絶対にダメなのは「酒を飲む」コト。
匂いも、タバコも、そして酒も
「味覚を不確かなモノ」にする。
けれど、匂いやタバコは
「料理のうま味や風味を損なう」ように作用する。
けれどお酒は、
「料理をおいしく感じさせる」魔力をもってる。
「おいしい料理を、おいしくはなく感じさせるモノ」と、
「おいしくもない料理をおいしく感じさせるモノ」の
どちらが危険か考えてごらんなさい‥‥、と。
たしかに、イタリアやフランスに
レストランの視察旅行にいったとき。
タバコを吸うシェフがかなり多くてビックリした。
けれど仕事の合間の休憩時間。
ランチやまかないを食べながら
ワインを飲むシェフはほとんどいない。
ワインに合わせて試作した料理を
みんなで試食しようというときは、
ワインを水で割って薄めて、ワインの風味を感じながら
決して舌を甘やかさないようにして味わう。
そのクセして、タバコはぷかぷか。
それほど、調理人にとって
ワインはなやましい存在なのでしょう。
体臭なんて言うのは、それに比べて、
気をつけていればなんとでもなるんだから‥‥、と。
そう言われても、厨房の中の温度は高い。
ちょっと忙しく体を動かすと、
汗をかいてどうしても体臭は強くなる。
そんなときにはどうすればいいんですか?
と聞くと、これもビックリ。
そんなときには香水を使えばいいじゃないの‥‥、
とあっさり言われる。
料理の香りを損なうほど、
まるで浴びるように使うのでなければ、
いい香りは仕事の効率もあげてくれるし、
うちの料理ならばハーブの香りや
トマトやオレンジのような
柑橘系の香りを嗅ぎながら作ると
おいしくできるような気もするし。
厨房や料理のムードに合う香りを
選ぶことができるというのも、
調理人としてのセンスを磨くことにもつながる。
なによりレストランの厨房には、
香水の原料がたくさんあるんだ‥‥、
と、そう言われると確かに
ハーブやスパイスは香水の原材料のひとつでもある。
ちょっと枯れはじめて提供するわけにはいかなくなった
バジルやディル。
オリーブオイルと一緒に
キッチンペーパーで挟んで叩くと、
シットリとしたアロマシートができあがり、
それで軽く汗の部分を拭ってやると、
匂いがとれておどろくほどにやさしく
爽やかな香りが体を包み込む。
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