レストランをたのしむ醍醐味。
その一番大きな部分が、お店の人とふれあって、
互いに顔や名前を知り合うコトで
「自分ならではのサービス」
を受けるコトができるようになるというコト。
だから「覚えてもらえないお店」というのは
ちょっとさみしい。
一生に一度のお店は当然、
おなじみさんになるチャンスがないのも同然。
一年に一度の記念日のような日にいくようなお店で、
名前と顔を覚えてもらうのはかなり大変。
ボクなんてとあるお店のおなじみさんになるのに
5年、かかったことがある。
上等なお店。
値段も上等で、おいそれと気軽に来れるお店ではない。
けれど料理がすばらしいのです。
ステーキハウス。
品評会で賞をとった牛を
特製の大きな窯で焼き上げ、
季節の料理と一緒に味わう。
一年に一度来ようと思った理由が、
料理のバリエーションが決して多くはないところ。
そのお店にはじめていったときが11月1日という日で、
「牛肉がおいしくなる季節に
ようこそいらっしゃいました‥‥」と。
それまで牛肉なんかに旬があるとは思ってなかった。
けれど秋から冬にかけてが脂がのっておいしく、
夏になると肉が水っぽくなってしまうから
調理をするのも難儀するんです‥‥、と。
そう言われて食べたステーキがなるほどおいしく、
ならばこれから毎年11月1日は
勝手にステーキの日にしてしまおう。
2回目の予約のときに、こういいました。
「昨年の11月1日にもお伺いいたしました。
今年も牛のおいしい季節を
ことほぎにまいりたいと思います」と。
3年目も4年めも同じように電話をし、5年めのコト。
9月の中旬に電話があった。
「サカキさまでらっしゃいますか?」
電話の主は、そのステーキハウス。
「毎年11月1日にご利用いただき
どうもありがとうございます。
実は今年。
11月1日は当店の定休日でございまして。
もしどうしてもというコトであれば、
その日を営業させていただくこともできますが、
いかがしましょう‥‥」と。
なるほど、たしかにカレンダーをみるとその日は日曜日。
翌日でもボクは一向に構いませんが‥‥、と答えると、
「11月11日という選択肢もございますが」
と洒落っ気タップリのサジェッション。
あぁ、おなじみさんにしてもらったんだなぁ‥‥、
って経験。
それからずっと、11月1日、
あるいは11月11日はボクにとってはステーキの日。
そのお店にとっては「サカキさまの日」だったのです。
アリガタイ。
|