そう考えると、ときに日本の料理は
世界的には熱すぎることがあったりします。
昔、イギリスから来た友人を喫茶店に連れて行って、
ブレンドコーヒーをふるまったことがありました。
昔ながらの喫茶店のコーヒーはだいたい熱い。
ネルドリップで落としたコーヒーは、
そのままならば冷まさなくても飲める適温。
ところがそれを手鍋で一旦沸かして注ぐ。
注ぐカップもお湯の中につけて熱々にしたもので、
指にも熱いほどに熱々。
「日本人の指や舌は耐熱素材でできてるのかね」
と、友人は呆れ顔で言う。
いやいや、みてごらんよ。
こういう店には新聞や雑誌がおかれているだろう?
お客様はまず新聞を開いて今日の出来事をみる。
タバコを吸って、のんびり時間をすごしつつ、
カップの中のコーヒーが好みの温度になるまで待つんだ。
だから最初は熱々なんだよ。
そう説明していると、
隣のテーブルについたばかりのおじさんが
「ブレンド」と一言注文。
やってきた湯気がモクモクとあがるカップを
やおら持ち上げ、口に運んだかと思うと軽く唇をつけ、
「ズズズズズッ」と盛大な音をたてすすりこむ。
もう友人はびっくりです。
「音を出して飲むんだネ」‥‥、と。
欧米では音を立てて食事するのは
良いマナーとは言われぬ行為。
でも日本では蕎麦やうどんなど、
麺を食べるときには豪快に音をたてて食べるコトこそが、
おいしく食べるマナーになってる。
唇をなでながら、口の中にすべりこんでくる
麺の食感をたのしむためには、
勢い良くズルンとたぐりあげることが肝要で、
だから音がでるのはしょうがない。
そればかりか、お茶にコーヒー、お味噌汁。
熱々にした水気のものを、空気と一緒に吸い込むことで
若干でも温度を下げて飲みやすくするためなのでしょう。
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