飲食業全般のコトを
「水商売」と呼んでいた時代があります。
学生実業家として大学生の頃から
飲食店を経営していた父も、
母と結婚したくて母の実家に出向き、
「お嬢さんをシアワセにしたいのですが」と言ったとき、
水商売でうちの娘をシアワセにできるはずがない、
と最初は断られ続けたんだ。
悔しかったよ‥‥、と、
小さな頃からボクは何度も父から言われた。
水商売と呼ばれるようになった理由はいくつかあります。
スープや出汁、あるいは酒を水で薄めて
平気でうるようなズルイ商売。
だから信用できないんだ‥‥、と侮蔑を込めて水商売。
水のように形がなくて、
そのうち蒸発してなくなっちゃう。
それほど飲食店というのは不安定で、
いつのまにか潰れてしまう商売なんだ‥‥、
と憐れを込めて水商売。
たしかにかつて、お客様の顔を見て値段をつけたり
毎日味が変わったり、
挙句の果てに店を潰してしまう飲食店が多かった。
けれどそんなコトではお客様から信頼されぬ。
自ら襟を正して後ろ指をさされることなく、
尊敬される飲食店を経営しよう。
レシピを作り、マニュアル作り、教育なんかを徹底し、
そして飲食業は「外食産業」と
呼ばれるようになったのですネ。
父がボクの母とめでたく結婚できたのも、
「公明正大な商売で潰れぬ努力をしてみせるから」
と母の両親に約束をしたからだった。
にもかかわらず、
いまだに飲食店が水商売と言われる理由がひとつある。
水のような安い素材を使っていながら
高い金額ふっかけやがって‥‥、
とやっかみを込めて水商売。
そしてその最たるものが、
酒という、まさに水を売って商売している
バーのような業態で、
だから他の飲食店の人たちは
バーのような店があるから、
自分たちまで水商売って呼ばれてしまう。
迷惑至極と邪魔者扱いするコトさえある。
はてさて、そうか?
安く仕入れたものを高く売ってはいけない‥‥、
それは人を騙すことだと
一体だれが決めたんだろう?
って、ボクは不思議に思います。
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