25セント。
3本だと1ドル75セントになる。
なるほど、あのかっこいい紳士は
毎日1ドル75セント払って食べているんだと、
勝手に推察。
チリをかけると99セント。
チーズをのせても99セント。
両方のせてチリチーズドッグにすると
1ドル15セントになる。
チリドッグを2本買ったら
99セント×2から25セントを引いて
1ドル73セントでいいんですか?
そう聞くボクに「Good boy!」とお褒めの言葉。
けれど顔は真剣で、
さっきからずっとソーセージを焼き続けている。
大きな鉄板の上に並んだソーセージは、
ざっと数えて300本ほどもありましたか‥‥。
すごい数ですネ‥‥、というと、今日は特別。
これが1時間足らずで売れるのだという。
こりゃ、大変だ。
10秒に1本の割合ということは、
ほぼ10秒に1回の頻度でお金を受け取り
お釣りを渡さなくちゃいけないわけで、
しかも組み合わせによってお釣りが変わるこの煩雑を
どうこなそうかと緊張します。
それにしても1セント硬貨があまりに少なく、
それもどうしようか不安に感じる。
|