たしかにボクもワインのプロではないけれど、
ワインを選んでもらうプロになりたいなぁと
ずっと思ってレストランでふるまっていた。
だからなるほど。
プロを味方にするって、
どんな世界でもステキなコト、ってボクは思った。
「ところで、今日のこのステキな香水って、
どのようにして選んでいただいたのかしら。
その秘訣を私も知りたいわ!」
奥様の質問に、エマは再びニッコリし、こう答えます。
「簡単ですわ。
ここのお店のコトを思い描いて伝えるんです。
暖炉の前でプシュッとひとふり。
その場が明るくなるような華やかな香りが
すぐに落ち着いて、食事の邪魔にならぬ
軽い香りになってくれるとうれしい。
料理の最初は緑の香り。
メインディッシュは炭焼き料理だから、
ユックリ香りが重たくなってくれると
なおさらうれしい。
3時間ほどで食事がおわって、それからデザート。
そのタイミングでバニラの香りがする
パルファムがあればいただきたいのだけれど‥‥、と。
それで薦めてもらったのがこの香水。
実は二度ほど、つけて試してみたのだけれど、
今日ほどその効果を実感できなかった。
香水も、香る場所を選ぶんだわぁ‥‥、って
今日はワクワクしながら
一緒に香りをたのしませてもらえました」
エマの話しを聞きながら、耳の後ろをそっと撫でた奥様。
その指をご主人の鼻先に近づけて、
「あなた、本当にバニラの香りがしてきたわ、
この香りにあうデザートって何かないのかしら」って。
それならここのザバイオーネはバニラの香りが華やかで、
クリーミーでとてもおいしい。
それにバニラのジェラートを添えて
みんなでいただきませんか? と。
シアワセな食後のたのしみを堪能しながら、
香水の香りもやさしく幕を引く。
そういえば、あなたがずっと
私を連れていきたいっておっしゃっていたレストラン。
日本に帰ったら早速そこの予約をとって、
一緒にそこのお店にピッタリの香水を
買いにいきましょうよ。
その香水を使うたび、
そのレストランの思い出にひたれるように‥‥。
奥様に「うん、イイね」とニッコリ答えるご主人の
幸せそうな横顔が、その日一番のマジカルなコト。
さて来週、料理と香りをまとめましょう。
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