強くはなくて、けれどどっしりとした風合いで
香りが後から開いてくる、
カジュアルなお酒を一杯いただけませんか?
と、彼らに告げて選んでもらうもの悪くない。
けれどもっと気の利いたヒントを
投げかけることができるとステキ。
ソムリエのワイン選びのヒントは料理。
食べたい料理をたのんでそれにあったワインを
いくつかサジェスチョンしていただけませんか?
と、お願いするのが一般的で、けれどバー。
料理に合わせたお酒ではなく、
お酒をたのしむためのお酒を
選んでもらうためのヒントは、やっぱり「お酒」。
好きなお酒の銘柄が、唯一無二のヒントになる、
というワケです。
類は友を呼ぶとでもいいますか。
例えば、高級なモノであればなんでもいい人。
新しもの好きの人。
とにかく珍しいモノや希少価値の高いものばかり選ぶ人。
癖のある味のお酒が好きな人なんじゃないかと、
そのお客様がファーストドリンクとして選ぶお酒で
そのお客様の好みを推察するのです。
ちなみにお客様たちが選ばれたコーヴァジェは
「芳醇だけど気まぐれで変化に富んだ、ボヘミアン気質」
のようなモノを感じますな‥‥。
バーテンダー氏のその言葉に、
ボクらが偶然選んだそれは、
なかなか正しくボクらのコトを
表してるじゃないのと思った。
偶然にしてはあまりの上出来。
そして彼が、残念ながら在庫のなかった
コーヴァジェの代わりにボクらに薦めてくれた、
オタールやカルヴァドスも
ボヘミアンな雰囲気を持つお酒なのです‥‥、と。
ボクらはためしに彼が薦める二種類のお酒をもらって、
なるほどこれがボヘミアンな味なのか。
ついでに、高級と誰もが認めるブランデーを
一杯ためしに飲めませんか?
と、お願いをしてレミーマルタンをみんなで分ける。
それぞれおいしく、
ブランデー同士に大きな違いがあるとは
まだ飲みなれぬ舌には少々むずかしく、
けれどたしかに一口目より二口目。
時間がたって飲めば飲むほど、
コッテリとした香りを発するオタールが、
たしかにおいしく
これに似たコーヴァジェとは
どんな飲み物なんだろう‥‥、と、
ますます気持ちはたかぶっていく。
どこならこれからコーヴァジェを飲めるでしょうか?
そうですね‥‥。
大きなホテルのバーであれば、
大抵、どこでも持っている。
けれど、それを「たのしめる」場所となると、
さぁ、どうだろう。
ナイトクラブのようであっては絶対にダメ。
座り心地の良いカウンター。
あるいは時間を忘れるほどに、
リラックスできるソファが置かれた静かなお店。
うるさい音楽をがなりたてるスピーカーが
ぶら下がっていないバー。
音はせいぜいピアノ。
あるいは暖炉で槙がはぜる音。
時間の経過に従って移ろいかわる
コーヴァジェと語り合うにふさわしいバーと言えば、
あのホテルのメインバーを置いて
他にはないでしょうな‥‥、と。
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