すべてにおいて、終わりよければすべてよし。
接待を受けたあと、どのようにすればいいかで、
今回のシリーズをしめくくりましょう。



接待を受けたらお礼の意思をまず伝えること。
かつてであれば手紙なのでしょう。
あるいは電話。
ただ、今という時代を考えると手紙はいささか仰々しい。
特に仕事の関係において手紙は会社に届いてしまうモノ。
接待というのは会社が行うモノではなくて、
「会社に属する個人」がするものとボクは思いたいので
だから、会社に届いてしまう手紙はあまり好まない。
今ならメールがほどよい伝達手段のように思います。

タイミングがとても大切。
遅すぎるのはダメ。
早すぎるのもダメ。
電話でメールが送れるようになってから、
接待をして別れた途端に
「ありがとうございました」
とメールを届けて来る人がいる。
インターネット通販でなにかを注文したら送られてくる
自動発信の確認メールのようで、
これはあまりにいただけない。
どんなに素晴らしいレストランで、
ステキなもてなしを受けたとしても一晩我慢。
翌朝、目がさめてお腹がグーッとなる頃合いを見計らって、
メールを打ちます。
昨日のコトを思い出しだし。

 昨日はまことにすばらしいおもてなし、
 ありがとうございます。
 心尽くしのお料理も、サービスもすばらしく、
 なにより、たのしい会話に時間がすぎるのも
 忘れてしまうほどでした。
 これからもなにとぞよろしくお願い申し上げます。

‥‥、のような内容でメールを入れれば
感謝の気持ちも伝わるでしょう。
どうしても電話でなくては気がすまない人。
あるいは、電子メールを日常的に使う習慣のない人への
お礼のご挨拶は電話でということになる。
お礼のためにわざわざ改まった電話口まで呼び出してしまう
というのも無粋で、だからついでにお礼をしましょう。

 昨日は本当にありがとうございました。
 ところで次のお打ち合わせですが、
 予定通り明後日の1時で
 よろしゅうございましょうか?

と。

接待に対する感謝の気持ちは仕事で返す。
だからお礼はシンプルに、そして大げさでなくさりげなく。
例えば、その予定通りに行われる明後日、
1時の打ち合わせで、すばらしかった料理の話や
気軽にいけぬレストランの話を持ち出し、
自分とクラアントが特別親しい関係にあるような
会話をするのは野暮というもの。
食卓と会議室のテーブルは、同じテーブルでも
異なる話題で彩られるべきテーブルなのだと
心がけなくてはならないのです。
要注意。




ところで「接待に対する感謝の気持ちは仕事で返す」
のがたてまえではあるけれど、
とはいえ、接待返しをしたくなるようなコトもある。
あまりに贅沢な時間を過ごさせてもらって
ちょっと恐縮してしまったようなとき。
プロジェクトが長きにわたって、
新たな気持ちで仕切りなおしを
したくなってしまったようなとき。
あるいは単純に、あまりに一緒にする仕事がたのしくて、
一緒に食事をしたくなったようなとき。

一回目の接待から、もてなしてくれた人の
食べ物に対する趣味や、楽しみ方、
好むレストランのタイプがわかっているから、
お店選びの手がかりにことかくことはないでしょう。
ただ、注意しなくてはいけないことが一つあります。

こんな例が果たしていいのかどうかわかりませんが、
ボクがまだ小学生の頃の話をしましょう。

ボクは地方都市の商店街に住む子でした。
その商店街で商売をしている子たちが沢山通う小学校。
普通の公立高校ではあったけれど、
裕福な子供が多く集まっているというコトもあり、
上昇志向が高くって、鼻っ柱の強い、
どこか特別な空気が漂う子たちがいっぱいいました。
そんな中のひとりが当然、
ボクでであったわけですけれど‥‥(笑)。

お誕生会が流行ったのです。
ボクが10歳になった記念に同じ商店街の友人。
そのほとんどが、商売を通して
親同士のつきあいのある友人でしたけれど、
10人ほどを招いてひらいたパーティーが、
その流行のキッカケでした。
アメリカかぶれでしかも飲食店を経営していたボクの両親。
家族揃って派手好きなモノで、
子供のお誕生会としては贅沢なモノでありました。
当然、友人たちが家に帰ってその話をする。
次に誕生日をむかえる友人が誕生会を開催し、
お呼ばれすると
ボクの誕生会に輪をかけ贅沢なモノだった。
それから数回。ボクが1月の後半生まれで、
その年の梅雨が始まる頃には
その商店街の子どもたちが
とんでもない誕生会をしているってコトが
街の噂になるほど広がっていったのです。
それで結局、お誕生会禁止令が
学校から発令されることになったのでありました。

接待返しにおいて注意しなくてはならないコト。
それは接待してもらったお店よりも
なるべくちょっとだけ気軽なお店を選ぶこと。
接待が接待を呼び、しかもその度、贅沢なお店を持ち出し、
最後はどちらもが負担に感じるような
喜劇めいた悲劇に終わらぬようにする。
人と人が付き合う極意でもあるんだろうなと思います。

さて来週から新シリーズ。
原点回帰をたのしもうと思っていたりいたします。

2013-09-26-THU



© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN