かつて究極の接待というモノを
演出しようと試みたコトがありました。
ボクがまだ30歳をちょっと超えた頃のコト。
時代はバブルの絶頂期です。
お金はいくらかかってもよかった。
大きな仕事を引き受けることがほぼ決まっていて、
その接待もあくまで儀式的なモノでしたから、
ボクは半ば「接待の勉強」を会社のお金でしてやろう‥‥、
ってそんな感覚。
ただ、どういう店で、
どのようにして相手をもてなせばいいのか
当時のボクにはまるでアイディアがなく、
それで「困ったときの師匠だのみ」。
師匠はこう言いました。
接待になれたお店を選ぶのがまずは肝要。
最近、オープンしたばかりのお店があるから、
そこに電話をかけてご覧なさい。
すき焼きでとても有名な料亭が
ステーキハウスを開店したというので、
おいしいモノが好きな人たちの間では
そろそろ噂になりはじめている。
私も機会があれば行ってみたいと思っているほど。
支配人に電話して、私の紹介だからといえば、
いろんな相談にのってくれるに違いないから‥‥、と。
電話をしました。
そして要件を簡潔に言う。
日時に人数。
そして目的。
予算はあまり気にしませんから‥‥、と。
その日、その時間でお席をご用意できますが、
できればお越しになって
お打ち合わせをさせていただけないでしょうか? と。
たしかに初めて伺うお店。
知りもしない場所でどんなおもてなしをするのか、
打ち合わせもできないだろうと
早速、翌日、伺うことになったのです。
場所は新宿。
目立たぬビルの目立たぬ2階。
入り口も目立たぬように作られていて、
こんな場所に‥‥、と最初は思う。
エレベーターに乗ると
なんとその店だけの専用エレベーター。
ボタンは「1F」「2F」ではなく、
「お出口」「お店」と刻印されてる。
「お店」のボタンを押してググっと上にあがって、
扉が開くともう店の中。
ふっかりとした毛足の長い、
足がとられそうになる上等な絨毯に出迎えられた
お店の中は、もう別世界。
「営業前でございますので
照明を一番明るい状態にさせていただいております」
と言う。
それでも十分落ち着いていて、
カジュアルなおもてなしにと案内された
ダイニングホールには大きな暖炉が。
大きさとしつらえの異なる個室がいくつかあって、
とびきりのご接待でらっしゃるのならと
勧められた個室には、
ダイニングテーブルの他にくつろぐためのソファと
バーカウンターが用意されてた。
ここでどんな接待を
くりひろげることができるんだろう‥‥、
とワクワクしながら、
ここでよろしくお願いいたしますと言ったら、
いえいえ、まだまだお聞きしたいことがございます‥‥、
と。
ここにお座りくださいませんか‥‥、と、
お茶までそこでふるまわれる。
そして最初の質問にボクはビックリ。
「お客様をお迎えする
お車の手配は必要でございましょうか?」
完璧にして上等な接待への道はまだまだ遠し。
さて来週に続きます。
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